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韓国映画「金子文子と朴烈」感想文

大正末期。二十歳のアナーキスト金子文子は、ある雑誌に掲載されていた「犬ころ」という詩に感銘を受ける。
作者は、朴烈という朝鮮から来た青年だった。
文子は朴烈を訪ね、自分もアナーキストであることを告げ、同居を提案する。
「犬ころ」を読んで朴烈を訪ねてきた女は文子で8人目だった。
朴烈はつれなくするが、朝鮮人差別をする日本人に向かって本気で怒り暴れる文子を見て、心惹かれていく。
同居を開始してしばらくすると、二人の住む街を関東大震災が襲う。
混乱の最中、ある政治家が朝鮮人について悪質なデマを広げる。
デマはやがて二人の運命を大きく変えていくのだった。

公開当時、観に行くチャンスを逃していた作品。アマゾンプライムで見つけました。
私はこのような教科書には載らない歴史上の人物が好きなんですよ。
朴烈も金子文子も実在した人物です。
この写真を見たことがありますか?

映画のとおりであれば、この写真は獄中で撮られています。
二人は大逆の疑いをかけられ、収監されてしまうのです。
二人の取り調べをする立岩判事という男性に、朴烈が故郷の母に文子を見せたいと願ったことにより撮影されたという写真(事実が映画のとおりならね)。

金子文子は、両親に捨てられたり裏切られたりして、学習及び愛情を受けることすら無かった女性。それでも「書きたい」という想いから字を覚え、文章を綴っていたようです。
朴烈からの愛情、読書の喜びの両方を得たという幸福感が表されているような1枚。

映画の内容としては、日本人って今もあまり変わらないなと思うシーンがありまして。
デマが蔓延るなか、自警団なる者たちがある言葉を子供に話させ、朝鮮人であるかどうか確認する場面があるんですね。この言葉は私の遠い記憶に何故か残っていたので、たぶん子供の頃に本か何かで読んで知っていたんだと思います。
ものすごく胸が悪かったのと、自分とは違うということに対しての排除の精神というのが脈々と日本人に続いているのだと思うと心底しんどかったです。
今もいますもんね、色んな方面での自警団まがい。

メインの俳優さんたちの演技にはドキドキさせられるものがありました。
デマを流す政治家役の方が本当に嫌味で。つまり、そのくらい演技がうまいということなんでしょうけど。

金子文子役を演じたチェ・ヒソさんの素肌っぽいメイクが良かったですね。知的な色気というのはこういうことなんだなと観ていました。韓国の女優さんなのですが、子供の頃にお父様の転勤で日本にいらしたそうでとても自然な日本語を使われていました。

注目すべきは、朴烈と金子文子のそれぞれを取り調べする立岩判事を演じたキム・ジュンハンさん。声がすごく綺麗です。
かつてバンドマンとして活動していたそうで。でも、ボーカルじゃなくてドラマーという。日本での活動歴があったそうなのでとても綺麗な日本語を話すのですが、その語り口と声がですね、風が森をそよがせたかのような繊細さなんですよ!!!!!!
後半でよく登場するので最後まで観ていただきたいです!

映画の公式サイト

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