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転身・転職成功者たちへ聞く、自分らしく働くということ #2 ジュエリーデザイナー圓尾瞳さん

仕事をしていると、『現状維持のキャリアでいいのか』『本当にやりたい事を追いかけるべきか』と迷いが生じることがある。仕事について悩むのは、あなたの志が高いからこそ!覚悟を決めて変化するには勇気がいるけれど、いつだって心の声に従って『自分らしさ』を見出してほしい。そんな思いを込めて、本企画では転職・転身・独立を経験し、自分らしい生き方・働き方を選択した女性にその経験を伺います。

第二回目は、アパレルバイヤーから縫製のアトリエに転職後、自身のジュエリーブランド『maruo』をスタートさせた圓尾 瞳さん。仕事で感じる迷いやモヤモヤした感情が募る日々を乗り越え、自分の心の素直になり、『生きた爪痕』を残すために一歩踏み出したのが3年前。そんな圓尾さん流の、感情との向き合い方や不安解消法を教えてくれました。

◆Profile◆
圓尾 瞳(@hitomimaruo)/クリエイター/20代
拠点:パリ

Q1:前々職・前職・現職の仕事内容を教えてください。最近の1日のお仕事の流れはどんな感じでしょうか?
「最初の職業は卸売レディースアパレルのバイヤー、その後、縫製のアトリエに転職しパリコレブランドなどのサンプルを作る縫製のお仕事をしました。3年前にフリーランスへ転身、自身のブランドをスタートさせました。
わたしは一つのことに没頭すると、同じ日にあまりいろんなことを同時に効率よく進めらないんです。なので、一日の仕事の流れというよりは週単位でスケジュールを立てて、日毎に区切ってやることを決め『その日はそれしかしない』というちょっと極端なスタンスで仕事をこなしてます。
例えば、制作の日はひたすらに引きこもってエンドレスに制作。買い付けの日はひたすらにブロカントを回って買い付け。インプットの日はひたすらインプット、というような感じです。」

Q2:独立してコスチュームジュエリー『maruo』の立ち上げを考え始め、実際に行動を移したのはいつ頃からですか?そのきっかけは?
「ブランドをはじめようと思ったのは、フリーランスになった2ヶ月後でした。きっかけはシンプルで『自分にしかできないことがしたい』と思ったからです。服作りは昔からの夢だったのですが、念願叶って前職に就いたとき、なぜか全く幸せを感じられず、楽しむことができなかったんです。その理由を探ってみると、それはわたしでなくてもできる『代替可能な仕事』だったから。『代替不可能な私にしかできないことがしたい。』それで仕事を辞め、フリーランスで生きていこうと決めました。

フリーになった直後は、それまでの経験を活かして衣装制作やスタイリングのお仕事などをしていたのです。が、なんだかその時もまだモヤモヤとした感情が残っていて。なんでだろうって何度も自問自答して、何度も心の中を探るように内省してノートに書き出していって、わたしは自分の本当の気持ちに気づいたんです。

せっかく生きているんだから、わたしは自分の生きた爪痕を残したい。

自分の心の声に素直になってみると、かなり強くそう思っていることに気づきました。だから、自分の名前を冠したブランドをやろうと決めたんです。自分の名前を冠して私の『好き』を発信するブランドなら、それは間違いなく私にしかできないし、私の生きた爪痕になる。そう思って『maruo』というブランドをはじめました。」

Q3:独立において、最も不安だったことは?そしてその不安はどのように解消されましたか?
「『お金』です。とにかくお金がない状態でのスタートでした。人間、お金が極端に少なくなるとどういう心境になるのかを知れたことは本当に大きな経験でした......(笑)何をやっていても不安で。でも不安な時って、どうしたらその不安要素を取り除けるかが不明瞭な状態なんですよね。不安要素を取り除くために必要な行動は具体的になんなのか。リストアップすることで不安を解消していきました。とにかく目で見える形で書き出すと、あとはひとつひとつこなしていくだけ。何度もお金について不安になったので、何度もスプレッドシートで3ヶ月先までの収支シュミレーションを行いました。今もそのスプレッドシートをみると、よくこのギリギリの生活で生き残れたな....としみじみ思います...(笑)」

Q4:独立当初の不安と情熱を抱える自分へ声をかけるとしたら、何と言う?
「神様は越えられない試練を与えない」

Q5:バイヤーから縫製アトリエ、そしてブランド立ち上げと、経験と技術を糧に着実なキャリアアップをされていますよね。昔からブランドを持ちたいと思っていましたか?それとも色々な仕事をする中でそういう思いが芽生えたのでしょうか?
「いつも何かしらの夢や目標を持っていますが、自分のキャリア(と呼ぶのに違和感がありますが)があまり着実だとは思えません。非常に遠回りしている人生だな、と思います。でも、わたしにとってはひとつも欠けてはならない経験とプロセスでした。

ずっとブランドを持ちたかったかというとそうでもなく、ファッションという枠組みの中で知識・経験が増えれば増えるほど、自分のブランドを持つなんて到底できないな、という気持ちになっていきました。心の奥深くの正直な声を聞けば、おそらく、人生のどの時も『ブランドをやりたい』と思っていた。でも、正直に声に出せなかった。

フリーになってブランドを立ち上げるか迷っていた時、強く背中を押してくれた人が少なくない人数いたんです。人に恵まれている人生だと思います。小さい規模とはいえ、すごく嬉しく、『ああ、今から始まるんだ』って思いました。」

Q6:ヨーロピアンジュエリーとの出会い、リデザインにこだわる理由は?また、ファッションに目覚めたエピソードなどあれば教えてください。
「ブランドをはじめて1年ほど経った頃。今の雰囲気と全く違うスタイルのアクセサリーを作っていたのですが、方向性にすごく迷っていたんです。『このままではだめだな』と思ってて。とりあえず新しい空気を取り入れようと思い、ずっと行きたかったパリへ行きました。その時に美しいヴィンテージに出逢いました。文字通り、全身の血が騒いだのを覚えています。ほとんど何も考えず、目に止まったもの、目があったものをひたすらに買い集めていきました。

リデザインにこだわる理由は、新しく生み出さなくても、すでに世の中には恐ろしいほどたくさんの素晴らしいものがあるからです。
目まぐるしくトレンドが移り変わるファッション業界。『新しいものがかっこいい』という風潮もあるけれど、ヨーロッパでは古いものを大切に長く使うのが当たり前に行われている。そこに衝撃を受けました。古くて素敵で、そのままでは使えないけれど、ものすごく美しいものたちが本当にたくさんあるんです。『ただシンプルに、古いものを選ぶことだってかっこいいんだよ』という文化を作りたい。時代が移り変わっても、美しいものは不変です。それをうまく現代に馴染む形に変換させて、今の感覚に溶け込むものを作りたいと思っています。

ファッションに本格的に目覚めたのは、私服の学校へ転校した高校3年のとき。お金はないけど、毎日違う服が着たい。リサイクルショップで、『手を加えたら化けるな』という服を買いあさって、ひたすらリメイクしたり着方をアレンジしたりしてたんです。今思えば、その当時の経験が、間違いなくブランドのファンデーションになってるなと思います。」

Q7:独立し、仕事も生活も新しい環境に身を置いたことで、最も変化したことは何ですか?
「独立前と後とでは、全く別の人生のように感じるくらい全てのことが変化しました。もっとも変化したのは、時間の使い方です。
『maruo』を求めてくださる方がいる以上、わたしはできる限りのことをしたい。だから、「自分でなくてもできることはやらない」と決めました。アウトソーシングできる部分はして、時間を増やすことのできるツール(移動手段や家事効率化など)にはお金を惜しまなくなりました。ブランドのための自分の可処分時間を少しでも多くなるようにする。独立後にできた価値観のひとつです。」

Q8:会社員から社長になり、責任と覚悟が今まで以上に大きくなったのではないでしょうか。独立して自分の道を歩むために、必要な心構えとは?
「私は個人事業主・フリーランスの身なので社長ではないのですが、確かに大きく変わりました。自分の名前で活動する以上、全ての行動が自分に返って来ます。同じ仕事でも、会社に属しているのと、個人の名前でやるのとでは大きく異なります。会社に属していた時は会社の看板があったからこそ上手くいっていたんだと、独立後に痛感しました。こんなにも無力なんだ、と。
独立後、自分の道を歩むために必要な心構えは、ただ一つ。誠実に取り組む。信用の積み重ねが露骨に跳ね返ってくるのが自分の名前で戦うということです。何度も苦い経験を重ねて、まだまだ失敗も多いですが、変わらず肝に命じていることです。」

Q9:今後のキャリアプラン、夢や展望を聞かせてください!
「直近の目標は、自分のショップを持つことです。今はアクセサリーを中心としたラインナップですが、少しずつ商品の幅を広げていきたいと思っていて、パリで今、新たなプロダクトのリデザインの可能性を探っています。
長期の夢は、わたしが死んだ後『maruo』の回顧展が行われること。例えばその回顧展で『maruo』を知った小さな女の子が、リメイクに興味を持ってお姉ちゃんのお下がりのワンピースを自分流にアレンジする。そういうことを考えるとなんだか無性にワクワクするんです。
この先何十年も残るようなものづくりがしたい。
誰かの何かのきっかけになることがしたい。
自分の生きる意味と、生きた意味を作りたい。
そのためには、もっともっと、わたしもブランドも変わっていかないといけないと強く感じています。」

Q10:転職やフリーランス転向、独立を検討中の方に、圓尾さんの経験を踏まえたアドバイスをお願いします!
「転職や独立を考え始めるときって『その時の自分にとって、環境を変えることが必要なタイミング』すなわち、『次のステージに行くタイミング』だと思うんです。とても素晴らしいことだと思います。
不安も伴いますが、どれを選んでも、不思議なもので、常に自分にとっての最善の道につながっていくように思います。きっとうまくいきます!大丈夫です。
うまくいかないな、と感じたとしても、その経験がきっとまた糧になり肥やしになり、人生に深みが出てくるんだと思います。
わたし自身、うまくいかないことだらけでしたが、なぜかそのうまくいかなかった経験や、その時に出会った人たちが後に素晴らしい機会を与えてくださったりと、すごく今に活きているんです。
ただ、フリーランス、独立については付け加えたいことがあって、じっくりと検討することも大切ですが、勇気を出さないと独立できない、というのであれば一旦ストップしてみたほうがいいかもしれません。ある種、夢中になれることでないとフリーランスの継続って難しいと思うんです。
本気で「やりたい!」と思ったことは、勇気を出すとか検討云々の前に、後先考えず気付いたらやってしまってた、というものだと思います。本当に好きなことや夢中になれることでないと、継続することはなかなか厳しいものです。独立することで肝心なのは、途中で辞めないことです。当たり前ですが、諦めなければ続けていけます。
「今やろうとしていることは夢中になれることか?」シンプルなこの問いが、わりと良い決断の判断軸になると思います。」

Q11:世界各国で暮らす女性陣がリモートワークでプロジェクトを遂行するLanderの働き方やチームつくりをどう思いますか?
「素晴らしいと思いました。こんな働き方があるのか!とすごくワクワクしました。日本国内ですらリモートワークって全ての会社に浸透しているわけではないのに、時差も国もバラバラな世界各国にメンバーがいる、という点に驚きです。それぞれの国に、それぞれの仕事のスタンスやライフスタイルがあるからこそ、世界各国にメンバーがいると各国のいいとこどりをしてチームを作っていくことができるし、日本国内だけでは起こりえない化学反応が起こりそうで、切磋琢磨していけそうですよね。女性陣だけのチームっていうのもかっこいい。すごく刺激を受けました!今後のプロジェクトも楽しみです。」

Q12:あなたのモットー(座右の銘のようなもの)は?
「好きに素直に生きる」

◆取扱店
・FREAK’S STORE 静岡店
・FREAK’S STORE なんばパークス店
・SLOBE IENA

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《編集後記》
圓尾さんとは業界も世代も違いますが自分のことかと勘違いするくらい、経験とその時々の思考がとても近くてびっくりしました。自分自身と徹底的に向き合うのは、苦しい作業でもあります。でもそれを乗り越えると、色々なことが開ける。絶対にぶれない『本当の自分』になれるんですよね。それさえあれば、あとは目標に向かって突き進むだけ。圓尾さんには自分という強力な味方がいるから、これからどんなことも、彼女らしく乗り越えていけるんだと思います。(by Mutsumi from LA)

クリエイティブプロデューサーMutsumiのロサンゼルスでの活動を辛酸なめ子さんがnoteとハフポストで連載中です。そちらもよろしくおねがいします。 https://note.mu/nameko_la