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ツッコミヘルパー募集中

親父は妙に自分のファッションに自信を持っている。

最近は特に「チャイハネ」というエスニック・ファッションのお店にハマッているようだ。僕はそこでの買い物に付き合わされたことがあるのだが、案の定、衝撃的な出来事が待ち受けていた。

店に入ると、親父はレジの方を指差し、「おい、これ見てみい」と言う。なんとそこには、親父のファッションスナップが飾られているではないか!

「なんで親父がここに?」

「そりゃあワシはオシャレやから、こうして飾られとんねん」

こんな若い人たちが来る店に、70過ぎのじいちゃんのファッションスナップ。どう見ても違和感がありすぎる。

レジの奥から出てきた若い男性店員は、こちらに気づくと「あ、いつもお世話になっております!」とさわやかな笑顔を見せた。どうせ親父のことだから、店員さんを脅迫して、半ば強引に自分の写真を飾らせたに違いない。

謝罪しようと店員さんに事情を伺うと、どうやら意外にも、お店の人からお願いしてくれたそうだ。もしそれが本当ならば、関西ならではのノリと言うべきか。親父はもちろんご満悦だ。

こんな調子なので、僕が実家に帰るたびに、親父は最近購入したファッション・アイテムを自慢してくる。しかしアイテムの使い方がいちいち「非倫理的」なのだ。

ある時などは、「この帽子が便利なんや」と言って、ちょっとつばの大きいハンチング帽を持ってきた。

「この帽子ええやろ。これは『年寄り帽子』ゆうてな、役所行く時はこれかぶってボケたフリすんねん。ほな向こうで全部書いてくれるから楽でええで~

自分が楽をするためには手段を選ばず、あらゆる策を弄してくる。僕はちょっと突っ込む言葉が思いつかなかった。

その日の夜、なんとなく旅行の話になると、親父はうれしそうに僕に向かって言った。

「今度広島行くから、もみじまんじゅう買ってきたろか。(動きながら)もみじまんじゅう~!

「親父、その動きは〝コマネチ〟!!

そろそろ介護ヘルパーならぬ「ツッコミヘルパー」の依頼を検討している。

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