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大手渉外事務所→外資金融インハウス→独立→外資金融インハウス。海外から日本への金融ビジ…

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大手渉外事務所→外資金融インハウス→独立→外資金融インハウス。海外から日本への金融ビジネス展開をサポートする人。インハウスロイヤーの業務とは?法務部が組織内でoutperformし、respectされるには?抽象論や精神論を超えた、具体的な方法論を追及する。ビジネス英語も発信。

最近の記事

考え方を、教えようーいいですか?ダメですか?で終わらせないインハウスロイヤーの仕事

「これやっていいですか?それともやっぱダメかしら?」 よく事業部からインハウスロイヤーに対して寄せられがちなYesかNoかを問うこのクローズド質問。こんな質問に、「いいです」とか「ダメです」で回答していないだろうか。 もちろんこれまで共に取り組んできた案件がついに稟議プロセスに乗る、その最終段階の時に「いいですか?ダメですか?」と聞かれているなら、きちんとYesかNoかで回答する必要がある(一緒に育ててきた案件なら多くの場合、Yesで答えることになるだろうが。なお、この場

    • 法務が抱える課題とは?法務部員の皆様にお尋ねしてみました!

      「法務とは何か」という大きなテーマを探求する上での一つのパーツとして、法務が現在抱える課題を研究しています。きっかけは2023年12月18日付の日本経済新聞 子版の記事「法務部門に人材難 人権や国際化の業務増に追いつかず」。主要企業が回答した法務の課題をまとめたもので、以下引用する表の結果となっています。 これは全体の傾向としては理解できますし、紙面も限られた中で限界があるのは重々承知の上、しかし一つ一つの項目が大きすぎないかというのが気になります。例えば、「知識・ノウハウ

      • A(Art)でもS(Science)でもない、M(Money)の話をしようー法務部とお金

        2024年1本目の投稿を失礼いたします。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。 私事で恐縮ですが、2023年末をもちまして12年間続けて参りました企業内弁護士のキャリアに終止符を打ち、2024年1月1日、港区赤坂に赤坂檜町法律事務所を独立開業いたしました。今後は法務部やインハウスロイヤーの機能、役割について、より広い視点で考察を行って参る所存でございますので、引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。さて、何を隠そう、新春一発目は、法務部とお金の話でございます。 お金と

        • ビジネスで使える英語表現(続編 301-350)

          2021年11月1日からTwitterで始めた「#ビジネスで使える英語表現」。コツコツと投稿を続け、2022年12月30日に300を達成し、まとめてこちらに掲載しました。2023年4月1日よりこの「#ビジネスで使える英語表現」シリーズを再開し、2023年11月23日には350を達成。2023年中に400到達を目指して連載継続中です!今後に向けた筆者自らのモチベーション維持も兼ね、50の区切りを祝して301-350をまとめて掲載いたします。 ビジネスで使える英語表現(301)

        考え方を、教えようーいいですか?ダメですか?で終わらせないインハウスロイヤーの仕事

          【番外編】3ヶ月で-9.9kgのダイエットをしてみた!

          筆者のTwitterアカウント@kojiraseaaaにて、#こじらせ筋トレとして展開してきた筆者のダイエット体験であるが、ついに3ヶ月で9.9kg減量の成果を達成した。この成果をツイートしたところ、色々と反響をいただいたので、法務に関する記事を掲載することを目的としたこのNoteにて、番外編としてダイエットの経緯や方法について述べてみたい。 はじめにダイエットや筋トレについて考える上で、姿勢の問題として筆者が大切だと思う名言を二つ取り上げたい。 “If I had an

          【番外編】3ヶ月で-9.9kgのダイエットをしてみた!

          法務部門の守備範囲の拡大の意味するところとは何か?

          遅ればせながら昨年の日経電子版12月26日の記事「法務部門、広がる守備範囲」について若干のコメントをしておきたい。記事によれば下記は、主要企業の法務部門担当者に「新たな役割となりそう」又は「なってきた」領域を複数回答で聞いた結果である。 基本的に外資系企業でもこれらのエリアを法務で担当することに違和感はない。ただ、外資系企業の場合、ガバナンス、経営への関与を除く上記の各分野について、専門の法務部署が存在する組織形態のところが多いと思われる。もっともこの専門部署は、必ずしも日

          法務部門の守備範囲の拡大の意味するところとは何か?

          ビジネスで使える英語表現

          2021年11月1日からTwitterで始めた「ビジネスで使える英語表現」。コツコツと投稿を続け、2022年12月30日に300を達成しました(但し後述の通り、欠番が3個見つかっており、現状厳密には297かもしれません。。。)。いずれにしても一つの区切りとして、この場でこれまでの投稿を上げていきます。 ビジネスで使える英語表現(1) I know where you are coming from. まあ文字通りなんだけど、ビジネスだと単に共感というより相手の主張の背景が分

          ビジネスで使える英語表現

          予防法務の限界 紛争対応と裁判所の利用

          紛争はビジネスの中で日常的に発生しうる。企業内で問題が起きた場合のファーストコンタクト先となる法務部は、対応の最前線だ。そこで今回は、予防法務の限界と紛争対応について考えてみたい。 1.予防法務の限界 いうまでもなく予防法務では、いかに紛争にならないようにするか、裁判所に行かなくても済むようにするかが最優先事項の一つだ。法務部が日々、契約書のレビューを行い、その文言を磨き上げる目的の一つはそこにある。しかし当然ながら予防法務は万能ではない。契約をきちんと建て付けたところで

          予防法務の限界 紛争対応と裁判所の利用

          外部法律事務所の法律意見の審査

          1.某上場企業での事案ー法律意見を取ったは良いが・・・ 某上場企業にて、当該企業が実行した詐欺の疑いもある投資案件に関して債権回収の不能又は遅延のおそれが生じているという件が問題となっている。外部の弁護士らを起用した調査委員会の調査報告書によると、当該企業内部の法務部が、投資先が必要許認可を得ていない可能性等について問題提起したにも拘らず、外部法律事務所に契約書の記載内容の確認内容のチェックを依頼し、問題ないとの説明を受けたという記載が、当該投資案件を推進した取締役からの聴取

          外部法律事務所の法律意見の審査

          「契約」と「やりたいこと」の乖離ーインハウスロイヤーはまず疑うところから始めよう

          1.「やりたいこと」と「契約」の乖離 事業部から「●契約を作ってください」と言われて話をよく聞いてみると、事業部のやりたいことの実現にとって必要なのは●契約ではなくもっと別の類型の契約だったということはないだろうか。 契約とやりたいことの乖離ー偽装請負などはこの典型だろう。実態は労働者を派遣してもらい自社で働いてもらいたいのに、形式上は請負契約を締結する。結果、労働者派遣法違反として行政処分の対象となるリスクを負うことになる。契約とやりたいことの乖離は、単純に契約上の問題だ

          「契約」と「やりたいこと」の乖離ーインハウスロイヤーはまず疑うところから始めよう

          インハウスロイヤーの法的リスク検討プロセスー特定・評価・共有・処理

          今回は、インハウスロイヤーが法的リスクを検討するプロセスについて、考えてみたい。 インハウスロイヤーの法的リスクの検討プロセスは、①法的リスクの特定、②法的リスクの評価、③法的リスクの共有、④法的リスクの処理の4段階のステップを踏む。以下、各ステップについて検討していく。 (1) 法的リスクの特定 検討対象の新規プロジェクトや契約について、どのような法的リスクがあるのか特定するステップである。当該プロジェクトや契約を全体的に見渡し、どのような法的リスクがあるのか検討し、極

          インハウスロイヤーの法的リスク検討プロセスー特定・評価・共有・処理

          インハウスロイヤーが暇になってしまったらー仕事は自分で作ろう!

          1 暇な法務部員は存在するのかー法務部は忙しい神話 六法を小脇に抱えて忙しく動き回るイメージ(?)を持たれがちな法務部だが、部員間でも繁閑の差が生じることはよくあるものだ。法務部内で暇な部員が出ると、部署内のチーム間で仕事を融通しあったりすることもあり、実は筆者も本日まさに、他チームのヘッドから、当該チームの若手に仕事を回してやってくれという依頼を受けたところだ。 法務部員の繁閑は様々な要因で変化する。市場環境の変化による売れ行き商品・サービスの変化、事業部のリストラクチ

          インハウスロイヤーが暇になってしまったらー仕事は自分で作ろう!

          守りの法務ー法務部を責任の転嫁先にさせないために

          今回は社内で法務部に対する責任転嫁をさせないためにどうするかというお話。そのために筆者がしている取り組みをご紹介したい。 1 責任転嫁の現状ーTwitterで調査を実施した。 そもそも法務部に対する責任転嫁などという問題が実際に起きないのであれば、あるいはごく少数にとどまるというのであれば、単なる特殊事例対応として検討すれば事足りるのかもしれず、わざわざ大々的に筆者の責任転嫁防止策などを紹介する必要もないのかもしれない。そう考え、まず、Twitterで現状に関する調査を

          守りの法務ー法務部を責任の転嫁先にさせないために

          法務部の対応スコープの策定ー持続可能な法務部であるために

          今回は法務部のサステナビリティ(持続可能性)について考えてみたい。法務という重要任務を担う部署が持続可能でなければ、法令に関する適切な判断・助言もなされず、会社全体の存続も危うくなりかねないというものだ。 前回の記事「インハウスロイヤーの評価」で述べた通り、日本ではインハウスロイヤーの依頼者が誰かという問題があまり積極的に論じられることはないように思うが、米国ではattorney-client relationshipがインハウスロイヤーの場合誰と誰の間に成立するかについて

          法務部の対応スコープの策定ー持続可能な法務部であるために

          インハウスロイヤーの評価

          インハウスロイヤーの評価において、事業部からのコメントをどの程度考慮すべきだろうか。インハウスロイヤーのユニークな立ち位置が、この問題を難しくしている。 日本ではインハウスロイヤーの依頼者が誰かという問題があまり積極的に論じられることはないように思うが、米国ではattorney-client relationsihpがインハウスロイヤーの場合誰と誰の間に成立するかについて秘匿特権の文脈などでよく論じられるところであり、そこでは、インハウスロイヤーの依頼者は、インハウスロイヤ

          インハウスロイヤーの評価

          外資系の人事制度について

          最近「ジョブ型雇用」「メンバーシップ型雇用」という言葉をよく見かけるようになった。前者は外資系企業で採用されているような、ポジションに人がつく人事制度で、job descriptionを前提にするものを意味し、後者は日本企業が長らく採用してきた明確なポジションを前提とせずに従業員を採用し、ジョブローテーションなどの異動も伴う制度を意味するようである。そして、後者が人件費高騰につながるとか、今後維持できないことが見込まれる終身雇用制度と親和性が高いとか、コロナ禍においてテレワー

          外資系の人事制度について