虚子

きょうこ。

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記事一覧

元ロリだった私の防犯ブザー・レクイエム

私が防犯ブザーを使ったことがあるのは過去一度だけだ。 赤い、スケルトンの防犯ブザーだった。 小学校低学年、学童に行っていない私の下校時刻は午後の浅い時間だった。 …

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7か月前
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フネという働き方

久しぶりにサザエさんを見た。かつては、共感性羞恥を強く感じてしまうため、アニメサザエさんはあまり好きではなかった。それを克服してサザエさんを見ることができるよう…

虚子
3年前
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海の鼠、豚の話

暖簾をくぐって席に着くと、すぐにキリンラガーともつ煮を頼む。まだ空は明るいが、目まぐるしい現代において、たまにはこういう時間の贅沢をすることは大切だ。 途端に寒…

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3年前

餃子を包む話

冷凍餃子がおいしくて安いから、手作り餃子なんてしないって? そうか。でも俺は包むね。餃子を包む。 別に意味なんてないよ。こだわりの餃子というわけでもない。それで…

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3年前
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美容院のスパイの話

娘がどうしても美容院に行きたがらない。どうして美容院に行きたくないのか理由を聞くと、娘は「美容院にはスパイがいる」と言うのだ。 美容院にスパイ?美容院にいるのは…

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3年前
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トマトの星の話

おいしいトマトには星が現れる。白い星だ。 スターマークという。 一昨日スーパーでトマトを買った。小ぶりなトマトが5つ入って、確か250円だったと思う。 トマトの冷蔵…

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3年前
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眠りそうで眠らない夜の話

昨日の夜は、眠りそうで眠らなかった。 充電しているスマホの小さな光を頼りに、枕の右端をずっと見ていた。 この築35年のアパートは隙間だらけで、夜中にもどこからか話…

虚子
3年前
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元ロリだった私の防犯ブザー・レクイエム

私が防犯ブザーを使ったことがあるのは過去一度だけだ。
赤い、スケルトンの防犯ブザーだった。

小学校低学年、学童に行っていない私の下校時刻は午後の浅い時間だった。
住宅街を歩いていると、ゆっくり自転車をこぐ男がいた。男は木の生い茂った公園の前に自転車を止め、公園の木に向かい股間を触っていた。
「うっわ〜こいつ、立ちションすんのかよ!」
そう思いその場を足早に過ぎ去った。

少し歩くと、重いランドセ

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フネという働き方

久しぶりにサザエさんを見た。かつては、共感性羞恥を強く感じてしまうため、アニメサザエさんはあまり好きではなかった。それを克服してサザエさんを見ることができるようになったのは、つい最近の話だ。

磯野家のような拡大家族は今どき珍しい家族だと思う。昔の家庭にジェンダーやら女性の社会進出なんかを当てはめて考えることは不躾だ。

しかし、今はあえてフネという女性の働き方について考えてみたいと思う。

昨晩

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海の鼠、豚の話

暖簾をくぐって席に着くと、すぐにキリンラガーともつ煮を頼む。まだ空は明るいが、目まぐるしい現代において、たまにはこういう時間の贅沢をすることは大切だ。

途端に寒くなったが、瓶ビールのおいしさは健在していて、空っぽの肺を冷やしてくれる。はあああああ。うんまい。くぅ。

さて、こういう店では、恍惚の表情を他人に見られることに慣れなければならない。

「おいしそうに飲むね。ここ、よく来るの?」

こう

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餃子を包む話

冷凍餃子がおいしくて安いから、手作り餃子なんてしないって?

そうか。でも俺は包むね。餃子を包む。

別に意味なんてないよ。こだわりの餃子というわけでもない。それでも餃子を包むのは、餃子を包んでいる時間が好きだからなんだろうな。

餃子を包むのはプレゼントを選ぶのに少し似ている。プレゼントを選ぶとき、喜んでくれるかとか、どんな顔するかとか、ありがとうなんて言われている自分まで想像しちゃうでしょ?そ

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美容院のスパイの話

娘がどうしても美容院に行きたがらない。どうして美容院に行きたくないのか理由を聞くと、娘は「美容院にはスパイがいる」と言うのだ。

美容院にスパイ?美容院にいるのは、スタイリスト 、トップスタイリスト 、ディレクター 、クリエイティブディレクター、それからアシスタントと相場は決まっている。スパイなんてランク表のどこにも書いてない。

娘が言うには、美容院にはスパイが潜んでいて、情報を聞き出すそうだ。

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トマトの星の話

おいしいトマトには星が現れる。白い星だ。

スターマークという。

一昨日スーパーでトマトを買った。小ぶりなトマトが5つ入って、確か250円だったと思う。

トマトの冷蔵保存のコツは、ヘタを下にすることだ。さらに、袋に入れて保存しておけば、トマトだけでなく他の野菜もおいしく保存することができる。夫はそんなことなど知らないだろう。何せ、ワイシャツの袖を捲ったまま洗濯機に入れるような男だ。生きることに

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眠りそうで眠らない夜の話

昨日の夜は、眠りそうで眠らなかった。

充電しているスマホの小さな光を頼りに、枕の右端をずっと見ていた。

この築35年のアパートは隙間だらけで、夜中にもどこからか話し声が聞こえる。顔も知らない男女の話し声は、眠りそうで眠らない夜にはぴったりの雑音だ。

内容は聞こえないが、夜中に男女がする話の内容なんて、どうせ星の話だ。アパートの前の道で、見知らぬ男女が星の話をしているのだ。

二人は向かい合っ

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