ショートショート 束の間1

育休をとったのも束の間、
なんの迷いもなく育児放棄をした僕は、
今現在、
仲間達と楽しく脱出ゲームをして遊んでいる。楽しすぎて、
「ギャハハ」
って感じだ。

はっきり言って
乳幼児のことなんかどうでもいい。
大切なのは、僕が楽しいか楽しくないかだ。
つまり、育児は楽しくない。
面倒臭い。
だから僕は、育児を放棄する。

ただ、それにより死なれても困るから、
あの乳幼児は山の奥に住む仙人にあげてきた。
ついでに賞味期限の切れたプリンも仙人にあげてきた。

なので、今の僕は自由の身だ。
気になる乳幼児を産んだ母親はと言うと、
乳幼児を産んですぐ、
どっかの誰かと駆け落ちしちゃったから、
その所在は分からない。

駆け落ちを知った時は悲しかったけど、
その傍らでは、あの乳幼児がオギャーオギャーと泣き叫んでいたから、
その時の僕は、
「落ち込んでいる暇はない!」
って強く思ったんだ。
「この乳幼児を守らなきゃ!」
ってね。

でも、一日でその思いはなくなった。
いや、半日だったかも知れない。
とにかくしんどくなった。
「これはさっさと投げ出そう!」
ってなった。

その結果、
今の笑顔溢れる僕がある。
良い選択をしたということだ。
やっぱり、
人生ってのは楽しくないといけない。
それを阻害するものがあるのなら排除するのは仕方のないことだと思う。

だから、
これからも僕は、
自分第一に生きていく。


魚を釣ったのも束の間、
それを海へと蹴り返していくスタイルの僕は、
一時間以上かけて釣った大物でも、
記念写真を撮ることなく、
思いっきり海へと蹴り返していく。

さっき釣り上げた大物は、
まずその大物にキスをして、
PK戦のような雰囲気で海へと蹴り返した。
個人的には良い蹴りができたと思う。
それにより、良い気持ちになったから、
天に向かって投げキッスをしたよ。

と言っている間に、魚が釣れた。
サイズは小さい。
じゃあこいつは、
天高く蹴り上げて海へと返してやろう。

そういう訳で、
僕は釣った魚を軽く上へと放り、
落ちてきたところを天高く蹴り上げていく。
うん、これは会心の蹴りができた。
良い気分だ。

なんて気分を良くしていたら、
近くで釣りをしていた人に
「コラーッ!」
と怒られて、顔面にタコを投げつけられた。
しかも三匹投げつけられた。

最悪なことに一匹は
僕の顔に張りついたままでいる。
なので僕は、なんとかそいつを引き剥がし、
そのタコを地面に叩きつけた。

そして素早く、
そのタコと他二匹を海へと蹴り返していく。
更にその流れで、
タコを投げつけてきた釣り人も海に蹴り落としていく。

ったく、ふざけんじゃねぇ!
うざい正義感は海に落ちとけよバーカ!
もう僕は帰る!
プリンでも買って帰る!



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