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美味しいものを少しずつ

ゴールデンウィークのど真ん中に、昨年のゴールデンウィークを思い出している。
昨年の今頃は、病院のベッドで唸っていた。

昨年、4月29日の夕食後、突然苦しくなった。
下腹部からじわじわじわと喉元までこみ上げてくる。
嘔吐ではない。
得体の知れない何かが次から次へとこみ上げてくる。
こみ上げたものが、胸のあたりにたまっていく。
息ができない。

もうあかん。

妻に電話した。
「もうあかんわ」
状況を察した妻の指示で救急車を呼んだ。
最初から自分で呼べばよかったのだが、妻の声で言ってほしい何かがあったのかもしれない。
救急で運ばれてそのまま入院。
検査の結果、急性膵炎。

数年前に一度、急性膵炎になり、定期的に、血液検査と超音波検査を受けてきた。
今回も一週間ほど前に検査を受けていた。
その時の数値が少し高めだったので、大学附属の病院に紹介状を書いてもらっていた。
それを持って、明日は検査に行こう思っていた矢先の出来事。
2週間くらいの入院予定ですと、告げられる。
すぐに会社に連絡。

膵炎に特有の、下腹部からみぞおちあたりにかけての不快感は、翌日には治まった。
血液検査の結果もかなりよくなってきている。
この調子なら連休の前半明け、6日くらいには退院できそうですねと言われて、その気になる。
入院2日目の昼からは、通常の食事。
病院の食事は決して美味しいものではないが、他に楽しみがないので、味わって食べる。

落ち着いたところで、救急の個室から、4人部屋に移動。
順調、順調と思っていた矢先に、身体全体に痛みが走る。
まずは首から。
最初は寝違えたかと思っていた。
その痛みは、肩から背中、腰、そして、太もも、ふくらはぎにまで広がっていった。
当初の膵炎による痛みとは別の痛み。
寝返りもままならない。
トイレに立つのも、一大決心が必要だ。

放散痛ですね。
と、若い主治医は言った。
血液検査でも炎症の数値が上がっています、と。
しばらく、食事はやめて点滴にしましょう。
それから、やく9日間、点滴のみの生活が続いた。
痛みが激しくなると、痛み止めも追加してもらう。
みるみるうちに、手足が細くなった。
アップルウォッチのベルトの穴もひとつ少なくなった。
ふくらはぎも、片手でつかめるほどに。

ようやく痛みも治まってきて、数値も改善してきた。
では食事を再開しましょう。
まずは、五分粥から。

恥ずかしながら、その時に初めて、五分粥、全粥の意味を理解した。
何となく、全粥がいちばん水気が多て薄いおかゆだとイメージしていた。
それが、実は逆だった。
全粥とは、米1に対して水5の割合で炊いたもの。
五分粥とは、米1に対して水10の割合で炊いたもの。
さらに、三分粥もあるらしいから、まだ恵まれていた。

五分粥の朝食


五分粥の昼食


五分粥の夕食 デザートに水ようかん


五分粥で3日ほど我慢して、血液検査。
数値も改善していたので、全粥に変更。
もう、ひと口ひと口しっかりと噛み締めていただいた。
身体の痛みもほとんどなくなってきていた。

最後の2日間は通常の食事に戻り、ようやく退院。
結局、17日間に及ぶ入院となった。
退院後も、主治医の指示に従い、約一ヶ月の自宅療養。
以前なら、無視して仕事に行っていたと思うが、この時には従った。
会社の方では、ちょうど今、感染対策で出勤調整していますから何とかなりますとのこと。

自宅療養といっても、静かにしているだけなので、その間に、アベンジャーズシリーズをアイアインマンからエンドゲームまで見直しコンプリートした。
何度見てもあのシリーズは、新しい発見がある。

それ以来、今日に至るまで、食事、特に脂質には注意している。
一食の脂質はできるだけ20以下になるように。
外食の際には、さすがに難しいので、前後の食事で差引している。

アルコールも控えている。
別に、ソバキュリアンになったわけでもない。
そういう場であれば、適当にいただく。
ただ、自宅では飲まないようにしている。
そのようなものが飲みたくなったら、もっぱらノンアル飲料で楽しんでいる。
最近のものは非常によくできていて、3次会くらいなら、黙って出せば多分わからない。

煙草はかなり前にやめている。
煙草も、ヘビースモーカーだった頃には、煙草のない人生なんてと思っていた。
いざやめてみると、何も変わらない。
むしろ、解放感の方が大きかった。
アルコールも、多分同じようなものだろう。

別にアルコール反対運動などするつもりもない。
ただ、時々、酔ってタクシー運転手に暴言、暴行を働いたというニュースを見ると、飲酒も免許制にして、問題を繰り返す奴は免停にしてほしいと思ったりもする。

こんな生活を今しばらくは続けていきたい。
いったい、どれだけ長生きしたいんだと言われそうだが、生きていれば80歳くらいまではと考えている。
美味しいものを少しずつ。
それでいい。

ただし、80歳を越えれば、食べたいものを気にせずに食べ尽くしてやろうと思っている。
もちろん、家族には、延命治療など一切するなと一筆書いておく。








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