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未来の食料生産戦略としての微生物食品

KAIST(韓国科学技術院)の研究チームは、急激な人口増加と気候変動による世界的な食料危機に対処するために「微生物食品」研究の方向性を示唆する論文を発表した。

微生物食品とは、微生物を利用して生産されるさまざまな食品や食材のことを指す。微生物バイオマスは、乾燥重量当たりのタンパク質含有量が肉に匹敵し、二酸化炭素の排出量が最小だが、生産のための水もスペースも少なくて済むため、環境に優しく持続可能で栄養価の高い食料資源となることが期待されている。

発酵食品は、我々周りで最も簡単に入手できる微生物食品である。発酵食品に含まれる微生物量の割合は少ないものの、発酵過程で炭水化物などの比較的栄養価の低い化合物が消費され、微生物が増殖することでタンパク質やビタミンなどの栄養価の高い栄養素の含有量が増加する。

微生物培養によって得られるバイオマスまたは培地から分離および精製されたさまざまな食品化合物も微生物食品の一種である。我々の周りで見つけることができる例には、グルタミン酸ナトリウムを含むさまざまなアミノ酸、食品タンパク質、酵素、香料化合物、食品着色料、生理活性物質などがある。

最後に、微生物食品の最も究極かつ基本的な形態として、微生物培養により生成される微生物バイオマスまたは抽出物、およびそれを用いて調理された食品が挙げられる。代表的な例は単細胞タンパク質(微生物バイオマスまたはそこから抽出された微生物タンパク質の総称)である。

本研究において研究者らは、より持続可能な方法で微生物食品を生産するために使用できるさまざまな非食用原料とそれらの使用戦略を包括的に取り上げている。さらに、その原料を用いて実際に産業界で生産されているさまざまな微生物食品とその特徴、持続可能な微生物食品の生産と一般化の展望についても取り上げている。

「未来の微生物食品は、環境への義務感だけで消費される限定食品ではなく、栄養価や味を考慮して自ら選択して消費される完全食品になるでしょう」と研究者はコメントしている。

出典は『Nature Microbiology


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