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【短編】Unwanted

 なあ、知ってるかい? ここらじゃ有名な話だよ。数年前に、両親を亡くした母親に殺されかけた少年の話さ。そいつは、自分自身が殺されかけたにもかかわらず、毎月、律儀に両親の墓参りをするんだ。綺麗な花を届けてやってるんだと。
 そんで、この間、偶然にも少年の墓参りに居合わせたんだ。その時も、綺麗な花を持って墓参りをしていた。いい息子じゃないかって思ったんだよ。でもな、少し引っ掛かることがあったんだ。そいつは、花を贈った後、こう言ってたんだよ。
 ――ねえ、パパ、ママ。私の名前を呼んでよ。
 そうして、静かに泣いた後、「帰ろうか」って誰かに呼び掛けるようにして言って、帰っていくんだ。
 おかしな話だろ? 確かに、独りで墓参りに来ているはずなのに、まるで、もう一人いるような様子だったんだ。

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