『マタギ』─お弁当が気になる【勝手に西村晃映画祭⑧】
前回の『越前竹人形』に続く雪国映画、むしろ雪のなかで闘う西村晃が見られるのだからこっちの方が真っ当に西村晃の雪国映画なのだが、『マタギ』はわたしのなかでお弁当映画に位置づけたい映画だった。
舞台は秋田県阿仁町。平成の大合併を経て、いまは北秋田市に組み込まれた地域である。地図で確認すると、けっこう青森に近い。
地元の協力を得て製作を行い、地元出身の有名人(『釣りバカ三平』の矢口高雄、友川カズキ)が出演するという、いまも連綿と続く「地方映画」のはしりでもある。
秋田を知る人の感想を聞いてみたい。
ただし『マタギ』が映画として面白いかと訊かれたら、「うーん…」っていう感じ。日本の秋田版『老人と海』ともいえる内容で西村晃の好演は光るものの、話の線がプツプツ途切れるような印象を受けた。どういう経緯で大和屋竺と監督の後藤俊夫が共同執筆することになったのか、どういうふうに改稿していったのか、そのあたりが気になるのにDVD特典のリーフレットではノータッチ。
なお、このリーフレットはきれいに作られてて、下村巳六(歴史民俗学者)がマタギについて書いた章と滋野辰彦が感想を寄せた章が興味深かった。興味あるひとはぜひDVDを買って本編を観るついでに読んでみてほしい。
(これは完全に嗜好の問題だけど、概要説明とか撮影こぼれ話の文体に何かを取り繕おうとしてる気配を感じてしまい、ちょっと苦手だった。それ以外はよい)
話を本編の感想へ戻す。
西村晃を筆頭に新劇出身の脇役俳優たちの存在感で格調が保たれているし、現地で撮っていることもあって記録映像としての価値は高いと思う。わたしが特に気になったのは食文化のこと。熊の肝を二日酔い覚ましにつかう伝統的な療法の紹介や、伝蔵が終盤用意する炒り豆(軽く、傷みにくく、炭水化物が含まれているので携行食にぴったり!)、それから田植えのときのお弁当は特に大変興味深かった。
本編のキャプチャができないから、下手で慣れないなりに絵に描いてみる。
右のお重はふきのとうと沢庵、まんなかのお櫃らしきものにはおにぎり(中身が気になる)、じゃあ左のお重の中身はなんなんだろう?
郷土食のメニューの詳細を知りたいな…というときに役立つのが農文協(農山漁村文化協会)の出版物なのだが、元気がないのに図書館へ行くの辛いな…と思って農文協が運営してるTwitter「日本の食生活全集」の投稿を見てたら米代川流域での田植え時期のお弁当が紹介されているのを発見。
この小豆まま(小豆入りご飯)の傍にあるのがわたしの描いた左側のお重によく似てる。多分これ、マタギに出てくる煮しめの内容とだいたい合致してるんじゃないだろうか。キャプションをよく読んでみると、
とのこと。
さやいんげんかと思ったら、ふきだったのね…!ふきばっかりなのが少々気になるものの、突然さやいんげんが出てくるよりは腑に落ちる。
それから「二度いも」というのは「じゃがいも」の方言のひとつ。つまり二毛作できる芋という意味だが、実際には温暖な地域でないとじゃがいもの二期作はできないという。それなのに「二度いも」と呼ぶのはなにか理由があるのだろうか。
ちなみに特典リーフレットには「マタギ定食」の話が書かれててそれも気になるのだが、「おにぎり、味噌汁」と書かれているだけで詳細は不明。そこをもっと教えて!!
以上、映画に出てくるお弁当が気になってしまう人間による、映画『マタギ』を観たあと調べたことの発表でした!もはや感想ですらない。
西村晃はいつでも最高です。
今回はこのあたりで。
ごきげんよう!
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