見出し画像

読書メモ:世界少子化考 子供が増えれば幸せなのか?

基本情報

『世界少子化考 子供が増えれば幸せなのか?』
毎日新聞取材班
2022年4月20日発行

韓国、中国、フランス、イスラエル、アメリカ、ハンガリー、フィンランドの各国の少子化対策を取材し、まとめられた一冊。
韓国、中国、アメリカ、フィンランドは、日本同様に出生率が下がっている国々であり、フランスは手厚い支援策で高い出生率を維持し、イスラエルは3.01という高い合計特殊出生率の謎に迫っている。ハンガリーは、オルバンという強権的な政権にも関わらず、GDPの5%を家族支援策に投入しており、その目的等を明らかにしている。
最後に、経済、環境等の観点から「少子化が本当に問題なのか」を考え、個の本の結論を導きだしている。

構成

第1章 韓国 世界最低水準の国で起きている若者の「結婚離れ」
第2章 中国 「一人っ子政策」の宿痾に縛られる少子化大国
第3章 フランス 「少子化対策先進国」に息づく権利獲得の文化
第4章 イスラエル 家族重視の価値観がつくる少子化対策先進国
第5章 米国 技術改革と企業の支援で加速する少子化対策の功罪
第6章 ハンガリー 危機感に突き動かされた本気の施策と不寛容の表裏一体
第7章 フィンランド リベラルな国が苦悩する「個人の自由」と「社会全体の利益」のひずみ
終章 少子化の何が問題か 少子化がもたらす未来のシナリオとその対策とは

感想

「少子化」というと問題だろうとは思っていたが、どこかモヤモヤしたものがあり、また、問題だったとして各国はどのように対策を講じており、効果があった対策があれば知りたいと思い、手に取った一冊である。
基本情報にも記載のとおり各国の状況をまとめた、本書として少子化に対する結論を出しているが、私自身の疑問の解消に至ることはできた。
まず各国とも文化的な事情に違いはあれ、経済成長するとともに女性の社会進出が進み、出生率は低下する傾向がある。

イスラエルは、ユダヤ人が国の7割を占めており、宗教的な背景(子供が多ければ多いほど、その家族はモラルが高いと評価される)もあり、3.01という合計特殊出生率を出している。

少子化対策に成功していると言えるフランスでも一朝一夕にできたわけではなく、ゆっくりと時間をかけて、それこそ国民的合意を形成を図り、手厚い支援策に辿りついている。(フランスでは、家族手当や大家族に有利な税控除、パクス(連帯市民協約)と呼ばれる事実婚制度がある)

ハンガリーも強権的なオルバン政権になり人口政策として、手厚く支援策が講じられ、生涯免税(4人以上産む女性は生涯、所得税免除)等がある。

当然国家単位で考えると、人口=国力という面はあり、人口が減るということは、国力が下がるという側面がある。(本書内では、人口が減っても経済成長は可能との話も出てくるが)

だが、「結婚しない自由」や「産まない自由」もあるのだが、以前政治家が失言したような「女性は産む機械」ではなく、個人であり、それぞれ自由に豊かに生きる人生がある。

手厚い支援策が講じられると「産まないことが悪い」という居心地の悪さ、女性にとって生きづらい社会になってしまう恐れがある。

友人は、比較的二人兄弟が多いが、我が家は、11歳の娘一人だけである。育児にかかる教育費や体力的なこともあったが、妻が年子でなければ一人でよいと話があり、特に私が二人目を希望していたわけではなかったので、一人に落ち着いている。
出産するのは妻であり、妻だけに出産の負担がかかるため、私自身に選択権はないと考えていたからである。

経済的な事情によって結婚したい人、出産したい人がそれぞれできないようなことは国として対策しないといけないと思うが、「出生率」という数字だけに囚われて、考えるのではなく、あくまでも個人の人生の選択肢を増やせる社会を目指していくことが重要だと気づかせてくれた一冊であった。

個人的には、結婚・出産することにインセンティブを働かせるというよりは、保育園や教育等の社会資本の充実を図り、コストを下げる方が結果として結婚しない人・出産しない人も含めて豊かな社会の実現に繋がるのではないかと感じた。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?