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あのときの王子くん

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記事一覧

あのときの王子くん from21to27 

あのときの王子くん from21to27 

あのときの王子くん
LE PETIT PRINCE
アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ Antoine de Saint-Exupery
大久保ゆう訳

あのときの王子くんについて  大久保ゆう

5 脱・内藤濯訳
この訳は、さまざまな点で、すでにある内藤濯氏の訳から抜け出ることを試みています。私は、この作品がファンタジーであるとは思いませんし、また『星の王子さま』という題名を冠されるような作

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あのときの王子くん  from11to20

あのときの王子くん  from11to20

あのときの王子くん
LE PETIT PRINCE
アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ Antoine de Saint-Exupery
大久保ゆう訳


レオン・ウェルトに

 子どものみなさん、ゆるしてください。ぼくはこの本をひとりのおとなのひとにささげます。でもちゃんとしたわけがあるのです。そのおとなのひとは、ぼくのせかいでいちばんの友だちなんです。それにそのひとはなんでもわかるひとで

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あのときの王子くん   from6to10      

あのときの王子くん  from6to10   

あのときの王子くん
LE PETIT PRINCE
アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ Antoine de Saint-Exupery
大久保ゆう訳


レオン・ウェルトに
 子どものみなさん、ゆるしてください。ぼくはこの本をひとりのおとなのひとにささげます。でもちゃんとしたわけがあるのです。そのおとなのひとは、ぼくのせかいでいちばんの友だちなんです。それにそのひとはなんでもわかるひとで、

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あのときの王子くん  3, 4, 5

あのときの王子くん  3, 4, 5

あのときの王子くん
LE PETIT PRINCE
アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ Antoine de Saint-Exupery
大久保ゆう訳



 その子がどこから来たのか、なかなかわからなかった。まさに気ままな王子くん、たくさんものをきいてくるわりには、こっちのことにはちっとも耳をかさない。たまたま口からでたことばから、ちょっとずつ見えてきたんだ。たとえば、ぼくのひこうきをはじ

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あのときの王子くん 1, 2

あのときの王子くん 1, 2

あのときの王子くん
LE PETIT PRINCE
アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ Antoine de Saint-Exupery
大久保ゆう訳


〈星から出るのに、その子はわたり鳥をつかったんだとおもう。〉

レオン・ウェルトに

 子どものみなさん、ゆるしてください。ぼくはこの本をひとりのおとなのひとにささげます。でもちゃんとしたわけがあるのです。そのおとなのひとは、ぼくのせかい

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西郷隆盛  1      内村鑑三

西郷隆盛  1 内村鑑三

1 一八六八年の日本革命

 天の命によって日本が初めて青海原の中から現われたとき、この国に与えられた命令はこれであった。
「日本よ、なんじの門の中にとどまれ。われがなんじを呼び出すまで世界と交わることなかれ」
 それゆえ日本は二千余年もの間、国内に閉じこもっていた。そしてこの間、他国の艦隊が四方の海を騒がせることも、その沿岸を犯すこともなかったのである。

 日本がかくも長い間、世界から離

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日蓮上人──仏教の僧 2   内村鑑三

日蓮上人──仏教の僧 2  内村鑑三

4 宣言

「預言者はおのが故郷において尊まるることなし」という。それにもかかわらず、予言者が常にその公生涯をその故郷で始めるというのはいたましい事実である。この世に枕する所のないのをおのが運命と知りつつも、なお故郷に引かれ、そこでどのように扱われるかを知り尽くしながらも、鹿が谷川を慕いあえぐようにそこに行き、そこで拒絶され、石で打たれ追い出される、それが予言者の運命である。蓮長の場合もまた例外で

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日蓮上人──仏教の僧 1  内村鑑三 

日蓮上人──仏教の僧 1  内村鑑三 

1 日本における仏教

 宗教は人間の最大の関心事である。本来の意味において宗教を持たない人間がいることは考えられない。われらの欲望ははるかにわれらの能力を超え、われらの願望は世界の総力をもってしても満たし得ないというこの不可思議な世においては、この不釣り合いを除くために何かをなさなくてはならぬ。行動でそれをすることは不可能であるとしても、少なくとも思考の中では何かをなさなくてはならぬ。

「自分

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中江藤樹──村の教師  内村鑑三

中江藤樹──村の教師  内村鑑三

一 日本の教育

 
《われわれ西洋人が君たちを救いに行く前、日本の学校教育はどんな形のものだったのですか。君たち日本人は異教徒の中では最も賢い国民であるように思われる。何らかの道徳的、知的の訓練を受けたればこそ、君たちは過去においてまた現在においてこれほどになり得たのだとわれわれは信じるのですがね》

故国を離れて初めて西洋人の間に立ち交じった日本人に対し、文化的な西洋人は往々にしてこんな調子の

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日蓮上人   内村鑑三

日蓮上人   内村鑑三



代表的日本人

日蓮上人──仏教の僧           内村鑑三著  内村美代子訳

1 日本における仏教

 宗教は人間の最大の関心事である。本来の意味において宗教を持たない人間がいることは考えられない。われらの欲望ははるかにわれらの能力を超え、われらの願望は世界の総力をもってしても満たし得ないというこの不可思議な世においては、この不釣り合いを

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中江藤樹──村の教師  内村鑑三

中江藤樹──村の教師  内村鑑三



中江藤樹──村の教師                             内村鑑三著  内村美代子訳

1 日本の教育 
《われわれ西洋人が君たちを救いに行く前、日本の学校教育はどんな形のものだったのですか。君たち日本人は異教徒の中では最も賢い国民であるように思われる。何らかの道徳的、知的の訓練を受けたればこそ、君たちは過去においてまた現在においてこれほどになり得たのだ

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西郷隆盛  内村鑑三

西郷隆盛  内村鑑三



代表的日本人西郷隆盛 新日本の建設 内村鑑三 内村美代子訳

1 一八六八年の日本革命

 天の命によって日本が初めて青海原の中から現われたとき、この国に与えられた命令はこれであった。
「日本よ、なんじの門の中にとどまれ。われがなんじを呼び出すまで世界と交わることなかれ」
 それゆえ日本は二千余年もの間、

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二宮尊徳   内村鑑三

二宮尊徳   内村鑑三



代表的日本人

二宮尊徳 農聖人  内村鑑三 内村美代子(訳)
1 十九世紀初頭の日本農業

「農業は国家存在の基礎である」という。これはわが国のように海運、貿易の面であらゆる利益を享受しているにもかかわらず、国民の主要な食料を自国の土に仰いでいる国では、ことに本質的にその通りである。そのうえ十五万平方マイルの国土のうちのわずか二割という狭い耕作地によって、四千八百万という莫大な数の人

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上杉鷹山 (下)  内村鑑三

上杉鷹山 (下)  内村鑑三



代表的日本人  上杉鷹山  内村鑑三著 内村美代子訳

5 社会と道徳との改革

 東洋的考えの一つの美しい特徴は、経済を道徳と切り雎して取り扱わなかった点である。東洋の哲学者にとって富は必ず徳の結果であり、富と徳との相互の関係は実と木との関係にひとしかった。木に肥料を施せば、努力せずに実を得ることができるように、人々に愛を施せば必ず富をなすことができる。それゆえ偉人は木を思って実を得るが、小

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