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宇宙から見た安全保障1

2022年末に成立した安保関連3文書や、2023年は国連非常任理事国であることなど、日本の安全保障の在り方が注目されています。

前者では、メディアでは「トマホーク」などミサイルによる反撃能力が取り上げられるケースが多いように感じました。
あくまで専守防衛を崩さないとはいえ、やはり兵器には過敏に反応するのかなと想像します。

いわずもがな、サイエンスは世界の安全保障と相互に影響を与え、特に現代社会においてはその度合いは高まってきているかもしれません。

必然的に、サイエンスの発展とともに兵器の概念も変わってきています。

例えば下記記事にあるように、トマホークのような単一兵器云々だけでなく、サイバーや宇宙空間など、「統合防空ミサイル防衛」という視点も重要になってきます。

なかでも特に、「宇宙」については、産業振興だけでなく安全保障の面でも日本が目を向けているのは、空自の名称変更でも想像できます。

今回は、「サイエンスの視点で」宇宙に関係する安全保障の流れについて触れてみたいと思います。

ただ、安全保障は純粋なサイエンスに閉じられない正直重いテーマなので、下記の書籍を参考にしています。

宇宙の安全保障への取り組みは、第二次世界大戦後あたりからになります。

宇宙開発と表裏一体で、ソ連で言えば人類初の衛星スプートニクやガガーリンの有人宇宙飛行、米国はアポロ計画がその象徴的な出来事です。

このスプートニクやガガーリンを打ち上げたロケット(R-7)は、元々大陸間弾道ミサイル(ICBM)として開発されたものです。文字通り米国とソ連間にまで到達できる長距離のミサイルです。

さらにソ連は米国に追随して核(原子)爆弾の開発に成功し、核弾頭を積んだロケットの配備が進みます。
1962年には、ソ連がキューバに核ミサイルを配置しようとして米国が阻み、両国に核兵器使用の危機が迫ります。 俗にいう「キューバ危機」です。

余談ですが、科学的な視点を重視した原子爆弾開発の歴史については、下記が重厚でお勧めです。

このようなロケット・核兵器の開発を背景に、宇宙での軍事行為についての脅威が増し、1967年に国連で「宇宙条約」が施工されます。
ここで、国家による天体占有だけでなく、宇宙空間での核兵器などの配備が初めて禁止されることになります。

ただ、冷戦の雪解けとなる1970年代になると、偵察衛星の打ち上げなど宇宙を使った情報戦が進んでいきます。
我々にとっておなじみのGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)も、米国が1980年代に軍事用途で配備します。

改めて米ソに緊張が増したのは、1989年に米国レーガン大統領が構想したSDI(Strategic Defense Initiative)、通称「スターウォーズ計画」です。

ざっくりいえば、ICBMなど核ミサイルの脅威を宇宙に配備したレーザー衛星などで迎撃することで最小限にとどめよう、という構想です。

顛末として、ソ連の崩壊(1990年前後)もあってSDI構想は盛り上がらず、やがて消滅していきます。

ただ、1990年にイラクがクウェート侵攻で起こった湾岸戦争で、米国は歴史上初めて、宇宙からの測位や通信機能を積極的に活用します。
上記参考書籍の著者によるこちらの記事によると、これが史上初の「宇宙戦争」と呼ばれることもあるようです。

このころに、軍事用途で開発されたGPSが民間に開放されます。きっかけは、民間旅客機が誤ってソ連空域を侵犯してしまい撃墜されるという事件(大韓航空機撃墜事件)によるものです。

今ではこのGPSのおかげでスマホで簡単に位置情報が分かります。

GPSは、宇宙軍事技術で最も民間で活用されているかもしれません。
ただ、米国が軍事用途で管理している以上、完全に他国に依存するわけにもいかず、その後各国・地域が独自のGPSを開発・運用しています。

ソ連はグロナス、欧州はガリレオ、中国は「北斗」日本は「みちびき」などが有名です。

GPSは結構単純で、測位衛星から位置と時刻情報が載った電波を無指向(球状)に発信するだけです。それを地上の受信機が交点として位置・時刻を計算します。
有名な話として、衛星ある超高度と地上とではわずかながら時刻の進み方が違います。いわゆる相対性理論です。
日常生活であれば無視できないのですが、高度数万kmとのやりとりであれば誤差が数百m以上出てしまうため、相対性理論で補正しています。

もう少し詳しく知りたい方へ、1つだけ解説サイトを紹介しておきます。

このようにGPSの民間開放は進んだものの、宇宙の軍事緩和を行ったわけではなく、むしろ逆に宇宙をより積極的に活用していこうという動きが起こります。

次回も引き続き宇宙軍事の歴史的な流れを、サイエンスの軸で触れてみたいと思います。

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