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ディナーテーブル症候群〜清張賞最終作品の、清々しいミステリー

 私は小さい頃とても読書が好きでした。特にミステリー。
小学生の頃、調べ物学習でミステリー作品をテーマにするくらいにです。

私の読書遍歴

 小学校低学年の時は主に児童書を読んでいました。
1番好きだったミステリー風の児童書が今、“東大生がオススメする本” として売り出されていて驚きました。
高学年からは母の部屋にあった松本清張を読み
中学で宮部みゆきにハマりました。
その後横山秀夫を読むようになりましたが、
読み始めると夢中になってしまうことから、
勉強時間の確保のため読書断ちをしてしまい、
それからすっかり読まなくなってしまいました。
もはや感覚的に読めなくなってしまったのです。後悔しています。

 その後結婚した相手が横山秀夫好きで、少し読書熱が再燃しました。
夫と趣味が合うとは驚きです。
休職もきっかけの一つとなり、それからまた少しずつ読書をするようになりました。

松本清張賞候補作品のミステリー

 そんな私のためかと思うほどの、新たなミステリーが日本を席巻しました。
手話通訳者の事件簿的ミステリーです。

これは最新作ですが、
第1作『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』
第2作『デフ・ヴォイス 龍の耳を君に』
第3作『デフ・ヴォイス 慟哭は聴こえない』
そしてスピンオフ
『刑事何森 孤高の相貌』
まで出版されるほどの話題ぶりです。
デフヴォイスは全てを読んでいただきたいです。

ミステリーとしての傑作

 手話通訳者だからではなく、ミステリーとしてとてもおもしろいです。
松本清張賞最終選考に残るくらいですから、世間的にも評価されています。

 登場人物たちは何かしらを抱えています。
その複雑な心理が謎を深めます。
その心理が読み解けていくと、最後に全てが繋がるのです。
主人公が持つ複雑な出自や環境も、読み解くのに重要な役割を果たします。

それでも私が苦手な“ドロドロ” とはしない、カラッとした爽やかさがあって読みやすい。
ミステリーファンが求める
ミステリーとしてのおもしろさが詰まっています。

手話通訳者が感じる清々しさ

 そして手話、ろう者と関わる作品としてもとてもよく取材されいると感動します。
ろう者を扱う物語は、たいてい以下のどちらかに振り切れています。


1.  か弱いろう者が虐められ唯一の味方さえ亡くなり、それでも生きていく。
 オリエンタリズムにも似た、ろう者はかわいそうで守られる存在。
 感想は「私はろう者じゃなくてよかった」となってしまう系。

2.  わざとらしいくらいの美化。勧善懲悪。
 いやそんな乗り切るの簡単じゃないし、と感じるほどの軽くて薄い内容。
 誤ったイメージを植え付けかねないもの。

裏腹ではありますが、どちらも振り切れると非現実的。
これが嫌で、正直今までろう界隈の物語は
ろう者が書いたり関わったもの以外は取り入れないようにしています。

 でも、デフヴォイスはそういう意味で “ちょうどいい”。
ろう界隈のことをすごく取材されています。
変に美化しないし、変に貶めない。
私が見てきたろう者、手話の世界が凝縮されている。
これがろう者と普段関わっていない方が書いたと思えないくらい。

「ディナーテーブル症候群」というものが本文に出てきた時、
以前記事にしたきょうだい(家族)の関係性のことを
より深く分かりやすく書いてくれている感じがして驚きました。
これが拗れたら作品のようになるんだろうなと思います。

そして本を読めば、下記の話の感動も増し増しです。

というか、本を読めば私の記事の意味がどんどん分かるようになると思います。
私にも文才があれば、もっと心に響くように届けられるんだと知らされます。

ディナーテーブル症候群が何かは、ぜひ本を読んでいただきたい(4作目)。
4作目はコロナ禍でのろう者の様子も分かります。

ミステリーとして手話作品として

 登場人物たちは悩む。
悩む内容も納得できる。
結果も煮え切らない。
全然完全無欠じゃない。
人間らしさがある。
当然簡単には解決しない。
更に新たな心配も増える。
それでも最後には清々しさを感じる。

 ミステリーとしてもおもしろく、
手話作品としてもわざとらしさがない。
現実的で清々しく “スキ” を押したいくらい、よくできてる!
私みたいな社会派ミステリーが好きな人間の
好みに合ったってことかもしれないですが。

 それでもミステリーファンも、手話、ろう者のこと少し知りたい方も
どちらも満足させてくれるものです。
是非ご一読ください。


#読書の秋2022 #デフ・ヴォイス


別言語の手話、手話話者のろう者についてまとめています。


最近話題のろう界隈のドラマから考えたこと。
※ドラマ評、批判はないので安心して読んでみてください。


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