高橋 恭介 Takahashi Kyosuke

19歳、写真家。フランス。

高橋 恭介 Takahashi Kyosuke

19歳、写真家。フランス。

マガジン

最近の記事

優しくなりたい

「そういうの嫌いだ」と吐き捨てるように言ったあの時の君が、「ありがとう、また会おう」と言ってくれて僕は嬉しくなったりする、なんていうような誰にも分からない気持ちが一つの場所に留まり続ける、そうやっていつか死んでいく。そこには時間がある、時間があるんだよ。 実体のない、掴みようのないものが鼻先を掠め続ける、押すと引っ込みそうな、流動する。「きっとどこにも行けない」そんな気持ちになる。 どうにもならない世界があって、戦争があって、今もあることに気づこうとしない僕はとんだろくで

    • フランス退屈日記♯5: 春だったね

      ノルマンディーの陰鬱な空気が変わりつつある。街中を歩けば桜なのかは分からないが、桃色の花があの子の笑顔みたいに見える。フランスにも春が〜! ここ1ヶ月の素晴らしい暮らしをどう説明しようか悩む。それほどにいい暮らしをさせてもらっていると思うし、堂々と「好きだ!」と言えるはずだ。二月には日本の友人たちと一緒に東欧に旅に出たが、旅を終えてから1週間後に僕のホームタウン(と言っていいのか)であるルーアンに彼らが来た。本当に楽しかったのだけれど、この半年でお互いが「日本とフランスにい

      • フランス退屈日記♯4: ボン・ボヤージュ

         #4、今回はフランスはあまり関係ない。今回休みの達人であるフランス人に倣って2週間のバカンス(休暇)を取った。最初にオーストリア、次にチェコとポーランド。なぜこんな変なタイミングかというと、ちょうど日本から数人の友人がヨーロッパ旅行に来ていたからで、「どうせなら会いたい」という話になったからだ。 ・・・  パリから夜行バスに乗ってドイツを経由(遂に経由だけで国を踏む)し、オーストリアの西、ザルツブルクという街で一日を過ごした。モーツァルトの出身地や映画「サウンド・オブ・

        • DJを吊るせ

          今はバカンスの途中、これが終わったら意気揚々と幸せそうな文章を書いてやろう。 しかしながら今日、卑屈で卑怯で臆病な僕はまた逃げてしまった。ので。 何かこの2月が全てを救ってくれる存在だと思っていたのに、 まただ。 酒を垂れ流して、飲み込んでもだめ。 夜の箱に行ってもだめ。 何も変わらず、この気持ちを整理しようとここに逃げてくる。 そんな尖り方いらないよ。 一緒にいった女友達がナンパされているのを見ながら、その子達が他人から女に見られていること、そして人は変わっ

        マガジン

        • 写真
          4本
        • フランス退屈日記
          5本
        • To Be Dozen
          6本
        • 特集
          4本

        記事

          写真をやめる

          写真をやめた、写真を撮るのをやめた。 やめたやめたやめたやめたやめたやめた。 少しだけ。 何を撮るべきか、自分が何を言いたいのか分からなくなった。 僕にとって写真は、自分自身の表現ツールであると同時に句読点みたいな役割があって、それが自分の中でとても心地よいものだった、 からずっと撮ってた。 でも去年の9月に人生で初めて日本を出て、この地で暮らし始めた時から感じていた少しの違和感に、ここにきて目が離せなくなってしまった。自分の立ち位置、習慣、言葉、視界の変化に置き

          海峡、その先。

          自由を望んでいた、縛られたくなかった。 自由になった、その先には何があったのか。 君がいた、それ以外は何もなかった。 君以外はなにも。 過ぎた日々がベッドの上で僕と共に横たわる。 見つめ続け、求め続け、それだけなのか? あいつもそうだったのか? それとも留まるに値するものを見つけたのか? 更衣室、冬の朝、コンクリート、東京の空、 鶯町、平田、小田原、夜の首都高、パリ、 山手線、東武東上線、西武新宿駅。 最低、最高、最低、目線が交わる、呼んでる。 寂しい

          フランス退屈日記♯3: 元日パリ、晴れのち曇り、のち雨。

           今年は日本より遅れること8時間。有名な凱旋門×シャンゼリゼ通りから少し外れたところで高校時代の友人と年明けした。  前々日までオランダへ行っており、島に住んでいたときの知人の家に泊まりながら、現代写真の聖地で写真たくさん見てきた。ー色んな意味で素晴らしい国だった、死にかけたけどー。(含みが気になる人は会ったときに聞いてほしい)。  そしてオランダからホームのルーアンに帰る手前、パリの年明けを体験していこうという魂胆だった。が、結論から言うと、もう一生しない。多分。いや、年

          フランス退屈日記♯3: 元日パリ、晴れのち曇り、のち雨。

          なぜか今年も十二月になってしまった

           「12月になってしまった〜」と、さも重大なことかのように心の中で何回も呟いてみる。毎週、オンエア2日後の朝に聞いている『星野源のオールナイトニッポン』、源さんも年末になると何もやっていないように思えるそうなので、「そんなもんだよな」と心を落ち着かせた。  サンタさんの正体を知ってから「クリスマス」というイベントの存在感がどんどん弱まっていっていて、それに伴って12月のイメージも赤色から灰色に変化しつつありまして、今日も僕は生きるための抗体を求めて彼と対峙しました。今年一番

          なぜか今年も十二月になってしまった

          フランス退屈日記♯2: 一渦抜けたな、と。

           最近のSNSは1年前に一体自分が何の渦中にいて、どんなことを思っていたのかということをご丁寧にも教えてくれる。そんなことがある度に「あぁ1年というのは短いようで意外と長いものだな」と不本意にも考えてしまうのだから成長というものがなくて困る。時間というのは本当はとても良い加減なものなんだろう。これはそう考えた方が楽だからという話で、地球がコーヒーテーブルのように平らであると村上春樹が便宜的に説明してくれたのと同じことだ。進化しないな人間は。  この国に来てから2ヶ月半。もう

          フランス退屈日記♯2: 一渦抜けたな、と。

          フランス退屈日記♯1: ちゃんと人間か

           フランスに渡ってとうとう1ヶ月が経った。「早かったようで長かったなぁ」というのが正直な感想だと思う。1ヶ月もいると街の雰囲気や買い物、フランス語にも少しだけ!慣れるものだったりする。毎日朝早く起きて学校へ行き、休み時間は散歩したり、パン屋さんに行ったり、本を読んだりする。なんだか高校生に戻ったみたいだなと感じた瞬間、半年前の卒業式がやけに遠く感じられたりもした。あの日はどんよりした曇りの日だったっけ。          そういうことを学校の横にある植物園の誰もいないドーム

          フランス退屈日記♯1: ちゃんと人間か

          エスプレッソ 又は 紅茶

          日本を離れるまであと5日。今年は秋口の心地よさをあまり感じることなくそのまま冬とこんにちはしそうである。ノルマンディーの寒さはいかほどか。まぁ悪くはないのか?昔から秋はそんな好きではない気候は好きだけど。秋は時間に閉じ込められた感覚になる。宙ぶらりんというか、自分がこのままどこにも逃げ出せないのではないかという気持ちだ。毎年ある。ということで今日から9月病と名付けることとした。ちなみに5月病にはかかったことがない。9月病の症状を主に2つ。1つ目は現実をこなす気が皆無になる。2

          エスプレッソ 又は 紅茶

          シェリー

          日々の悔しさを丸く収めようと呑み込んだ俺。 どんどん、どんどん、心に降り積もった。 それに気づいた頃にはもう泣いていた。 悔しい。 どうしようもなく、無力を自覚する。 だがそれでも、それでいて尚、 俺は真実へと歩いていきたいと思うよ。 剥き出しに弱い俺。 理想はある。甘えはいらない。 この毒を抱え込んだこの身体のまま。

          街角コペルニクス

          先週、宮崎駿監督最新作『君たちはどう生きるか』を鑑賞してきた。 まだ観ていない人もいると思うので詳しい感想は控えるが、世間での「難解」という印象とは裏腹に、僕は「誠実な作品であった」という印象を受けた。 宮崎監督の半生が描かれている今作では、監督の作家性がこれでもかというほど詰め込まれている。それは使い回しとも既視感とも取れるが、その作者の無意識を言葉にして、そこに差異を見出すのは観客の仕事であるのだ。 一人の少年が色々なものに影響をうけ、そこに大切な何かを見、自分の中に

          通年スランプ

          高校を卒業してから3ヶ月が経ち、フリーターとしての生活を日々送っている19歳と16日の僕。 島暮らしを終えた今、僕は毎日新宿の東口で朝から晩までアルバイトをしている。「これもこれからの生活のためだ」と意気込んで始めたこの生活も日々弾力を失い続けている。 写真を撮ってみるも、そこには何かの「悲壮感」みたいなものが垣間見える気がしてならないし、テーマをもって撮ってみても、そのテーマに自分が分解されている始末である。 多分、スランプである。(心的に) 人口2000人の島に3

          あの気持ち良さに名前をつけよう

          小中からの友達の家に。 近くて遠いような感じのやつ。最初はクールだと思ってたけど、本当はすごい熱かったやつ。なんか俺が仲良い人はみんな、近いのに遠い気がする。 ラーメンを食べ、ドラマや映画を観て、カラオケにいって、語り合う。いつまでも変わらない遊び方。 彼は演劇をやっている。大阪で彼の家に泊まった夜、お互いのことについて話した。彼の熱い演劇の話。俺も写真の話で返す。完全には理解できてはいないだろうけど、確かに繋がる感覚がある。 そして、一つ話題に上がった。「あの気持ち

          あの気持ち良さに名前をつけよう

          『なに本気になってんの?』って言われたのをずっと覚えてる。

          確かあれは小学4年生の12月だった。その時期はちょうど学校の持久走大会の練習期間で、僕は張り切っていた。 2時間目と3時間目の間にあるフリータイム(長めの休み時間)に僕は校庭で一生懸命走って練習していた。3年生のときはあまり結果が振るわなかった持久走大会で勝ちたかったのだ。 フリータイムの間に校庭を何周もし、汗だくのまま下駄箱に向かった。下駄箱の前まできたそのとき、汗だくで息の上がった僕に同級生の男の子が言った。 「なに本気になってんの?お前より早いやついっぱいいるんだ

          『なに本気になってんの?』って言われたのをずっと覚えてる。