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ドイツ詩を訳してみる

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2020年1月の記事一覧

ハイネ「ある若者が娘に恋をして…」(ドイツ詩を訳してみる 28)

Heinrich Heine, Ein Jüngling liebt ein Mädchen (1822)

ある若者が娘に恋をして、
娘は別の男を好きになり、
その男はまた別の女に恋をして
二人は夫婦になりました。

娘は腹を立てるあまり
道端でたまたま出くわした
行きずりの男と結婚したので、
若者は参ってしまいましたとさ。

これは昔むかしの物語、
けれど今なお古びない。
そしていざ我が身にふ

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ツェラン「死のフーガ」(ドイツ詩を訳してみる 27)

Paul Celan, Todesfuge (1944)

明け方の黒いミルク 僕らは夕方にそれを飲む
僕らは昼に朝にそれを飲む 僕らは夜にそれを飲む
僕らは飲みに飲む
僕らは空に墓を掘る そこなら狭くない
ひとりの男が家に住む 彼は蛇らと戯れる 彼は書く
彼は日が暮れるとドイツへ手紙を書く 君の金色の髪マルガレーテ
彼はそう書く そして家を出る 星が輝く 彼は彼の犬らを口笛で呼び寄せる
彼は彼の

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ひよこのるる訳詩目録 作曲家・ミュージシャン別索引

noteで70編以上の詩を翻訳する中で、それらに関係のある音楽もたくさん紹介してきました。クラシックの歌曲や合唱曲が多いですが、シャンソンやロックもあります。いろいろな詩を楽しんでいただく一つのきっかけとして、それらを作曲家・ミュージシャン別に並べてみました。

おなじみの人や作品の中に、聞いたこともないような人や作品が交ざっていることでしょう。またすべてが傑作というわけではないでしょう。しかしそ

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リュッケルト「きみはぼくの魂、きみはぼくの心……」(ドイツ詩を訳してみる 26)

Friedrich Rückert, Liebesfrühling (1821) III

きみはぼくの魂、きみはぼくの心、
きみはぼくの歓び、きみはぼくの痛み、
きみはぼくが生きるぼくの世界、
きみはぼくが昇るぼくの空、
ああ きみはぼくが葬り去った
ぼくの悲しみが永遠に眠るぼくの墓!
きみは安らぎ、きみは癒し、
きみは天からぼくへの贈り物。
きみの愛ゆえにぼくはぼくを大切に思える、
きみの眼差

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