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小説 夢の先の人生

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夢だと思っていたことが、他人の人生を共有することだった。それに気付いた少年は稀有な世界に引き込まれていく・・・ すべて、無料でご覧頂けます。よろしければ、どうぞ!
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夢の先の人生 第1話

 小さい時は、誰でも夢を見ると思っていた。  ボクは田舎に住んでいる。ここらへんの田舎にしては、小さな家に住んでいる。両親はいない。ボクが中学3年の時に、二人とも亡くなった。峠の道を軽トラで走っていて崖から落ちたらしい。ボクが実際に見たわけじゃないから、詳しくは知らない。  ボクの兄弟はいない。つまり、ボクは中学卒業間近から、ひとりぼっちになってしまったから、ひとりでこの小さな家で暮らしている。親戚もいないから、ボクを引き取ってくれる人もいなかったので、ひとりで生きている

夢の先の人生 第2話

 ボクは彼女のからだを動かせることも知っているけど、それもやっぱり話した方がいいかな? (あの。) (なによ。) (ボクがあなたの意識に同居しているんで、ボクがあなたのからだも動かせます。) (え~っ、本当に?) (はい、でも、それは緊急でない限りしないつもりです。) (当たり前じゃない。やめてよ。) (だけど、思っていることがあなたに筒抜けじゃないの?) (そういうことになりますね。) (ひど~い、なんで私だけがこんな目になるのよ?) (諦めて、現実を直視して下さい。)

夢の先の人生 第3話

 ボクはずっと気になっていることがあった。自分のからだの所在だ。本当にどうなったのだろうか。なんで、戻れないのか。薄々、もうだめなんだろうとは思っていたが、ちゃんと確認したかった。  ネットで事件を調べてみたが、未だそんな事件はない。だけど、ボクがいなくなったら近所の人が、おかしいと思うだろうに、どうなっているんだろうか。ここからなら日帰りできる距離なので、行ってみることにした。ボクは自分が住んでいた家に着いた。そしたら、そこにボクがいたのだ。遠くから見ていたが、確かにボク

夢の先の人生 第4話

 なんやかんやで男の応募もあった。それからはすぐに予定の8名に達した。男女で適当に競い合ってくれるから、技術の伸びも早いもんだ。どんなに人が増えても、週1の飲み会は欠かせない。会社としては、こんくらいの福利厚生費は問題ないだろうと思うのだ。 「貴志の会社、結構頑張ってるらしいやないの。」 「まだまだ、そんなことないよ。」 「売上は上がってるんでしょ?」 「まあ、そこそこね。」 「だったら、社長の報酬も多くていいんじゃない?」 「いや、みんなと同じでいいんだ。だって、みんなの

夢の先の人生 第5話(終)

「ただいま。」 「ただいま、帰りました。」 「お帰り。」 「やっとね。」 はいはい、そういうことです。  ただ、ボクは気になっていることがあった。背中の入れ墨だ。これを見て、どう思うんだろう。これについては、なかなか言い出せなかった。 「貴志、入れ墨の話はしたの?」 姉さんも、ボクの様子からそれに気が付いて聞いてきた。 「まだ。」 「ちゃんと、話しておきなさいよ。」 「うん。」  入れ墨イコールヤクザとか、不良とかのイメージが強すぎて、これを彼女に言うのに、気が引けて仕方