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『むき出し』の声を聴いた。

*本文は、考察・内容の詳細を記したものでは
 ありません。あくまで個人の感想です。



『優しい眼差しが
    純粋な言葉が
    誠実な覚悟が
    重要な小説を生んだ。』

この本に対する
又吉直樹さんの言葉。


〜殴られるのも
    嘘吐くのも
    寂しいのもぜんぶ
「普通」だと思っていた。

でも、人生は変えられる。〜

これは、著者の言葉。


2021年9月27日に
出版された『むき出し』。


又吉さんは、著者との対談で

この小説の文章から著者の
『声』が聴こえてくると
話している。


私も…そう思った。


…と、いうか

私は読みながら
同時に頭の中で映像化され
ひとつひとつの場面が
はっきり浮かび上がってきた。

やりとりが見える。

本を読んでいるのに
映画を観ているような
不思議な感覚。

そして

第三者として
読んでいるのに

気付いたら
主人公の気持ちと
一体化したような感情に
おそわれたり

読みながら
同時進行で
自分の今までを振り返り
現在の状況を考えてみたり…

とにかく今まで
読書では味わったことがない
感覚を体験した。



頭は『むき出し』の世界に
すっかり入り込んでいて
その中で主人公石山の人生を
追っているのに

追いながら
著者自身を見てきた2年間の
いろいろな場面や言葉を思い返し
ひとつひとつ繋げながら

自分の人生や
考え方についても向き合う……



無音の部屋の中、
全集中で読み始めて二時間半。

終わった後、魂が抜けた。



一人の大人として

前職が保育士で
現在、教員として沢山の学生に
関わるものとして

そして
兼近大樹さんの1ファンとして

とにかく
いろんな立場と角度から
衝撃を受けて本を閉じた。


感想文なんて
書いていいのだろうか…?


『感動した』
『切ない』
『涙が止まらない』
…そんなありきたりな言葉で
この本の感想は述べられない。


著者は
『読み手が自由に読んだらいい』
と、話していたから

どんな感想も 
勿論間違いではないけれど


この小説に込められた
覚悟や想いを感じれば感じるほど
感想をどう表現したら良いか
悩むくらい深かった。


何故かって、
フィクションとは言いつつも

石山の気持ちや言葉は
著者自身だと感じたから。




前述した通り

私は前職、保育士で
今は学校の教員をしている。

子どもたちも学生も
基本みんな平等という
思いのもとに接しているけれど

どちらかというと
私の担当は
いつも少し大変な事情を
抱えている子が多く

家庭が複雑な子
貧困で厳しい環境の子
人が言う『普通』とは
ちょっと違う子…など

いろんな子どもがいた。

貧困、虐待、親の離婚、
障がい、兄妹格差……


子どもは環境を選べない。

だからみんな
一生懸命生きていた。
小さいなりに、必死で。

それはきっと
大人には想像出来ない努力。


子どもは『こども』ではなく
一人の人間なのだ。

そんな子どもたちを
何百何千と見てきたから…

その子たちの声を聴き
一緒に泣き笑いしてきたから

小さい頃の
石山の想いや言葉が
あまりにも刺さりすぎた。



子ども達にとって『親』とは

たとえどんな親であったとしても

(注:石山のご両親のことではなく
    私が実際出会って来た人達の話です)


心の奥底では
一番認めてほしい
愛してほしいと願う存在。

そして
かけがえのない大切な存在。


故に、心配をかけまいと
小さな頃からいろいろな面で
内側にある想いとは違う自分を
演じ続けた石山の

器用なようで最高に不器用な
愛情表現に胸が締め付けられた。



成長の過程での出来事も

ギリギリの描写の部分は
フィクションが
混ぜられているにしろ

大体が著者本人から折に触れ
聞いてきたことに付随して
書かれていたので

まるで答え合わせのような
すべてが繋がった感覚だった。


改めて

彼が今まで話してきた
言葉や考え方はどれも真実で

その場しのぎで
生まれているものなんて
ひとつもないのだと思った。



本文の中での
ひとつひとつの言葉の選び方

情景の表現の豊かさと
自分の想いを伝える言葉の違い

子どもの頃の場面や
その当時の感じ方、心境

本当に知らないことや
理解出来ないことが
多すぎて

純粋に何もかもわからず
ひたすらもがく姿

『知らない』ことへの怖さ

家庭環境や貧困からの分断
諦めることが当たり前の生活

親や大切な人への想い……

どれも本当の彼の声



『わかる』なんて簡単に
言ってはいけない。


でも、

知って理解する努力をし
何かの形で
寄り添うことはできる。


読み終わった後…

今の自分なら
この本を読んだこと
ここから感じたことを
どう活かせるのか?

真剣に日々を振り返り
考えてみた。

そして

学生一人一人に対して
どうしたらもっと
寄り添えるのか

いや

気持ちは寄り添いながら

本人が自然に
心を解放して過ごすには
どうしたらいいのか

もう一度

たくさんの違う角度から
考え直してみようと思った。

今よりさらに
彼ら、彼女らが
生きやすく
笑顔が増えるようにと。



この本の執筆が本格的に
始まる前…

著者が地元について
楽しそうに
話す印象はあまりなかったし
地元の話自体そんなに
語ることはなかった。

発信するものも
地元時代の思い出に関わるものは
どことなく寂しげな雰囲気が
多かったが

執筆が進むにつれ

実際に帰省して
昔の自分や
過去と向き合う作業をするなかで

自分の記憶違いで
実は周りから
大切に想われていたことなどを知り

内側にしまいこんでいた
過去の想いが少しずつ整理され
浄化しはじめたのか

発信することの
空気感や雰囲気が
大きく変わっていった。

(あくまでも個人の感想です)


過去の経験は
とても壮絶だけれど

彼にはもう
前のような陰がない。
なんとなく寂しげな孤独の陰。


P127(抜粋)

『泣き虫な俺は、
   泣いても泣いても一人。
   この空の下、たった一人だった。』



もう一人じゃない。


生きることから逃げられない
誰からも求められていない
期待されるのが怖い
世界は隔たれている……


すべて経験した著者だからこそ
理解できることがあり

わかるからこそあえて
叩かれても発信する。
自分の過去をさらけ出して。

今は今で
また違うものをいろいろと
抱えているのかもしれないけれど

この本を書き上げたことで
著者自身だけでなく
救われる想いを持つ人が
たくさんいるような気がした。


人を騙すより騙される人に。

人を笑顔にして、幸せにして
俺も一緒に笑うんだ。


人の事を絶対に悪く言わず
生き方考え方を否定せず

どんな人と対峙しても
その人に寄り添う思考を持ち
背景まで踏まえて
理解する努力をする著者。

あまりのやさしさに
『何故そこまで….?』

と、時々疑問に思ったり
心配になってしまう部分の
答えが本の中にあった。

読んだ人は賛否両論
それぞれが自分の価値観で
感想を持つかもしれないけれど


私にとっては
心に深く刺さる
大切な一冊になった。



[芸能人が書いた本]という
フィルターではなく
先入観を持たずに読んでほしい。

学生達にも
薦めていこうと思う。

この本を読んだ学生が
どんなふうに感じるか聴きたい。


まさに自分の人生を
『むき出し』にした渾身の一冊

ここに込められた想いが
一人でも多くの人に
届きますように。

そして

いろんな人を
同じ階層に連れ出すきっかけに
なりますように。


『人生は変えられる。』


著者の経験と真実に
基づいたこの言葉が

今、厳しい環境にいる

子どもたち
学生、若者…

いや、すべての年代を通して
一人でも多くの人に届き

ほんの少しでも

希望を見出だし笑顔になる
きっかけになるよう

心から願っています。


……………………………………………………………………


兼近さん
長年の夢が叶って
本当におめでとうございます。

今のEXITはもう
『日々の辛いことの出口』
だけではなく
『出口の先にある希望』です。

兼近さんの想いや言葉

しっかり心に届きました。

これからもずっと
応援させていただきます。

いつかこの感想文が
ご本人に届きますように。





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