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『なお偶然にも日曜の夕方だったとのこと』


「俺だよ!俺がやったんだよ!」

「ようやく観念したか」

「うぅ…俺…なんてことを…」

「愚かだったな」


取調室の小さな窓には

西日が差し込んでいる


人々を恐怖で震えさせた

連続殺人事件


手口は毎回同じ

月に一度のペースで

被害者は両手で数えるほど

日本全国

津々浦々に


捜査は困難を極め

容疑者を絞ったあとも

取り調べは長きに渡った


そんな事件も

ようやく終焉を迎えそうだ

署の内外が慌ただしく動き始める


「刑事さん、俺さ…」

「おう」

「小さいころからさ、親に乱暴されてさ」

「うん」

「貧乏だから学校行けば友達にはいじめられるし」

「…」

「中学卒業したら、放りだされて」

「あぁ」

「ろくな仕事にもつけないから、カネもなくて」

「んぁ…」

「なぁ刑事さん、聞いてる?」

「いちおう」

「いちおうってなんだよ!せっかく俺が…」


その矢先

若手の刑事が取調室に一人

出発の準備が整った旨を伝えに来た


「悪いな、聞いてなかったわけじゃないんだ、行くぞ」

「なんだよ、もうブチ込むのかよ!?」

「ちがうちがう、急がないと日が暮れちゃうな」


容疑者を乗せた車両は

都会から少し離れた

海沿いの町へ


「どこだよここは!?」

「あぁー、そこの岬のさ、端まで行ってくんない?」

「え、断崖絶壁じゃねーか!怖いんだが」

「だから気を付けて」

「意味わかんね」

「そこでさっきの「俺がやった!」からもう一回始めてくんない?」

「はぁ?」

「自白といえば断崖絶壁だろうが!」

「ふざけんなよ!」

「ふざけてんのはお前だろ!何人殺したと思ってんだよ」

「は、八人…」

「世間の注目度考えろっての、マスコミも来てんだから、ライブよライブ」

「マジかよ」

「客入れようかって考えたくらいだからな」

「じゃ目立つかな?」

「当たり前、時間ないから、生中継だから、な」

「お、おう…」


自白といえば

取調室もいいが

やはり断崖絶壁


水平線に太陽が差し掛かる頃

捜査のプロと殺人のプロ(?)による

大根芝居が

全国に生中継される瞬間であった



なお偶然にも日曜の夕方だったとのこと








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