松下能太郎

しょうせつについてのあれやこれやそのたもろもろ

松下能太郎

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最近の記事

平成生まれから見た連合赤軍

 連合赤軍について知ったのは、つい最近のことだ。山本直樹の「レッド」という漫画を読んで知った。一度は読むのを挫折した。二巻の途中でいよいよ話の内容がつかめず、また、登場人物が多すぎて誰が誰だか分からなくなってしまったのだ。  それからしばらく経って、映画「突入せよ!あさま山荘事件」を観た。その映画が警察側の一面的すぎる視点で描かれていることに疑問を抱いた。果たしてこの見方だけでいいのかと。それで再び「レッド」を読んでみた。  二度目の挑戦では、なんとか読み進めることができ

    • 夏が来た

       何の予定もない今日と明日を繰り返す日々だったね、あの夏は。丘の上に建ったレオパレスマンションに住んでいた。西側の坂を下ると中学校があり、少し離れたところに小学校がある。その小学校のグラウンドでは少女と若い女たちが野球をやっていた。「さ、こーい」「さ、こーい」と女たちが掛け声を上げるなか、ピッチャーの少女はなかなかボールを投げない。「あははっ、投げていいんだよ」と笑い声が高い空にひびく。わたしはフェンスの外でそれを眺めていた。しばらくして自転車をこぐ。  教育実習はサンタン

      • 短編小説:ある青年が落札者の評価を「非常に悪い」にした理由

         ぼくはいつも休日は部屋から出ません。誰かと会う約束もないし、やらなければならないこともないからです。うたた寝をして起きたら夕方だった時のあの感覚はなんといえばいいのでしょう。敗北感、というのでしょうか。  今日は休日でした。うたた寝をし、目を覚ますと外はすっかり夕方です。ぼくは何のために生きているのだろう。そんなことをふと思いました。  スマートフォンを開くと、かねてからネットオークションに出品していた商品が落札されていました。  こんなことを言うと大げさに聞こ

        • あれは自由の夏だった

           ぼくには思い出す夏があります。ひとつは小学一年生の頃の夏です。近所の友達と一緒によく遊んでいました。虫捕りやケイドロ、クツ飛ばし、BB弾の撃ち合いなど飽きもせずにやっていました。時には悔しくて泣くこともありました。自分が大人になるなんてまったく想像できなかった頃の夏です。  そしてもうひとつは、大学生の頃の夏です。一人暮らしで友達もおらず、恋人もおらず、アルバイトもしていなかった頃の夏です。  学生の頃は奨学金をもらっていたのでそれで生活できていましたし、学生ということ

        平成生まれから見た連合赤軍

          分かり合えない二人に眩しい日が射す

           「A2」という森達也監督のドキュメンタリー作品を観ました。この作品は地下鉄サリン事件を起こしたオウムという宗教団体にかかわるものです。作中では監督自身が撮影し、信者や地域住民などにインタビューをおこなっています。  見るかぎり、信者のほとんどがいまのぼくと近い年か、それよりも年上の人たちばかりです。それなのになぜだか彼らが中学生のように見えました。オウムの施設は、まるで先生のいない教室みたいでした。  キティちゃんが好きな女性の信者がクスクスと笑います。すぐそばの窓

          分かり合えない二人に眩しい日が射す

          父と遊戯王

           昨夜は眠れなかったのでYouTubeで「遊戯王」の対戦動画を見ていた。二人の男性がテンションを上げながらやっている姿を見て、面白さと懐かしさが一度にやってきた。昔の自分を思い出した。  小学生のころ、近所の友だちと集まって、ろくにルールも知らず遊戯王カードで遊んでいた。モンスターの攻撃力の数値を勝手に「400000000」などとマジックペンで書き込んではみんなで笑っていた。今では数万円の価値があるカードもボロボロになるまで使っていた。  父が本屋の店長だったころ、そ

          父と遊戯王

          この先、いいように転べばいいんだがなあ~

           小学生の女の子たちが家の前にたむろしてしゃべっている。「あのね」「~したらね」「~やってね」とぜんぶの語尾に「ね」がついている。ぼくが子供だったころもあんなふうな話し方だったのだろうか。  中学校の校舎から生徒らの合唱の声が聞こえる。校内音楽発表会か何かに向けての練習なのだろう。「練習いやだったなあ」と自分の中学時代のころを思い返すまえに、その合唱の声に心を奪われてしまった。すげぇ良いと思った。中には「だりぃ」と思いながら歌っている生徒もいるだろう。仲の悪い生徒同士が隣

          この先、いいように転べばいいんだがなあ~

          稲のかおり 夏のおわり

           9月は夕焼けがきれいでした。久しぶりに見たような気がしました。ふいに友部正人の「一本道」を思い出しました。死んだらぼくを星にじゃなくて夕焼けの一部にさせてくれないかなあ。って誰に頼めばいいのかな。  スマホが出てきたことでそれまでのケータイが「ガラケー」と呼ばれるようになったの、未だに感慨深い気持ちになります。いとこが結婚して苗字が変わるみたいな、その結婚式で昔の写真が映し出されるみたいな、一歩前に踏み出したことでついさっきまでの事が懐かしく感じられるような、そんな気持ち

          稲のかおり 夏のおわり