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【BL二次小説】 お出掛け①


視線を……感じる。




休憩時間。

教室の自分の席で新開はふと、顔を上げる。

そのまま廊下の方を見やる。


「!」
「!」


廊下に居る荒北と目が合った。


飛び上って驚く荒北。

顔を真っ赤にして、

走って逃げた。



「……」


その姿をじっと目で追う新開も、頬を赤らめている。





最近、荒北とよく目が合う。

今のように荒北が見ている時もあれば、自分が荒北を見ていて視線に気付かれる時もある。


元々女子に人気のある新開だ。
常に複数の女子から熱い視線を投げかけられている。

しかし、そういう視線には全くセンサーが働かない。


探知するのは……荒北からの視線にだけであった。



睨まれているわけではない。
それはわかっている。


明らかに、自分は荒北を……意識していた。



荒北も、自分と同じ想いなのだろうか。

そうだったら嬉しいが、もし勘違いだったら……。



なんせ、男同士だ。

息をピッタリ合わせなくてはならないスポーツのチームメイトでもある。

寮でも毎日一緒に生活を共にしている。


もし、対応を間違えて、関係がギクシャクしてしまったら取り返しがつかないのだ。
慎重にならなければいけない。


このまま、何も行動を起こさず、何も波風を立てず、何も気付かないフリをして、卒業まで現状維持すべきだ。


……本当はそれが正解なのだと思う。



しかし、頭ではわかっていても、本音は全く逆だ。

荒北への想いは日に日に強くなっていく。

目で追っている時間も明らかに増え続けている。

頭の中はずっと荒北のことでいっぱい。
授業も全く聞けていない。

溜め息をつき、胸がドキドキしっぱなしだ。


荒北の気持ちが知りたい。
知りたくてたまらない。


これが、明らかに片想いなら、まだ楽だった。
自分の気持ちは自分だけの胸の奥に仕舞っておけば済むことだ。


しかし荒北の態度を見ていると、脈がありそうに感じる。


だから気になるのだ。
だから期待してしまうのだ。
だからはっきりさせたいのだ。




「靖友……。はっ!」


荒北の名前をつい口に出してしまった。

新開は慌てて周りをキョロキョロと見渡す。

誰も聞いていなくてホッとする。


「ダメだ……。このままじゃ卒業まで精神がもたねぇ」

新開は頭を抱えた。





「ハァハァ」


廊下を全速力で走ってきて、階段室で息を切らせている荒北。


「また……見てンのバレちまった……ヤベェ」


天を仰ぎながら階段に座り込む。


「……ハー」

心を落ち着かせる。


「変なヤツ、って……思われてンだろうな……クッソ!」


見ないよう見ないよう、気を付けているのに、どうしても新開を目で追ってしまう。



荒北も、新開を意識していた ──。



いつからなのかはっきり覚えていない。

新開の、キレイな顔立ち。
凛々しいスプリント。
豪快な食べっぷり。
殴りたくなる程の天然。

どれもが愛しく思える。


まさかこの自分が男に惚れてしまうとは。
今でも信じられない。

だが確実に、日増しに想いは募る一方だ。


新開も自分をじっと見ている時が多いことには気付いている。

もしかしてアイツもオレのことを……。

なんて思ったりもするが、世の中そうそう都合良く出来ているわけがない。

きっと新開は「何か言いたいことあるのかな」と気になっているだけなのだ。
そうに違いない。



「アーー!」

荒北は頭をガリガリと掻いた。


このもどかしい状態はいったいいつまで続くのだろうか。

自分でもどうすれば良いのかわからない。

荒北は気が狂いそうだった。




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