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全て、貴方のせいです。 第13話

概要

 浅草の町に訪れた水越万里菜。彼女は殺人の容疑で逮捕された。水越を知る者は、「人を殺すような子には見えなかった」と言う。

人殺しの鼓動

 臓器移植をされた人物は、ドナーの嗜好や記憶を受け継ぐ。稀ではあるが、そういった例が世界各地に存在する。
 その話は、日本も例外ではない。
 『彁』と書かれた怪奇なステッカーが、至る所に貼られるようになった浅草。自動販売機や店の壁など、街を汚している様に住民は心を痛めていた。
 そんな凶凶の街を歩く、一人の女。26歳。名を、水越万里菜という。
 職業は覆面音楽家。琴や笛に太鼓など、和楽器を使った作曲を得意とする。彼女の曲は映画の主題歌に起用され、一躍有名になった。その映画というのが、虚栗の小説を原作とした作品だった。
 そんな人気絶頂の最中、逮捕されたという報道が日本を駆け巡る。記者の取材に応じた近所の住民は、口を揃えてこう言った。
 「最近浅草に来た子で詳しく知らないけど、とても人を殺すような子には見えなかったわ」
 彼女が犯した罪は、人殺し。連続殺人だった。身内や赤の他人問わず、気に入らなかったら殺害をしていた。その凶器も様々で、撲殺や絞殺、刺殺に毒殺など、様々な手法をとった。
 彼女は、刑事の取り調べにこう供述した。
 「僕の心臓が『殺せ!』と叫ぶんだ。この新しい心臓を手にしてから、僕の中に記憶が2つある。一つは僕の記憶で、もう一つは人殺しの記憶。最初は抗っていたけど、殺人の衝動を抑えられない」
 彼女は、マスメディアには流れていない事件の真相まで語りだした。後に警察が調べたところによると、臓器提供をした人物は、未解決事件の犯人だったという。

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