“I am inevitable”という台詞に込められた本当の意味〜アベンジャーズ エンドゲームの考察やチャップリンについてなど〜

最近業務で投稿が滞ってしまいすみません。

息抜きも兼ねて、今回は数年前に趣味で執筆した映画「アベンジャーズ  エンドゲーム」に関する考察めいた文章を供養したいと思います。


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長年MCUを支えてきたアイアンマン役のロバート・ダウニー・jrとキャプテン・アメリカ役のクリス・エヴァンスの降板が決定していた中,観客はどのようにアベンジャーズ ・シリーズを(一旦)締めくくるのか,非常に高い関心を持っていたと思います。特に,前作の衝撃的なラストーーこれに関しては,公開前にタイトルを「インフィニティ・ウォーPART1」ではなく,単に「インフィニティ・ウォー」としたディズニー=マーベル社の作戦勝ちといえましょうーーから,「わずか」3時間で物語を完結させるというのは容易ではなかったはずです。

私が今回焦点を当てたいのは,ラスボス,サノスの以下のセリフについてです。
“I am inevitable.”

今作ではこのセリフが開始直後とクライマックスで非常に印象的に使用されます。ちなみに劇場版の訳はこうなっていました。
「私は絶対だ。」

うーん。。。この訳,翻訳の方が苦心したであろうことは想像に難くないものの、個人的には、背景知識の不足から本作の持つ意味を致命的に損なってしまった可能性もあるように思われるのです。
まず,”inevitable”という語は,本来は「避けられない」,「不可避」といった意味合いが強い言葉です。しかし,「避けられない」はやや冗長である(もしかしたら,字幕の字数制限に入らなかったのかもしれません。)上,ここだけ見ると意味が分かりにくい。一方で,「不可避」は不幸にも我が国においてネットスラングとして定着してしまっており,この言葉を当てた場合に、この超重要シーンがネタ化してしまうことは容易に想像できます。訳者の方も、苦心した結果、サノスのイメージを重視して「絶対」を当てたのかもしれません。

さて、このサノス(THANOS)は,世界の生命(の半分)を絶つことを目標にしています。そして彼の名前は,ギリシャ神話の死の神・タナトス(THANATOS)に由来すると言われています。原作ではデス(DEATH)、つまり「死」というキャラクターに恋をする。そのサノスが“I am inevitable.”というのですから,その含意は,「私は絶対だ。」とは少し異なるわけです。そう,

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