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ひと言だけ

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雑記帳およびみじかい小説など
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やぎ

やぎ

やぎは今日はもういない
明るい夕方
午後6時45分
さてわたしは人間で
春は心がうるさい
あんたは誰なんだ

2024の生き方きめた

2024の生き方きめた

仕事を辞めて10日経った。
毎月通っている鍼灸院に、退職して初めて行ってきた。鍼灸院は、生きるよすがであった。そうでなければアル中で過食嘔吐して自分をマヒさせながら通勤していたであろう(=25歳の私)。

前の職場は、底なし沼のような場所であった。3ヶ月は仕事が崩壊しないように戦い、3ヶ月は自分が崩壊しないように戦い、辞めると決めたあとの3ヶ月は与えられたタスクを乗り越えるべく戦った。
最後のひと

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夢の記録

夢の記録

えっちゃんと久々に会って、えっちゃんのものを取り扱ってるごはんやさんに食べに行く夢を見た。
帰りに、レジのところに並べてあるたまごパックをみて、これもう名前かわっとるがねーちょっと餌も変えたけんねー、米袋みて、これももうパッケージ変わっとるけん新しいのまた送らんとねー。何が変わったん?たまごはもう、あんまりやらんと米だけにしようとおもて。もう年だけんあれこれやれんくて。
そうかー残念やなー。
とえ

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朝9時40分

朝9時40分

愛想ないコンビニの店員鈴木さんが、やたら話かけてくる日は、恋愛でもうまくいっているのだろうか。
こんなにムラのある人雇うのやめとけよと思うが、ここは店長の入れ替わりが激しくたぶんろくな職場じゃなさそうだ。アルバイトの人も選べないんだろうな。
大学に行く前に朝ごはんを買い、わたしを焦がさんばかりに陽あぶりにする世界を歩く。緑がまぶしい。道が白い。
おにぎりを食べながらにやけてくる。
「あ赤飯ないんで

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わたしはわたし

わたしはわたし

髪が伸びすぎてる。オタクみたいだ。それでもいい気がしてきたから、いよいよオタクになれそうな夏の始まり。

刺身を食べかけたまま、箸を皿に置いて立ち上がり、開いた障子から陽の光のなかへ、かよこは出かける。

半分余ったそうめんが見える。溶けた氷が浮いたガラス器の水面に、明かりのない和室の天井が映る。

まぶしさに顔をしかめて、かよこはギラギラと迫るような道を青空背負ってまっすぐ進む。

髪が首にから

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雪は均一に降る

雪は均一に降る

着こんで着こんで、ロボットみたいに歩く私は街灯の明かりのなかで雪のカーテンの内部に幾重もくるまれて、息をすると口の中に冷たい氷の粒が入ってきて、瞬く間に消える。

見上げると目の中にも雪が降る。すぐに目をつぶってしまう。

去年の春に桜の下でこうやって空を仰ぎ、散歩した親友。

まる裸になった木立を、枯れ葉をさくさく音を立てて踏みながらたくさんのことを話した隣人の大学生。京都の日々。

白く、出来

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桜の枝がとどく窓

桜の枝がとどく窓

言葉に飽きてしまって、幼いころみたいに言葉を遊び道具にして、ろくに伝わらなくても伝わりすぎないのがちょうど良いんじゃないのかと。

思いついたある昼から、わたしはコミュニケーション上手をあきらめた。

まず気になってたかっこいい後輩の25歳早瀬くんにがんばって話かけたり盛り上げたりするのを手放した。常温の関係。

上司に笑顔をばらまくのをやめた。言葉を紡ぐ…事実を表すより伝わりやすいように…これも

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天気雨とシュークリーム

天気雨とシュークリーム

ダイエット中といって予防線張ったのに、おかまいなしに、ヤマザキのシュークリームを手渡してくる母親は障害物でしかない、

このあいだ、小雨が降っていて傘がなかったから濡れて歩いていたら友人が働いている喫茶店が見えて、雨宿りしたかったけど、わたしは濡れているから店内には入らない方がいいなと思った。中は暖かくひとがたくさんいて、外にひとりで立つわたしがガラスに映る。足元は泥がはねて汚れていた。

気を使

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水平線の漁火

水平線の漁火

喫茶七つ森でココナッツカレーを食べてから、扉をカランカランさせて外に出ると、午後五時半の西日の中に、わたしの腕がチリチリと照らされる。産毛が金色に光る。

日焼け止めしてないから駆け足気味にアーケード街へ入る。

ブックオフの冷えた風につられて、欲しいものがないのに店内をほっつきあるく。サンボマスターの新譜がもう安売りされて四枚も並んでる。料理本も紀行本も小説も何にも興味が持てないのだが、まだエア

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いちごムース、階段、バッファローの群れ

いちごムース、階段、バッファローの群れ

数の子を冷蔵庫の奥に見つけた。驚いたことに賞味期限は切れておらず、捨てるわけにはいかないけれど、六月に食べる気にはなれない。

とりあえず見なかったことにして、手前のガラスカップに盛り付けたいちごムースを3つ取り出した。

低い丸テーブルを囲む友達は顔をあげて、わあーおいしそうと声をあげる。

私はテレビをぼんやり見る。画面のなかのバッファローの群れがハイエナから逃げる。

10分したら自然番組は

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evergreen

evergreen

CDを入れ替える。

流れてきた曲にあわせるように、窓から風が、車の中をかけぬけていった。

助手席でサトコが口ずさむ歌詞を聞いて、わたしはこの曲のタイトルの意味を知り、おもいがけず驚く。

「見送りに出てこなかったなあ」

「今度はあの子連れてあんたに会いにいこうか」

「うーん夏になったら、あたしがまた来る」

サトコはうすく笑って続きを歌う。

わたしはほんとうに来るだろうか。

あなたが大

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夜中に窓をたたくのは

夜中に窓をたたくのは

恋愛小説を書いてる友人が、夜中に窓をそっとたたき、チョコレートケーキを食わせろという。

糖分が足りないのだと。

チョコレートケーキもだが、わたしの意見が必要なんだろう、と思いながら招き入れてやる。

これ読んで。なんか、終わらないんだけど、

長いだけで堂々めぐりやん。

なんで先に進まないのかね。

さぁ…あ、チョコレートケーキ、切らしてるわ。

アドバイスも糖分ももらいそこなったくせに、翌

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ねんりん

ねんりん

38年生き残っている。脳が取捨選択して、ほとんどの瞬間は思い出せないけど。じゃあ思い出せることのなにがそんなに重要かとゆうと、初めてわかった、てゆう感覚だと思う。つまり成長の年輪。人も木もおなじだな。たくさん年輪があれば太くて立派な木になれる。たくさんチャレンジして生きよう。

雨の日

雨の日

違和感をかんじるものがなくなって日記を書かなくなり、大学生活も尽きかけた10月。

アルバイト先のセブンイレブンで、インドネシア人の店長が来週からサーフィンしに地元へ帰るから、一ヶ月シフトを任せるという。

店長はあいかわらず制服を着ないで、派手な青いシャツ姿。せいぜいアルバイトにしか見えない。しなやかな肌の濃い笑顔で、やっと帰れるわと鼻歌を歌う。

一ヶ月したら帰ってくんのほんとに、と突っ込んだ

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