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世間と介護業界における感染症に対する認識のズレ

コロナウイルスのまん延より、感染症に対する認知度は一気に広まった。
いや、感染症という存在自体は誰もが知っていただろう。

しかし、生命の危機や社会の脅威になるとまでは思っていなかったと思う。

かつてインフルエンザは、一時的な体調不良くらいに思われていた。
高熱であっても無理を押して仕事に出る人も珍しくなかった。

感染すると言っても「風邪がうつる」くらいの認識で、飛沫感染や接触感染といったことまでは考えていなかっただろう。

実際、感染症が活発になりやすい時期と重なるように大型連休になると、交通機関や観光地・行楽施設などは多くの人たちで溢れかえっていた。
いや、コロナウイルスが5類型へ移行して以降、世間は以前のように人ごみを平気で闊歩しているし、むしろ好んで向かっている節もある。

かつての脅威や不安はどこに行ったのか、世間ではコロナウイルスを始めとする感染症に対して「もう大丈夫だろう」「以前のように生活できるだろう」と思っている。

――― しかし、未だに感染症の渦中にいるところもある。

少なくとも介護業界では、コロナウイルス感染症は収束なんてしていない。下手すると、以前よりも警戒しているくらいだ。

実際、運営している介護施設でクラスターが現在進行形で発生している。

この記事を書いている数日前にようやく一区切りしたと思ったのに、同一敷地内にある施設(別ユニット)で高熱などの症状が現れた利用者が一気に広がった。

管理者もスタッフも、運営に携わっている私もゲンナリしている。

詳しいことは当然言えないが、今回のクラスターは施設側に過失がないことが分かっている。要は外部から持ち込まれたわけだが、明らかに世間として感染症に対する認識が緩くなっていることが間接的な要因と考えている。

介護施設における感染がらみで言えば「面会制限」がある。

介護施設によっては、未だに面会制限を継続しているところもあるだろうが、この面会制限に対しての見解も今や変わっている。

以前ならば、ご家族から「なかなか面会できないのは残念ですが、感染は仕方ないですよね」とおっしゃていただけたのに、今では「ニュースではコロナは大丈夫って言っているのに、なんで施設の中に入れないのですか」といった不満を受けることがある。

また、「ここの施設では色々なところに連れて行ってくれると聞いていたのに、がっかりです」と言われることもある。
以前ならばお花見など季節ごとに車を出して利用者をお連れできたが、今はうかつに人ごみに行けないし、外で飲食をとることも悩ましい。

「外泊させたい」「旅行に連れて行きたい」という要望を叶えたい気持ちは分かるが、外に出るということは感染リスクもつきまとう。要望を実現した結果、感染源を「持ち込む」ことになると施設は一気に機能不全に陥る。

そうなったときに対応するのは、当然ながら施設職員である。要望を叶えたご家族ではない。

こういったリスクに対応するのもプロであるので、「何かあったらご家族に責任をとってもらいます」と言うつもりはない。

しかし、法人内でクラスターが起きている事態において、感染症が起きていない施設のご家族から「まだ面会制限しているのですか?」「ちょっと大げさじゃないですか?」と言われると何とも言えない気持ちになる。

何なら、たまに医療従事者に言われることもある。平気で「他の施設ではそこまで厳戒体制にしてないですよ」と悪気なく言ってくる。

このような発言をするのは医療従事者でも組織に所属している一職員や医師であり、個人経営などをされている医師や経営者ならばこの厳戒体制の意味に共感していただけると思う。

――― なんだか愚痴っぽい記事となって申し訳ない。

おそらく医療福祉においては感染症のリスクは常につきまとうだろう。
そして、世間との認識のズレも常につきまとうだろう。

そんなことを思いながら、通常業務と現場業務、そしてクラスターの施設対応に注力している次第だ。

まぁ、このような時期もあるし、過ぎれば「あのときは大変だったね」と思い出になるのだろうから、1つ1つ確実に対応していくとしよう。


ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも、感謝。

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