横山黒鍵。

詩を書いていたりする。かもしれない。

横山黒鍵。

詩を書いていたりする。かもしれない。

最近の記事

さくら (いぶきⅵ

明後日の方向に走り始めました ちいさな目です。沢山の光の中で、 芽吹くのですか たくさんの、 たくさんの光の粒子が わらっています 新しくおろした靴で とんとんと アンティークの回転木馬に腰掛け てをつなぎます そのてはとてもちいさくて とてもあたたかくて 天気が良いから おそとでお茶を淹れましょう 欠けた中国茶碗の 表面に浮かび上がるはっぱを吹いて チョコレートよりもあまい 空気を胸いっぱいにすいこんで 咲きますか、まあだだよ、さきますか ずっとそこにいて下さい すぎてい

    • 【限定公開】重年〜詩の礫に寄せて〜

      ※2021年3月11日 詩の礫に寄せて書いた作品です。 重年    横山黒鍵 言葉などふようで、養って、美しく育てよと、なんどもなんどもなんども願ってもその手を離れていくのです、それが花です。花と呼びました 灰が積もるようですね、遠くを見ようとしていました。誰かがあなたに向かって、刃物を差し出します。それを受けるのですか、太陽の刃は後ろ足をきれいにソテーして逃げることはできませんでした。 そう、じゅうねんたっても じゅうねんたってみても たくさん、わらいました、沢山の祈り

      • しずり雪

         雪が松の枝をしずり、重い音を立てた。  冬の訪れを告げるのは、晩秋に降る雪だ。日本海側に位置するこの町では、湿気を多分に含んだ重い雪がまず秋の終わりに降る。鈍色に変わった空とその雪に人々は項垂れ、今年も始まる長い冬を覚悟する。一晩で四十センチも積もることのある雪は、早く降りすぎたことを後悔するように次の日から溶け始め、道はじくじくと濡れる。靴を汚す雪泥はこの町から出ていくことを拒む足枷のようだ。  雪は呪いだ。そして、私の名前でもある。だからどうしても冬を好きになれない。

        • はる惑

           いちごカルピスソーダを  ぶちまけたような春  らくがきの鳥たちが  らくがきの鳥たちのように  ちぎれた指をひろってくる  巣立つにはまだ青い  精液の匂いのする指  信号待ちしている男の子の目をうばって  こっそり盗み出したらしい  いちごカルピスに触れるには  まだ毛がかたくて  歯ブラシにちょうどいいかしら  泡だった言葉の下をくぐって  甘さ控えめの世界へとすすむ  まさこのタンスに一番うえには  いちご柄のぱんつがしまってあって  それは春だからではなく  残酷

        さくら (いぶきⅵ

          約束

          あなたのたてがみを なぞるように みちてゆく ひかり そのもじを おもう たとえば かぜになったのだろう うたになったのだろう ちからづよく はじかれるように しょうどうを いつくしんで かけゆくまま しだいに しだいにと ひえてゆく くちぶえに にた てがみをよんだ うちゅうには うつわがあって じょじょにかたむいていくという あれはオリオンですか あれはカシオペアですか ふゆの 星座だけしっている やわらかな うなづきが ぱくりと欠けたとき 田畑は お

          そんな風に首を絞めなくても、そうして結ばれる季節があり陽射しがあり、かすかにさわやかな鰯がそらを泳ぎ出す。かける前の脚はみんなさわやかなんだ、はめこまれたような雪が降ったあさ、少女はきっと旅立つ、それを知っていても留めるすべをもたない。あきらかな春のバスが、みずたまりをそっと横切り、緑色の車体を一瞬うかべた ほほえんでいても、泣いていても、その滑らかな剃刀の斜度はかわらない、それによって削がれるものも、それによって研がれるものも。祝祭を。迎えにいくまえに、柄にもなく香

          西巻真歌集「ダスビダーニャ」一首鑑賞

          いちまいの海に終はりがあることを知るかなしみに絵は途切れたり(西巻真「ダスビダーニャ」より) *********** 例えば今目の前に一冊のスケッチブックがあったとして。 例えばそれを開いたとして。 そこにはまだ何もない。 絵筆やクレヨンを手に、その何もない空間へと手を伸ばし。 そうして目の前にあるものを、そこに取り込んでいく。 絵を描くということは、世界を認識し、再構築していく作業だ。 絵に描かれた瞬間に描かれたものはそれでありながら、それとは違う位相でまた産声を上げ

          西巻真歌集「ダスビダーニャ」一首鑑賞

          ぺぶはベッドで絵を描いている、する事がないものだから、私はじゃがりこを噛んでいる。ガリガリと前歯で噛むかグシャリと奥歯で噛むか、そのどちらが美味しいのかを考えている、ふりをする。今日はお休みなの?うん、だから絵を描いているの、人を黒く描くと心配してもらえるんだ。学校で貰った鉛筆でガリガリと塗りつぶす。傷はもう大丈夫?ぺぶは優しい、髪の毛の匂いも香ばしくてドキドキする。血が出てたけどもう平気。指はだめって言ったのに入れる馬鹿がいてさ、生理のふりをしてズル休みができたら最高だね。

          【and she said…】

          ※詩を書こうと考えてはじめて書いた作品です。ご笑覧頂ければ幸いです。 2012.12.19 out 『穏やかな斜光の中で 左目が潰れてしまった、きみと 冷えていく景色が すれ違っていくカレンダーの 色を、ひらり 一枚落とした。 そうして、彼女は言った。 風が邪魔した。』 僕が彼女に向けた最後の言葉はなんだっただろうか。彼女が僕にくれた最後の言葉はなんだったのだろうか。忘れてしまった、のか、それとも自分の心を守るためにそっと心が鍵をかけてしまったのか。空白の言葉の中に黒い蟻

          【and she said…】

          レイン。〜群昌美、横山黒鍵 連詩〜

          窓を打つ雨粒が滲ませていく光は微笑みの行方さえくらました鳥の目の闇(attack)です。 蝋付けの翼では手紙が書けません、だから私は上手くもない歌を歌います。 喉から血が吹き出す乾きと呻き、ティンパニが鳴り響く夜は背骨を駆け登り孤独の波紋に怯えながら、私はあなたにも分かる言葉を探さねばなりません。                                白い絨毯、指を這わせて手紙のふりをする。雨、は誰の足音なの。雷鳴はあなたの街に届きますか。明滅する電球。その光と闇

          レイン。〜群昌美、横山黒鍵 連詩〜

          みず 、 の ね

                               きく 、 手のひらを滑る 透明な迸りに  耳をつける  冷たく 潤されていく その距離に  わたしは わたしを測る とても染まりやすいものだから と そして今日も残る 耳朶、その奥の せせらぎ  けさ 朝顔の種をまきました ひとは、つみをおかすものだから そのつみを みずにながして、しまえばいい ながされたみずの ゆきさきに たとえば あなたとあなたのこどもがいて みず に薄らいだその上澄みを 

          みず 、 の ね