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#Web小説の感想とご紹介『第2回、瀬戸晴海さまの「転生者様、前世にお忘れ物はございませんか」を読んで』

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Web小説の感想、第2回は前回と同じく、瀬戸晴海(せと はるみ)さまのブログ小説から一風変わった異世界ファンタジー『転生者様、前世にお忘れ物はございませんか』をチョイスさせて頂きました。

異世界ファンタジー、というと主人公が、前世での不幸な体験から命を落とし、クリーチャーや魔法のあるファンタジー世界へ転生する流れが主流となっていました。しかし、今作の面白いところは、その転生者が前世に残してきた忘れ物(=未練)を探しに帰るためのサービスを、星の間中央駅のお忘れ物捜索センターが担っているところです。

各章に登場する転生者たちは、今ある自分のファンタジー世界にはどこか馴染めず、過去に残してきた忘れ物を探す過程で、自らのルーツを知ります。これはいわば、自分探しの旅でもあるのです。

お忘れ物センターを担当する駅員は、サボり癖のあるバンドウさんと、真面目なムゲンちゃん。バンドウさんの元へは、お客様を案内するちゃらけたジョーくんが、暇を持て余してバンドウさんと遊びにきます。お客様の忘れ物を使って遊ぶ二人を見て、真面目なムゲンちゃんが「コンプライアンスについて」注意を促すのですが、ふたりは一向に聞く気配がない様子……。

そこへ、ひょんなことから、星の間中央駅のマスコットキャラクター星間ちゃんも加わり、過去へ帰る特急タナバタの客室乗務員ハナビさんも登場して、物語世界は彩り豊かになっていきます。

前世で何らかの不幸があって、星の間中央駅に来た彼らにも、それぞれ秘密があるようです。それは物語で明かされていくのですが、キャラクターたちが織りなすユーモアから恋愛に至るまで、ちょっとした大人のテイストが味わえる作品でした(推奨年齢15歳以上です)。

作者の瀬戸さまいわく「転生者に現実を突きつける」意図で描かれており、ときに人間同士の愛憎劇もブラックユーモアを交えて描かれてあります。

後半部へいくほど、ストーリーの核心となるお忘れ物センターの主要キャラクターたちの秘密に迫り、駅員たちを悩ます自殺衝動の謎も明らかに。

ファンタジーではありますが、お忘れ物センターの駅員の業務内容は事細かに描かれ、作者さまのリサーチを怠らない姿勢が伺えました。

中心となるバンドウさんとムゲンちゃん、二人の関係を見守りながら、ちゃらけたジョーくんや愛くるしい星間ちゃん、業務を忠実にこなす駅員さんたちのハートフルな人間模様がとても楽しくてw

ありきたりな異世界ファンタジーに飽きたあなたにこそ読んでほしい、リアルとファンタジーを行き来する物語です。

(この作品は瀬戸晴海さまのリンク先のブログからご覧になれます)
https://sthrm126nv.blog.fc2.com/blog-category-35.html

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