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嬉しい笑顔と、間に合った夕焼けと

連休が終わって、木曜日まで来ました。
なんとなく、いつもの平日の空気が戻ってきたような、
少し落ち着いてきたような 
そんな今日は、ずっとグレーの曇り空です。

こざる達は、いつものように
賑やかに夕飯の仕度をしています。

すると外から子供の声が聞こえてきます。
「おかえりなさーい。ばーば、おかえりなさーい。」

こざるちゃんが窓の外を見ます。
ちょうど デイケアから家まで送ってくれたマイクロバスが
道の向こうに着いていて、車椅子のおばあさんが
降りてきたところでした。

お孫さんなのでしょう、小さい女の子が満面の笑みで
「おかえりなさーい。」と言いながら、おばあさんに くっついています。
おばあさんも、嬉しそうに笑っています。

「あの おばあさん、笑っているね。」
こざるちゃんが言うと、一緒に覗いていた、他のこざる達も、
うんうん頷きます。

「あの おばあさんが 笑っているの見たの
僕、初めてだと思うよ。」

デイケアの送迎のマイクロバスは、毎日、朝と夕方に、
何台か見かけます。
でも、いつも ほとんどの人が、無表情です。

「あの女の子、遊びに来ているのかもしれないね。」
「そうだね、連休は終わったけれど、まだいるのかもしれないね。」

こざるちゃんが、本を持ってきます。
「これ、今、読んでいるんだけどね。」
そう言って『生きるとか 死ぬとか 父親とか』という本をみんなに見せます。
ジェーン・スーさんのエッセイです。

こざるちゃんがページをめくって読みます。

「どこからか小さな女の子がトコトコと叔母めがけて歩いて来た。
途端、幼児の放つ瑞々しい生命力がその場に漲り、
叔母は破顔して嬌声をあげる。〈中略〉
子供の生きる力が、一時停止ボタンを押されたままの叔母の日常を
一瞬で突き動かすのを目の当たりにし、私は圧倒された。」

「無表情に見えても、何もわからないわけじゃないんだよ。」
「うん。うまく表現できなかったり、
すぐに反応できなかったりするだけで、
ちゃんと心では 同じように いろんなことを感じているんだよ。」

こざる達は、うんうん頷きます。
「感情は ちゃんと残っているんだよ、絶対に。」

西の空が明るくなってきて、そこだけ夕日が差し込んでいます。
「今日も、夕焼けに間に合ったねー。」
こざる達は、お日さまが出て 少し青空も見えて、とても嬉しそうです。
「おばあさんの笑顔も見ることができたからね。」

夕飯の仕度が もうすぐできるようです。

「りこちゃん、呼んでくるねー。」
こざるちゃんが、鼻歌を歌いながら りこちゃんの部屋に向かいます。


「りこちゃーん、夕飯できたよー。
今日は浅蜊の お味噌汁と、鯵の干物を焼いたよー。
一緒に食べよう!」

こざるカフェは、今日も ゆっくりゆっくり、
のんびり 穏やかに時間が流れていきます。

読んで下さって、どうもありがとうございます。
やっと金曜日の明日は、かなり気温が上がるようです。
よい毎日でありますように (^_^)

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