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Boštjan Hladnik『Masquerade』スロヴェニア、裸体の意味の変質

ボシュチャン・フラドニク(Boštjan Hladnik)長編六作目。本作品は露骨な性的描写を理由に10年以上も上映禁止にされたらしい。確かに、中盤で長々と全裸パーティやってたり、子供を含めた登場人物ほぼ全員が必ず一度は全裸になってたり、ヒッピームーブメントの影響を直撃で受けたかのような描写が多数見受けられる。ちなみに、マカヴェイエフも同年に『WR:オルガニズムの神秘』を発表している。フラドニクは意外とミーハーなのか?主人公ルカは有名なバスケットボールチームのエース選手だ。多分、大学生くらいか。そんな彼は同年代のペトラから言い寄られても脇目も振らず、年上の人妻ディナと不倫している。密会を堪えきれなくなったディナは息子アンドレイの家庭教師としてルカを自宅に招き入れる。しかし、そんなことしたせいで夫ガンターにも息子にも気付かれてしまう。そこで登場するのが上記の全裸パーティである。ガンターは若者の肉体をディナに見せつけることで、"支配権"を取り戻そうとしたのだ。他にも、ガンターは強権的父親とセットで語られることの多い狩りを趣味としており、事あるごとにアンドレイに銃や周辺器具をプレセントしている。ガンターだけが本作品の主要登場人物で全裸にならないことからも(?)彼が旧来の考え方を持っていることが視覚化されている。そして、このパーティを境に、氾濫する裸体のイメージは欲望や愛から離れた意味を持ち始め、最終的に当初持っていた意味は欠落してしまう。ある意味で恋愛と狂気が隣り合わせであるというアンソニー・アスキス『A Cottage on Dartmoor』的な主題を思い出させてくれる。

・作品データ

原題:Maškarada
上映時間:86分
監督:Boštjan Hladnik
製作:1971年(スロヴェニア)

・評価:80点

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