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7日間ブックカバーチャレンジを通して、自分が大事にしてきたことを考えてみた


こんにちは🕊

世界的に「おうち時間」が続くなか、SNSで「〜チャレンジ」と呼ばれるものを多く見かけるようになりました。
誰かから指名を受けて、お題に合わせた投稿をし、さらに他の人を指名してバトンをつなげていく、というものです。
幼少期の写真やスマートフォンのロック画面を載せるなど、お題は多様。


今回取り上げるのは、その一つである7日間ブックカバーチャレンジ
内容は以下の通りです。

「7日間ブックカバーチャレンジ」
これは「読書文化の普及に貢献するためのチャレンジ」です。
参加方法は好きな本を1日1冊、7日間投稿するというもの。
本についての説明なしに表紙だけの画像をアップし、
毎日1人のFB友達をこのチャレンジに招待します(任意)。
#7days #7bookcovers #BookCoverChallenge


先週、わたしもFacebookでご指名をいただき、1週間やってみました。
この記事では自分が選んだ7冊と、それぞれの本の中でいちばん好きな引用をシェア。最後にこれらを通して改めて見えてきた、わたしが大事にしてきた価値観を簡単にまとめてみます。


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Day 1: 塩原良和; 稲津秀樹編, 2017『社会的分断を越境する 他者と出会いなおす想像力』青弓社.

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想像力は常に勘違いを含み、不完全であり続けるが、それでもなお他者に耳を傾け応答するという意味での対話 [中略] を続けていくことで、適切な他者の承認に近づこうと努力する責任が私たちにはある。ただし前述のように、想像力をはたらかせるために必要な専門知・経験知・身体知は社会構造によって不均等に配分されている。そのため、他者を適切に想像/承認することは個人に課せられた責任であると同時に、想像力の源泉となる知識を得る機会の公平な配分の実現を含む、社会全体の責任でもある (pp. 44-45)


Day 2: ルビー・ワックス著; 上原祐美子訳, 2018,『心がヘトヘトなあなたのためのオックスフォード式マインドフルネス』双葉社.

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人間は、数千マイルを飛んだり泳いだりする必要もないというのに、隣を行く人に負けたくないという理由で走り続け、疲労して脱落していくのです。競争することが、すなわち人間の証明というわけではないはずなのに。[中略] 人間なら、足をとめ、自分の弱さを見せることだってできるはず。そして人の弱さを見たとときは、思いやりと共感 (人間に備わっている資質の中でも、あまり使われていない機能です) を感じることができるはず。それが強欲とナルシシズムに冒された世界にさよならする方法なのです  (p. 27)


Day 3: Mouffe, Chantal. On the Political. Oxford: Routledge, 2005.

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What is happening is that nowadays the political is played out in the moral register. In other words, it still consists in a we/they discrimination, but the we/they, instead of being defined with political categories, is now established in moral terms. In place of a struggle between 'right and left' we are faced with a struggle between 'right and wrong'. (p. 5)


Day 4: Kemio, 2019, 『ウチら棺桶まで永遠のランウェイ』KADOKAWA.

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変わってるって笑われるなら、ベーシックでお疲れって笑ってやるのウチら(pp. 186-187)


Day 5: 宮地尚子, 2018,『環状島=トラウマの地政学』みすず書房.

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「代弁者が当事者の声を奪ってしまう」のは時に事実だが、そのために支援者や代弁者が簡単に萎縮し口をつぐんでしまったり、その場を立ち去って、結局傍観者になってしまうとしたら、それもまた別の形で当事者が声を発する機会を奪ってしまうことにつながりかねない (pp. 16)


Day 6: ハンナ・アレント著; ジェローム・コーン編; 中山元訳, 2003=2016, 『責任と判断』ちくま学芸文庫.

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戦後のドイツにおいて、ヒトラー体制がユダヤ人に行ったことに関して、同じような問題が発生しました。「わたしたちの誰にも罪がある」という叫びは、初めはとても高貴な姿勢にみえて、誘惑的なものでした。しかしこの叫びは実際に罪を負っていた人々の罪を軽くする役割をはたしただけだったのです。わたしたちのすべてに罪があるのだとしたら、誰にも罪はないということになってしまいます (pp. 74-75)


Day 7: アイリス・マリオン・ヤング著; 岡野八代; 池田直子訳, 2011=2014,『正義への責任』岩波書店.画像8

ひとは、つねにいま、現在生じている出来事に関連して、そしてそれらの未来の帰結に関連して、責任がある。わたしたちは、そのような政治的責任を負う状況にあり、そして、責任があるという事実は、政治的責任をとるべきである、という義務を含意している。もし、不正や罪が、自分自身がその一部であるような制度によって犯されるのを見、あるいは、そのような罪が犯されつつあると信じるならば、犯罪に対して声を上げる、そして、よりよい結果を引き出すような制度改革に向けてともに行為する責任がある (pp. 136-137)


改めて見えてきた、大事しにしている価値観

今回選んだ7冊は、いずれもわたし自身の価値観を形作ってきたものばかり。これらから見えてくる、自分が大事にしている価値観を考えてみました。
キーワードは、責任ポジショナリティです。

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7冊のうち2冊のタイトルに出てくる「責任 (responsibility)」という言葉。
おそらく、リビアで2011年の革命を経験しかけたことを通して、考え始めるようになったのだと思います。

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リビアの首都トリポリ、2010年。

わたしは当たり前に政治や社会、生活ついての自分の意見を言うことができ、それらは少なからず政治の場に反映される。

他方、リビアに生まれたというだけで、限られた自由しか持つことができず
そのために血を流して戦わないといけない人たちがいる。

生まれる場所は選べないのに。
わたしが2011年、強く感じたことです。

では、わたしのような社会を変え得る力を (少なくともリビアの人びとよりは) 持っている人びとは、あるいは権力を持っている人たちは、命をかけて声をあげている人たちに、どれだけ寄り添うことができているでしょうか。

リビアでは独裁体制は崩壊しましたが、現在も暴力が国を支配している状況が続いています。
同じように2011年、人びとが独裁体制に声を上げたチュニジア、エジプト、シリア、イエメン。程度の差はありますが、多くの人びとが今でも苦しい思いをしています。

これらの国、そこに暮らす人びとを見て、感じたことがあります。
こうした状況の一端には、いま起きている不正義を是正し得る力を持つびと(国際社会)が自分の持つ責任を放棄し、沈黙し続けてきたこと、そして構造的に弱い立場に置かれてきた人たちに寄り添おうとしなかったことがあるのではないか、ということです。

具体例としては、こちらを読んでいただければと思います。


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この話は、ポジショナリティという言葉にもつながってきます。
ポジショナリティとは簡単に言うと、行動をしている、発言をしている「あなた」は誰ですか、ということ。立場性、とでも言えるでしょうか。


特に中東北アフリカの人びとと関わるなかで、「わたし」や「わたし」のいる社会が沈黙している、と感じる瞬間にたくさん出会ってきました。

現状を是正する力を持っているということは、それを行使して不正義を正す責任を伴うものだと思います。
ですがいまの世界では、多くの場面で「力を持つ人」がその恩恵だけを受け、責任を果たさないことが許されています。
不正義に積極的にであれ、消極的にであれ、加担することが不問に付される世界です。

パレスチナの味方になってほしいわけではない。正義を擁護してほしいんだ
パレスチナで出会った人は、そう言っていました。
それは「おかしいことに声を上げる」という当然のことをしてほしい、という「わたし」への訴えでした。

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パレスチナ自治区のヘブロンにて、2019年。


責任を果たすべき人がきちんと責任を果たす世界は、どうしたら実現されるのか

わたしが大事にしてきた考えであり、人生をかけて考えていきたい問いです。


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自分自身の関心が中東北アフリカに向いていることから、特に最後の部分はどれだけうまくお伝えすることができているか分かりません。
ですが自分の考えを整理する過程で、読んでくださった方が何かしらの「きっかけ」を受け取ってくださっていれば、嬉しい限りです。


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Also read:

弱者ではなく、強者が生きていられる限り、システムは変える必要がない。そんな世界にいま、わたしたちは生きているのではないか。

新型コロナを受けた日本や世界の動きを見て、考えたことを書いてみました。地球環境やサステナビリティについても触れています。
毎週金曜日、リビア情勢を日本語で整理しています。

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