「ねぇあのコ

「どれ？

「あの、いちばん奥の観葉植物の手前

「あぁ、けっこうかわいいね

「なんか震えてない？

「きっと寒いんでしょ

「具合悪いのかなって

「あ、トイレに行ったよ大丈夫

「ねぇあのコ、まだ震えてるよ

「ほんとだ

「声掛けてあげたほうがいいかな？

「やめなよ変なひとだと思われる

「でも尋常じゃないよ震え方が

「あ、またトイレに行った

「戻ったけどまだ震えてるよ

「でも心配なさそうだよ

「どうして？

「入口みてごらん

「あ、ほんとだ来たね、彼氏かな

「あんなかわいいコ待たせて

「わるいオトコだね

「会いたくて会いたくて

「震えてたんだね

「なんだろうなかなか

「うん

「ひんにょうじゃない？

「ん？

「ひんにょうだと思わない？彼

「いきなり何を言ってるの？

「ひんにょうだよぜったい

「どちらかと言えば女の子のほうが…

「女の子のほう？

「２回もトイレに行ってるから

「あぁ！そっちの頻尿ね！ちがうちがう

「なにが？

「ごめーんつい方言でちゃーって

「なにそれ

「ぷりぷりの方言さー

「え、あんたぷりぷり県の出身だったの？

「そうだよーあんまりゆってないーけど

「へぇ

「あ、馬鹿にしーたでしょ

「ううん別に

（あとがきと言い訳など）

拙作は、熱狂的ゆとりスト、夏木凜さんからのひとことお題を元に綴ってみました。ひとことお題募集から年をまたいで早４か月以上経っていまして、いまさらなんですけど…。

お題頂いた瞬間に「頻尿」とぷりぷり県（※後述）の「ひんにょう」を結びつけたんですが、肝心な『ぷりぷり県』のコミックスを家の奥底にしまっており、ずうっと気になりつつ今に至ったというわけなんです。

お題をいただいた夏木凜さん。妖艶甘美で素敵な文章を楽しく拝読しています。忘れてなかったんですよ。こんなんでよろしければご査収くださいね。

ところで甘枝よ、ぷりぷり県ってなんだよっていう野次が飛んできそうですが、つまりは漫画です。敬愛する吉田戦車氏のなかでもわたしがもっとも愛してやまない作品『ぷりぷり県』。もう３０年ほど前の作品です。架空の奇妙な文化風習をもつ、日本のどこかにあるけど誰もどこにあるか具体的には思い出せない県、ぷりぷり出身のサラリーマンつとむを主人公に、各県出身の登場人物が、まぁそのケンミンショー的な内容を吉田戦車的な視点で描いてるというやつです。全５巻あるんですけど、わたしにしてはめずらしく暗記するレベルで読み込んでる漫画です。

『ぷりぷり県』　作・画　吉田戦車

西野カナにはまったく触れてなくて我ながら草。まぁそういうわけです。
ありがとうございました。