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『殉教』


あるショートショート作家がこう言った


ショートショートってのはねえ
できるだけ普遍性をもって
つまり古今東西を問わずにね
老若男女が理解できる表現で
なおかつ摩訶不思議な事象をね
描くのが理想なんだよね


俺はそれを論破した


じゃあどんな言語で書くんだよ

どんなテーマを扱うんだよ

どんな優れた文章だって

ある程度は作品のその背景に

何かしらの文脈があるだろう

人類に普遍的なコンテクストなんて

ありえないんだよ

わかったか?


おまえの言うことも一理あるな


そう納得したようだ


俺は続けた


もう何も書けないだろ

何も喋れないだろ

呼吸も止めとけよ


ほどなくして

そのショートショート作家は

息を引き取った


文学への殉教とは

このことか


俺にはこんな執念はないよ


参った

参った


あと俺そもそも

論破できてないよな


なんかごめん

ごめんよ


















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