見出し画像

Zolnay Pál『Photography』直視し難き現実、忘れ難き過去を永遠にする"写真"というもの

ブダペスト舞台映画芸術大学卒業後、ファーブリ・ゾルタンの下でアシスタントを務めながらいくつかの物議を醸した短編を発表したゾルナイ・パール(Zolnay Pál)は、後に"ブダペスト・スクール"と呼ばれることになる運動の黎明期に重要な作品を発表する。それが本作品だ。二人の俳優が写真家とレタッチ業者に扮して田舎の家々を渡り歩き、写真を撮って現像し売りつけるという作業を繰り返す。しかし、被写体である村人たちは写真に写った自分の姿を認めようとしない。ある老人は"こんなに無精髭生えてたっけ?"と言って難色を示し、ある老女は"こんな醜い婆さんは私じゃない"と嫌がり、ある家族は"こんな不自然な写真は壁に飾れない"と怒り出す。そこには直視し難き現実が刻印されているのだ。それに対して、彼らが家の壁に飾っている写真は奇妙なまでに凹凸感がなくのっぺりしていて、顔だけ切り取って並べたコラ画像みたいな家族写真もあって、彼らの価値観がよく分からん。ドキュメンタリーライクだがフィクションでもあるという微妙なラインを綱渡りしていく感じかと思いきや、先述の老女が"うちの夫はバツイチで、前の結婚で出来た二人の娘は前の妻に殺されたんよ"とか壮絶人生を語り始める。そして、これが葬儀の写真でこっちが元妻の写真で、とか言いながら様々な写真を持ってきて物語っていく。つまりは現代の二人組が撮る写真は"直視し難き現実"を、老女が持ち出す写真は"忘れ難き過去"を代表させているんだろう。とはいえ、もっとドキュメンタリーとフィクションの間をフラフラして遊びまくるのかと思いきや、上映時間のほとんどがこの老女の話なので、アイデア不足が過ぎるだろ、と。冒頭1分くらいで登場するパチもんミッキーのお面がクライマックスでした。

・作品データ

原題:Fotográfia
上映時間:82分
監督:Zolnay Pál
製作:1973年(ハンガリー)

・評価:60点

この記事が参加している募集

映画感想文

よろしければサポートお願いします!新しく海外版DVDを買う資金にさせていただきます!