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第3回 〔聞く〕即売会のように誰でも本を手に取ってもらえる場所に(大阪 豊中『犬と街灯』)

研究室 はださん

ギャラリーと本『犬と街灯』

2019年11月にオープンした、大阪府豊中市にあるアートギャラリーと本の店『犬と街灯』さん。
以前、気になっていたリトルプレスを検索した際に、取り扱いがあると知ってブックマークし、いつか行ってみたいと思っていました。

犬と街灯
大阪府豊中市庄内西町3丁目10-27
https://inumachi.main.jp/

https://inumachi.main.jp/
SHOPカード(外観を撮影し忘れていました……)

早速、リトルプレス好きの友人を誘って、お店にうかがうことにしました。阪急宝塚線の庄内駅を降り、駅前の商店街を抜けて、三角瓦屋根の木造2階建てアパートや、地元の人で賑わう食堂、ぶたのキャラクターが可愛い揚げ物やさんなどを通り過ぎて、約10分程で到着しました。

書棚には、詩集、歌集、句集やエッセイ、画集など、リトルプレスならではの大きさや装丁もさまざまな本が並んでいました。

入口すぐのギャラリースペースでは、ちょうど『Google Street Viewですれちがった人たち』展が開催され、作者の菊竹ももえさんも在廊されていました。
https://inumachi.main.jp/event/

カラーの装画が貼り込まれていて少しめくれる!

▶君と暮らせば
17名が綴る、ちいさな生き物との暮らしにまつわるちいさなエッセイ。
B6変型/96ページ/本文モノクロ・カラー装画貼り込み
東京・西荻窪のギャラリー もりのこと 発行
本文はモノクロ印刷で、カラーの装画(6点)のみ冊子本体とは別に印刷され、関係者の方が一枚ずつ手で貼られたという、めずらしい装丁。
少しめくれた装画を撫でると、ちいさいものを愛でる感覚と重なります。



「昔の図鑑のような装丁で、素敵ですよね。」

『犬と街灯』の店主 谷脇さんは、自身の著作や依頼を受けた本の編集・デザインも担当されていて、本づくりや装丁についてのお話をうかがうことができました。

谷脇さんは、大学院を卒業後、京都の印刷会社や出版社での勤務を経て、独立後にお店をオープンされました。
もともと絵を描くことが好きで、その興味が「本をつくること」につながったのだそうです。
大学院在学中には仲間と「サンカクカンケイ」というサークルを立ち上げ、文学フリマに出展したことなどがきっかけで、インディーズで作られた本の魅力にはまっていったとお話されていました。

店主 谷脇さんの著作でデザインも手掛ける

▶ペテロと犬たち
文庫判/180ページ
『未確認電波帯』発行
谷脇さんが2018年から書き溜めた1000〜4000字程度の短いお話集。


「詩や短歌の本は、こだわりのある装丁が多くて、おもしろいんです」

谷脇さんはそう話しながら、大阪の歌人 牛 隆佑さんの私家版歌集表を手に
「ここにある歌集は、牛さんが全てセレクトして集めたもので、こんな風に棚をつくっているのは、他にはあまりないかもしれません。」
と話されていました。
5cmほどの厚みのコデックス装丁◆や、透明なフィルムに印刷された表紙、水引を帯として巻いた本など、確かに個性的なものが多い。
「みなさんどうやって装丁を考えているんだろう……。」

個人で本をつくる人・作りたい人たちのための『zineお茶会』

お店では、以前『zineお茶会』というイベントを開催されていました。
作り手の方や本づくりに興味がある方などが8名ほど集まり、交流をされたそうです。
「そこでは、どこの業者さんでつくるのがいいですか?など具体的な相談もありましたよ。最近は開催ができていないので、今後もこういった機会をつくれたらいいですね。」
「そうか、みなさんこういったイベントで情報交換をされているんですね。」

本をきっかけに自然と人が集まる場所

お昼過ぎにお店にうかがい、友人と本を選んだり、展示を眺めたりして、ゆっくりと過ごしました。
その間も近所の方が「見に来ました~」と入って来られて「あ、でも今お財布持ってないんやけど!」と話していたり、
「視線を感じる?!」と思ったら、海外からの旅行者の方がぺったりガラスにくっついて、中をのぞいていたり(びっくりした……)。
在廊されていた菊竹さんも「Zineをきっかけに、ギャラリーで展示することが決まったんです。」とお話されていたように『犬と街灯』さんは、本をきっかけに自然に人が集まるとても心地いい場所でした。


▶用語集

◆コデックス装丁
折丁(刷り本を折った製本上の1単位)を糸で綴じ、本の背を糊で固める製本方法です。背の部分の糸綴じがそのまま見えるのが特徴で、背表紙がないため本が良く開きます。

▶小さな出版と本の研究室は、本や冊子づくりをサポートします

この研究室は大阪市内の印刷会社で働く二人が中心となり運営しています。「こんな製本できますか?」「この色と組み合わせる紙は何がいいですか?」など、少しこだわりのある本や冊子づくりを考えている方のサポート(時には一緒に考えます)をいたします。
小さな出版・本づくりについてのご相談や、印刷・製本・用紙のご質問などは【小さな出版と本の研究室】はだ 宛にメールをお送りください。
contact@littlepress-lab.jp


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