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和歌・月夜の晩の逢瀬

「み空行く月の光にただ一目相見し人の夢(いめ)にし見ゆる」
万葉集・安都扉娘子(あとのとびらのをとめ)

(空を渡る月の光が降り注ぐ中でたった一目逢った人が夢に見えることよ)


月の光が降り注ぐ中、
たった一度だけ
目と目を交わしたあの人。


あの人の澄んだ瞳に
綺麗な月の影が映っていた。

静かにそして熱く
見つめ合ったわたしたち…。


たった一度きりの逢瀬だったのに、
あの人が夢の通い路を通って
もう一度わたしに逢い来た。


あの人はわたしのことを
想ってくれているのかしら…。


*

この時代には、
「まぐはひ」という言葉があります。


目と目を見つめ合って愛情を交わすことを言いますが、
男女が契りを交わすことも指します。


この歌で月の光の下で見つめ合ったというのは、この両方の意味をさすのではないでしょうか。


たった一度、月夜の晩に関係を持った。
そこから恋が始まりそうな予感を感じています。


今夜は中秋の名月。
誰かを想って月を見上げてみませんか。


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