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言葉の祈り ASDの恋愛作法13

もう別れてるのにいつまでこのシリーズ続けるねん!ってツッコミが聞こえてきそうですが……😅

○   ○   ○

私の手元にはその人からもらった言葉の数々がある。

「サービス提供記録」というA4の書類がある。

毎日どんな作業をしたかを職員が書いて、利用者がサインをする。

その記録に2行くらい、職員のコメント欄がある。

私の記録の9割はその人が書いていたが、毎日心のこもったコメントだった。

1日たりとも手抜きの雑なコメントはなかった。

事業所での私の挙動をよく観察してくれていた。

最後の方は私も彼女の表情や目の動きを観察するようになり、頻繁に目線が合うので、面談のさいにそれを話題にして笑い合っていた。

直筆のコメントはまるで手紙のよう。

無理を言ってコピーを取らせてもらった。

5月と6月の分が手元にある(4月分ももらえばよかった……)

幼稚園の連絡帳みたいなもので、読み返すと多少は私も成長がしたことがわかる。

ああ、こんな作業したな、

とか

この日は○○さんとこんな話したな、

とか

記録を読み返すと鮮明に事業所の光景が蘇ってくる。

事業所を続けていれば明日私はその人と再会していたが、辞めてしまったのでもう会うことはない。

私が映画監督なら何年後かにばったり街中で会わせたくなるけど笑

他の利用者に嫉妬したりもしたけど、その人と面談した回数は私が圧倒的に多くて(4月は特に不調だった)、他の利用者とは全然異なる特別な関係だったのだろうと思う。

最後のコメント欄には

3か月たくさんお話ができて楽しかった
学んだことも多かったです
○○さんなら乗り越えられると思ってます
応援しています
ありがとうございました

と、勇気づけられることがたくさん書いてあった。

この記録の言葉を読めば、その人がどれだけ誠実に私に向き合ってくれていたのかわかるのに、私はほんのちょっとしたことで裏切られたと思ってしまった。

詳しくは聞かなかったけど、私が休んでいるあいだにその人は自分の行動を振り返って自分を責めたかもしれない。

私もいろいろ刺々しい物言いをしたことを謝れてよかった。

重たい話題ばかりの面談で疲れさせていると思っていたので、楽しかったと言ってもらえたのは意外だった。

だって、いろんなお話したじゃないですか

と言っていた。

そうだった。面談の中で話題はあちこちに飛び、その人の恋バナを聞き出したりもしていたのだった。

恋文をもらったのは二人目だとか。

高校のときにもらった手紙をまだ大事にしまっているらしい(だとするなら10年くらい?)

それだけ、人の思いを大切にしているのだろう。

私の手紙はWordで書いたので、彼女に渡したものとまったく同じものが手元にある。

印刷された文字なのにやっぱり私の言葉だなと思う。

感想を聞いたら、

いつも綺麗な文章だなって思ってます

と言っていた。

修辞に凝っているのではない。

おそらく読みやすい文章ということなんだろう。

寂しいです、と何度か口にした。

その人は静かに笑っているだけだったので、

○○さんは寂しくないんですか?

と早口で聞いたら、

こないだ言ったじゃないですか!

と笑っていた。

私が無理やり言わせたようなものだが、ASDの性質なのか、言葉で返ってこないと自分だけがそうなのかと思ってしまう。

私は私の視点でしか世界を見れないけれど、その人は私のことをどう見ていたのだろう。

私の支援について周りの人とどんな話をしていたのだろう。

私の知らないそうした姿も見てみたかった。

遊びでこっそり付箋にメッセージを書いて交換していた。

私はスケジュール手帳の内側にそれを貼り、その人は仕事のファイルの内側にそれを貼っていた。

最後の日に付箋にお礼を書いて渡した。

彼女がファイルを開くと、4枚の付箋が綺麗に縦一列に貼られていた。

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