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「私でも」の安心感と、スパイスカレー沼と。

■「私でも」作れるスパイスカレー

スパイスカレーの沼にはまっている。

ここ1ヵ月ぐらい、週1〜3回はスパイスカレーを作っていて、ひどいときは2日続けてカレー。「お鍋いっぱいに作ったから、明日もカレーやで」ではなく、翌日にまたイチから作るのだ。

スパイスカレーとは、カレー粉を使わず、スパイスで作るカレー。

私にはもう、カレー粉は必要ない。さようなら、買い置きのカレー粉。わが家の食卓を支えてくれて、成長期の子どもたちを笑顏にしてくれて、ありがとう。

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ずいぶん前から気になっていたスパイスカレー。挑戦してみたくても、「何十種類ものスパイスを揃えなあかんのかな 」とか、「めちゃくちゃ時間かかりそうやん」とか、「なんか、めんどくさそう」とか。なかなか一歩を踏み出せないままでいた。

そんな中で出会った、この本。
「私でもスパイスカレー作れました!」

「私でも」というからには、「私」は初心者であり、特に料理上手でもなく、私と同じぐらいのレベルではないのか。そんな「私でも」作れるというなら、こんな「私でも」作れるはずである。間違いない。大きな安心感に包まれてゆく──。

そして、ネットで注文。

この本は、東京大学大学院で食品科学の観点から香辛料の研究をされている、スパイス料理研究家「印度カリー子」さんと、イラストレーターであり、キャンプコーディネーターでもある「こいしゆうか」さんとの共著。印度カリー子さんが先生となり、その教えをこいしゆうかさんがマンガやイラストで紹介している。

関係ないけど、こいしゆうかさんの本は2冊目。

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そっか…。はよ、カメラもはじめないと。

どちらも「サンクチュアリ出版」さんから発行されている。「サンクチュアリ出版」さんは、「本を読まない人のための出版社」。読書は苦手…という人にも読みやすいように工夫されている。もちろん、本を読む人にも楽しい。

この本、「私でもスパイスカレー作れました」で紹介されているカレーは、私のような料理下手にも寄り添ってくれるカレー。その魅力をお伝えしたい。

まずひとつめ。

必要なスパイスは基本3種類、というところ。「たった3種類ならできるかも」と、一気にハードルが下がる。クミン・ターメリック・コリアンダーだけ。辛さがほしい私は、ここにレッドペッパーをプラスするので4種類になる。3種類だけなら辛いものが苦手な人でも大丈夫。子どもも一緒に食べることができる。

スパイス

ふたつめ。

作り方がとにかくわかりやすい。わかりやすいから、すぐに作りたくなる。実際、この本が届いたその日に材料を揃えて、夕方にはスパイスカレーが完成した。基本の材料、作り方があって、その流れさえ覚えれば何も見なくても作れるようになる。私も今はもう、何も見なくてもアレンジできるようになった。レシピがないと何も作れない「私でも」だ。スパイスは3種類とも小さじ1、などすべての材料の分量が覚えやすいのもいい。

みっつめ。

手抜きOK、ずぼらOK。たとえばスパイスカレーの主役は、お肉や魚や野菜など何でもよくて、ずぼらさん用に、切らなくてもよいもの、冷凍もの、缶詰なども紹介されている。

基本のレシピにはみじん切りのしょうがとにんにくがあるが、面倒ならチューブでも可。私の場合、しょうがはチューブ、にんにくは桃屋のビン入り「きざみにんにく」を使用している。

トマトだってトマト缶でもいいし、「これじゃないとだめ!」なんて言われない。「こうしたらいいやん」と言ってくれるやさしさがある。

素晴らしいところをあげるといくつもあるけれど、大きくはこの3つ。料理が苦手な「私でも」、料理が得意な「あなたでも」、誰にでも作れるガイドになっている。

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固定の材料は、玉ねぎとトマト、にんにく、しょうが。3種類のスパイスと、塩、サラダ油、お好みで辛いスパイス。

あとは主役となる素材(肉・魚・野菜など)を決め、ベースを決める。ベースは水と、「牛乳・ヨーグルト・ココナッツミルク・生クリーム」からひとつを選択。

主役は何にするか、ベースは水と何を組み合わせるか(水のみも可)。そこだけ考えれば、基本は同じというのが印度カリー子さん流のスパイスカレーで、とってもシンプル。

■1ヵ月スパイスカレー生活ふりかえり

はじめて作ったスパイスカレーがこちら。

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3種類のスパイス+レッドペッパーを使った、チキンスパイスカレー。 本には写真が掲載されていないので、これで正解なのかはわからないけれど。

とにかく! すっごくおいしい。いつも食べているカレーとは、まったく別もの。スパイスが香る、本格的な味だ。食べ終わったあとは満足感でいっぱいなのに、翌日にはまた食べたくなる。これが沼のはじまりなのか。

1ヵ月あまりで作ったスパイスカレーは、10種類ぐらいだろうか。写真に残しているものだけをご紹介。

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上段左から、豆入りキーマカレー、チキンと豆のカレー、キーマカレー目玉焼きのせ。
下段左から、エビカレーとミックスビーンズカレーのあいがけ、チキンカレー、チキンとほうれんそうのカレー。

使用したスパイスも写真に残している。

基本の3種類+辛さスパイス。

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数日後、ホールスパイスが増えた。クリオネみたいなスパイス、クローブは虫除け(Gとか)になるそうなので、お皿に入れてキッチンに置いている。そして…。

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さらに数日後。またホールスパイスが増えてますやん。

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シナモンとカルダモン。気がつけば、これを買うためだけにカルディに走る人になっていた。

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お皿のスパイスの量は、ふたり分。基本の3種類で充分なのに、じわじわとわいてくる探究心。そうしてはまっていく、スパイスカレー沼。

さらに、カレーに合わせるラッシーも手作りしてみる。

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もうあとは、頭にターバンを巻くだけだ。

と思っていたら、TOKIOはカレー用のスパイスを育てるところからやっていた(たまたま見たDASH再放送)。すごい。レベルが違う。私ごときがスパイスを語ってはいけない。スパイスカレー沼は、思った以上に深いのだ。

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印度カリー子さんによると、スパイスカレーはダイエットにもいいという。「五感をフルに使って食べることで、脳が満足して少量でもお腹いっぱいに感じる」とのこと。これは食べるたび、実感する。それに、日本のカレーに比べて、小麦粉が入っていないし油も少ない分、カロリーが低い。じゃがいもなどの根菜類も使わないので低糖質。食べたあとの胃もたれもない。

また、一つひとつのスパイスには胃腸の調子を整えたり、抗菌作用、抗酸化作用があるものや、リラックス効果があるものも。つまり、何かと身体にいい(ざっくり)。

■なぜスパイスカレーなのか

実は私。カレーは嫌いではないけれど、特別好きでもない。たとえばビュッフェでカレーがあっても食べないし、カレー専門店以外の飲食店でカレーをオーダーすることもほとんどない。

では、なぜスパイスカレーを作りはじめたのか。

長男(25歳)はもう家を出て、大阪で一人暮らしをしている。大学生の次男(20歳)も、卒業すれば家を出ていくだろう。

私は料理が得意ではないけれど、それでも毎日の食事を作り、お弁当を作り、ときにはお惣菜を買い、インスタントもフル活用しながら子どもたちを育ててきた。長男も次男もそれぞれに、私の手料理で好きなものはあるようだけれど、何かひとつ、久しぶりに実家に帰ってきたときに「お母さんのコレが食べたい!」と言ってもらえるものをつくりたかったのだ。

それは肉じゃがだったり、卵焼きだったり、マカロニサラダだったりでも全然いい。ただ、いわゆる「おふくろの味」とは違う、もっとインパクトのあるものがあったら──と考えるようになった。

今のうちにせっせと次男に食べさせて、家を出ていってからも「食べたい」と思ってもらえるものを。「あれが食べたいから、帰るか」と思ってもらえるものを。

つまり、帰ってきてほしいから、「食べもので釣る」ということ。

息子たちはカレーが大好きだし、スパイスカレーならちょっと特別感があるし、おしゃれな響き。

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そうして作るようになった、スパイスカレー。次男も気に入ったらしく、何度も「カレーが食べたい」と言い、飽きた様子もない。「やっぱ、うまいな」と言いながら、わずか数分で完食する。

あとは、長男が帰ってくるまでに、もっと腕を磨いて餌付け……いえ、食べてもらうだけ。しかし、彼を食べもので釣るのは難しい。お金でならすぐに釣れるのに。

その前に、「ヤツは帰ってくるのか問題」もあるし、コロナ禍で「帰ってこれるのか問題」もある。

ま、いつか食べてもらえたら。


実家のおかんの得意料理がスパイスカレーって、ちょっといいと思いませんか。


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