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Libya Updates #35: December 2020 Week 1


こんにちは🕊
今週もリビアをめぐる動きを整理します。

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■リビアのこれまで
40年以上続いたカダフィによる独裁体制が2011年に崩壊。新たな政府樹立を巡り、衝突が続いてきた。
現在は首都トリポリを拠点とし、国連の仲介で2016年に樹立した国民合意政府 (GNA)と、東部の都市トブルクを拠点とする政府 (HoR) が分裂している構図だ。
HoRが支持するハフタル将軍率いる勢力が2019年4月、トリポリへの侵攻を開始した。GNA側の民兵組織らが応戦し、武力衝突に発展。GNAにはトルコ、ハフタル勢力にはUAEやロシアなどがつき軍事支援などを行ってきた。
6月はじめにGNA勢力がトリポリを奪還し、ハフタル勢力は同地域より撤退。停戦へ向けた協議が進む一方、現地での戦闘を繰り返してきた。

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1. 国内の動き

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モロッコのタンジェでは11月28日から29日にかけて、GNAとHoR側の議員らが4回目の交渉を行った。両者はリビア南西部のガダメスで今後、議会の活動を行うことで合意したという。

両勢力は9月以降、毎月1回、数日間の交渉をモロッコで続けてきた。


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ただ、国内の情勢は平和とは程遠い状態だ。
北西部の町アルアジャイラトでは2日、学校の近くで襲撃事件が発生。学校に通う16歳のムサブ・ジュマ・ダウワ・ビンマスードさんが死亡し、その他2人が負傷した。

死傷した3人は制服を着ており、明らかに生徒と分かる格好をしていたという。

UNSMILはこれを受けて声明を発表。当局に対してただちに公正な捜査を行い、犯人を罪に問うよう求めた。


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首都トリポリでは多くの地雷が残っていることも問題だ。
ハフタル勢力が6月に撤退した際に設置していったと見られており、現在、GNA軍やトリポリの市民が協力して撤去にあたっている。

その1人である軍のナジ・アルガラブリ大佐が中東情勢を扱うメディアMiddle East Eyeの取材に応じた。
「私たちは十分な機材を持っていないが、やることはたくさんある」
「ただ、何があっても続けなければいけない」

トリポリ周辺では5月以降、少なくとも70人が地雷により命を落とし、125人が負傷している。中には子どもも含まれるという。

地雷のほか、小型の爆弾が思わぬ形で設置されていることも注意が必要だ。
GNAが発見したり被害が報告されているものの中には、くまのぬいぐるみやたばこの箱に爆弾がつなげられ、手に取ると爆発するようになっているものがあったという。
家の植物や階段の手すりの周りにワイヤーが取り付けられ、引っかかると先についている手榴弾が爆発する装置も見つかっている。

2019年4月に始まった軍事侵攻により、今も15から20万人がトリポリから避難している状態だ。だが、残された武器が人びとの帰還を阻んでいる。


国際NGO、ヒューマン・ライツ・ウォッチで武器の調査などを担当しているマーク・ヒズネーさんよると、GNAとハフタル両勢力が使用している武器の多くはカダフィ時代のものだ。
ただ、ハフタル勢力がトリポリに残した地雷はロシアの民間軍事会社 (PMC)、ワグナー・グループによるものではないかと見られているという。

記事では、リビアで多く見つかっている地雷をいくつか紹介しています。


2. 国際社会の動き

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トルコの検察は27日、リビアの武器禁輸を徹底するためEUが行なっている「イリニ作戦 (Operation Irini)」の一環で、ドイツ軍の部隊が地中海東部を航行していた同国の貨物船を22日に調査したことについて、捜査を開始したことを発表した。
同国は船が人道的支援のための物資を運んでいたとしており、武器禁輸措置を破ったとのEUの疑いを否定。調査が許可なく行われたことが「国際的な規定に反する」と主張している。

「イリニ作戦」はEUが今年4月に開始したもの。9月にはリビア北東部のデルナから150kmの国際水域を通行中していたUAEの商船を、国連によるリビアに対する武器禁輸措置に違反していた可能性があるとして拿捕している。


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米国はアラブ首長国連邦 (UAE) がロシアのPMC、ワグナー・グループに対する支援を行っているほか、人権侵害や国連の武器禁輸措置違反を行っているとして批判した。
UAEは米国の同盟国で、名指しで批判することは珍しい。

米国アフリカ軍 (AFRICOM) の発行したレポートによると、今年9月30日までにワグナー・グループの傭兵2,000人がリビアで戦闘に参加していたという。同社は2,000人のシリア人傭兵も同国へ送っていたとしている。

ロシアとUAEは武器提供などを通してハフタル勢力を支援してきたとされている。

米国は先月25日、リビアのタルフーナを拠点とし、ハフタル勢力を支援する民兵組織「カニヤート」が市民の殺害に関与したとして、独自に制裁を課すことを決定している。


3. 新型コロナウイルス

感染拡大が続く

リビアでは3日 (現地時間) 時点で、累計84,087人の感染者が確認されいている。1週間の新規感染者数は4,290人。日に平均約600人以上の新規感染者が確認されている計算。累計死者数は1,200人で、1週間で75人の増加。


リビアでは5月頃まで、感染者数は数十人規模で推移してきた。爆発的な感染拡大が始まったのは6月で、新規感染者数は増加の一途を辿っている。

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リビアの人口は689万人ほど。
情勢不安の続いてきた同国では、パンデミック以前より医療保険制度がきちんと整備されていない状態。感染者に対応するための病床や医療器具なども不十分だ。
4月から5月には医療従事者や医療施設への攻撃も多発。6月以降は市民が地雷の爆発に巻き込まれる事態が相次いだ。


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