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今年の世界穀物生産は過去最高の28.2億トン 国連が予測

国連食糧農業機関(FAO)は11月3日、2023年の世界全体の穀物生産量が前年比0.9%増の28億1930万トンと、過去最高になるとの予測を公表しました。消費量は1.0%増の28億1040万トンの見通しです。世界全体の消費量は右肩上がりで増えていますが、生産量はそれを上回って推移しています。最近は干ばつや豪雨といったった異常気象が多発し、気候変動による農業生産への影響が懸念されているものの、世界全体としてみれば、今のところは安定的に食料を確保できていると言えます。

FAOはこうした生産予測を毎月示しており、11月は前月から小幅に上方修正されました。今年も残り少なくなってきたので、今回の予測の精度はかなり高いと思われます。11月10日には、年2回の詳細な食料予測が公表されました。
  
2023年の生産予測の内訳を見ると、小麦は2.2%減の7億8510万トンと、過去最高となった前年から減るものの、トウモロコシなど粗粒穀物が2.7%増の15億1030万トン、コメが0.8%増の5億2390万トンと堅調です。粗粒穀物のうちトウモロコシは4.5%増の12億1660万トンと、大きく伸びる見込みです。

小麦の生産が減るのは6年ぶりですが、それでも過去2番目の高水準となります。主要生産国のロシアとオーストラリアが過去最高だった前年から減少に転じるほか、カナダやカザフスタンも減産が見込まれています。アルゼンチンやインド、米国では増産が見込まれています。

粗粒穀物では、ブラジルや米国でトウモロコシの生産が大幅に増えると予測されました。これは、トウモロコシ相場の上昇により、農家が作付面積をかなり増やしたためです。米国の生産は10.5%増の3億9750万トン、ブラジルは17.5%増の1億3840万トンと、いずれも2ケタの伸びとなりそうです。アルゼンチンとオーストラリア、カナダは干ばつの影響で減産が見込まれています。

コメは、価格上昇によってアジアやアフリカ、北米で作付面積が増えたことが寄与しました。ラニーニャやエルニーニョに伴う悪天候などの影響はあったものの、それでも増産となりそうです。最大生産国の中国は0.2%増の1億4310万トン、2位のインドは0.6%減の1億3200万トンで、ともにほぼ横ばいの見通しです。

世界全体の穀物消費量は1.0%増の28億1040万トンの見通しですが、内訳は、小麦が1.4%増の7億8950万トン、粗粒穀物が1.2%増の14億9900万トン、コメが0.1%増の5億2200万トンとなりました。人間や家畜が食べる量が大きく増減することはなく、緩やかに増え続けています。

穀物生産を国別に見ると、首位の中国が1.3%増の5億7660万トン、2位の米国が11.0%増の4億5380万トン、3位インドが1.4%増の2億9780万トンと、いずれも増産が見込まれています。4位以下は、欧州連合(EU)が1.2%増の2億7230万トン、ブラジルが14.7%増の1億5570万トンと好調ですが、ロシアは小麦の減少が響き8.2%減の1億3440万トンに落ち込む見通しです。

中国は穀物消費が1.6%増の6億2910万トンと、世界最大で、生産を大きく上回っています。その他の国・地域は生産が消費を上回っており、主要な穀物輸出国となっています。日本の穀物生産は850万トン、消費は3150万トンと見込まれています。
 
世界全体の生産から消費を差し引いた在庫は2.6%増の8億8110万トンの見込みです。消費量に占める在庫比率は0.2ポイント上昇の30.7%に達し、FAOは「歴史的な観点からは、十分な(Comfortable)供給状況にある」と現状を分析しています。食料不安をあおり続ける人が一部にいますが、少なくとも現在はそういう状況にはないということです。

こうした状況を反映し、食料価格は下落が続いています。10月の食料価格指数(2014~16年=100)は前月比0.7ポイント下落の120.6となりました。ロシアのウクライナ侵攻直後の2022年3月に過去最高の159.7に上昇しましたが、それ以降は下落基調が続いており、1年7カ月で24%も下がりました。2021年3月の119.2以来、2年7カ月ぶりの低水準となります。このうち穀物は1.3ポイント下落の125.0となりました。

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