「昔に戻れたらあれがしたい、これがしたい」というネタは天気の話と同じくらい普及した世間話のひとつだと思う。

先日ある方のSNS投稿にて、世間話の続きに「もしかしたら、夢が叶った今が、戻りたい昔の自分かもしれない」と書いてあった。

戻りたい昔の自分ってなんだと脳内を逡巡させた。
すべて叶っているわけではないけれど、私は「戻りたい自分」にまあまあなれてるんじゃないかなと思った。

お金に困るときもあるし、心身を崩すときもある。
他人と比較する自分に根負けする弱虫も棲んでいる。

昔の自分に戻ったらの話だが、私は昔に戻りたいと全く思わない。

もちろん、今の記憶そのままでタイムスリップしたらと想像することはある。でも、近所の駄菓子屋が潰れる未来を知ってる侘しさを抱えて楽しめるほど私の心は強くないし、何より今の自分がいつでもいちばんいいと考えている。

今やってることが未来の糧になるとかも、たぶん心の底では考えてなくて、あくまで指標であり振り返った結果の認識だと思う。

その時つらければ、つらい気持ちを享受する。
悲しいことがあれば悲しいし、悔いのないよう何かを努めても、心を揺さぶる出来事であればどこかで後悔する。

戻りたい昔の自分。

お友達と好きなときに遊ぶこと。
切磋琢磨と協力ができる仲間がいること。
好きなものに囲まれること。
心身の集中と拡散が自由にできること。
絵を描いて、暮らすこと。

自力だけではないけど、
どれだけ転んでも崩れても、
戻りたい昔の自分は、今、ここにいる。