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新人職員の教育から「傾聴」と「受容」の大切さに気付いた話

■ 新人職員へ教育


介護業界は人手不足と言われている時代において、ここ三カ月の間に2名の新人職員が入った。ありがたい話である。

当方の運営方針として、経験・未経験問わずイチから高齢者介護に関する知識や技術を研修にて教育するようにしている。

基礎研修は私が主に教育を行っているが、利用者に関する細かい介助法やコミュニケーションなどは現場職員にも協力してもらっている。

今回新しく入った新人職員は2名とも介護未経験である。

医療・福祉業界という括りで言えば経験者だが、高齢者介護は初めてということから未経験としてよりきめ細やかな指導をしている。

特に高齢者への接遇・コミュニケーションにおいては徹底している。と言うのも、高齢者との関わり方に誤解をしている人は少なくないからだ。

利用者のことを「おじいちゃん・おばあちゃん」と呼んだり、「〇〇ちゃん」とかニックネームをつけて呼んだり、敬語よりもタメ口のほうが良いと思っていたり・・・。

これは経験者でも見かけることなので、研修の導入としては高齢者介護や高齢者虐待の現状といった社会状況と併せて、高齢者との接し方1つがこれから利用者に介護をするうえで全てつながっていると伝えている。



■ とても素直な新人職員Aさんの場合


このような教えをどこまで理解できるかこれからの話である・・・と言いたいところだが、割とすぐに明暗が分かれる。

それは現在研修を進めている2名の新人職員を見ているとよく分かる。

新人職員Aさんは、とても素直である。高齢化社会や虐待の現状を知ると驚いて、利用者に対してちゃんと敬語を使い明るく接している。

オムツ交換や移乗方法を教えても、最初はうまくいかなかったがオムツ交換の参考動画を見せたり介助後の課題点を伝えると、次の介助時には改善されている。それなりの社会人経験がっても、介護では自分は未経験の新人だということを受け止めて周囲のアドバイスを真摯に聞く。

結果、利用者だけでなく他職員からも親しまれ、介助技術も上達するので仕事も楽そうになっていく。教えることはたくさんあるが、私としても安心できる人材として評価できる。



■ 謙虚さに乏しい新人職員Bさんの場合


一方、新人職員Bさんは、すぐに自分なりのやり方に変えてしまう。知識面の講義をしても「知っている」みたいな言動をする。利用者に対しての言葉遣いも、一見するとフレンドリーだがどこか高圧的になる瞬間がある。

介助技術は未熟であるのでじっくり教えるが、最初のうちは言われた通りにやっていても途中で確認すると自己流になっている。「このようなケースの介助の基本はこうですよ」「〇〇さんの介助はこうしたほうがご本人も職員も楽ですよ」と伝えるも、「自分の場合はこうやっている」と言う。

別に間違ったことをしていないし適当にやっていないことは分かるが、基本を押さえていないので不備が多い。また、未経験の新人職員だからアドバイスをしたのに、受容もせずに「自分の場合は」なんて言われると、アドバイスした側は教えがいのない奴だと思ってしまう。

そして1ヶ月経過したところで、周囲からすればまだまだ新人でなのに「自分はもう何でもできる」「介護のことは知っている」という態度をする。

ときには「〇〇さんにはこういう介助をするんですよ」と、それを教えた先輩職員に対して、さも自分が先に知っているかのような発言もする。
私もそのような発言をされたことがあるが、あまりに滑稽で「それ、私が教えたことだけど」と言いたくなったが「へー、そうなんだ」と済ませた。

まぁ、結果は想像に難くないだろう。このような態度の新人職員は、最初は人員補充として期待されるが、利用者も職員からも距離を置かれる。別に悪い人でないということは誰もが分かってるが、言っても聞かないので放置される。

とは言え、利用者にキツい態度で接するときは随時注意する。しかし、それなりの社会人経験があるというプライドが足かせとなり、すぐに面白くない態度をとったり、しばらく私から逃げるように関わらないようになる。その姿はまるで思春期の子供のようである。



■ 明暗を分けるのは「傾聴」と「受容」


このような極端な2名の新人職員の教育と(現状までの)結果を見て思うことは、未経験でもそうでなくても、仕事でも趣味でも、人間が成長するポイントは「傾聴」と「受容」だということだ。

前述の新人職員Aさんは、人の話をちゃんと聞く。そして理解できなくても納得できなくても「はい」「なるほど」「そうなんですね」と一度受け止める。そして、教えてもらった通りのやり方を実行する。
そのうえで分からなければ「分かりません」と言い、うまくできなければ「ちょっと難しいです」と正直に言う。

後述の新人職員Bさんは、話を聞かない。いや、話を聞かないというよりもすぐに自分の話をしたがる。だから教えても「自分の場合は」と言ったり、過去の事例や協議の場でもすぐに「自分のときはこういう出来事があった」などと自慢話のように語り出す。
教えた通りにやらないので課題点はそのままで実力がつかないし、すぐに自分の話に持っていこうとするので職場内での関係性も構築されない。それどころか「また、あの新人さんのフォローか・・」とうんざりされる。


――― 本記事は新人職員をテーマにしたが、現在教育をしている2名の新人職員の態度から、やはり人間の成長には「傾聴」と「受容」が大切なのだと改めて気づかされた。

知識や技術などを教えることで、自分の未熟さや視点の転換などに気づかされることはあるが、今回の2名の新人教育においては教えてもらうときの態度から成長や周囲との関りが変わるということに気づかされた。

このように書いている私も人間である。他人に教えを請うことはよくやるが、分かったふりをしたり、反発心を持ったりする態度をとっているかもしれない。

これもまた1つの学びなのだろう。


ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも、感謝。

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