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銀行業務よりも探偵業務に勤しむ行員たちの倍返し映画『シャイロックの子供たち』

【個人的な満足度】

2023年日本公開映画で面白かった順位:13/24
  ストーリー:★★★★★
 キャラクター:★★★★★
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★★☆

【作品情報】

  製作年:2023年
  製作国:日本
   配給:松竹
 上映時間:122分
 ジャンル:ヒューマンドラマ、ミステリー
元ネタなど:小説『シャイロックの子供たち』(2006)

【あらすじ】

東京第一銀行の小さな支店で起きた、現金紛失事件。お客様係の西木(阿部サダヲ)は、同じ支店の愛理(上戸彩)と田端(玉森裕太)と共に、この事件の真相を探る。

一見平和に見える支店だが、そこには曲者の銀行員が勢ぞろい。出世コースから外れた支店長・九条(柳葉敏郎)、超パワハラ上司の副支店長・古川(杉本哲太)、エースだが過去の客にたかられている滝野(佐藤隆太)、調査に訪れる嫌われ者の本部検査部・黒田(佐々木蔵之介)。

そして、一つの真相にたどり着く西木。それは、メガバンクにはびこるとてつもない不祥事の始まりに過ぎなかった―。

【感想】

原作小説およびWOWOWのドラマ版は未鑑賞ですが、ストーリー展開は映画オリジナルのようです。シリアスな中にもキャラクターのコミカルさが散りばめられていて面白い映画でした。

<流れるように進む綺麗なストーリーライン>

池井戸潤さんの作品を原作としたドラマや映画って安定した面白さがあると思いませんか?その理由を考えていたんですが、端的に言えば"ギャップ"かなあと。つまり、誰もが利用するであろう"銀行"という日常の中で、「そんなことありえる?!」っていう非日常が発生するギャップが面白さの秘訣なんじゃないかと思うんですよ。今回は、とある支店内で起きた100万円紛失事件の真相を追っていくうちに、融資先に関する銀行の闇が明らかになっていくというミステリーチックな内容です。

これの何が面白かったかって、無理のない設定ですんごく綺麗に進むところなんですよ。100万円の紛失事件が、ちょっとした紙クズから綻びが出始め、調べれば調べるほど怪しい情報が掘り起こされ、驚愕の事実にまで行き着く。この流れるように進むストーリー展開は観ていてわかりやすいからいいんですよね。小難しい話や、「これってどういうことだっけ」みたいに疑問に思うところがないので、いちいち頭の中で情報整理をする必要がなく、スクリーンの中で起こっていることに集中するだけでいいんです。アクション映画なんかはそういうのよくありますけど、ミステリー仕立てでそれをやっちゃうのすごいなって思います。まあ、みんな銀行業務よりも真相解明のために探偵業務に精を出しすぎでは?とは思いますけどね(笑)

<映画を盛り上げるキャラクターのよさ>

んでもって、この映画の推せるポイントはストーリーやのわかりやすさともうひとつ、個性的な登場人物たちです。みんな意外と知られざる過去を抱え込んでいるという設定が人間らしくてよかったですね。九条と黒田の因縁が終盤までしっかり活きていたのもよかったですし、仕事のプレッシャーに押し潰されて頭がおかしくなっちゃった遠藤(忍成修吾)も印象的でした。

でも、一番はやっぱり主人公の西木ですよ!全体的にシリアスな話なのに、彼だけ抜きん出てコミカルな役どころなんです。その西木と沢崎(柄本明)の掛け合いがまるでコントみたいで笑えるんですよね。にも関わらず、まったく浮くことなく作品の世界観にマッチしちゃうんですから驚きです。西木を演じた阿部サダヲさんと沢崎を演じた柄本明さんだからこそ成せる業なのかなと。本当にすごい役者さんですよ。

<池井戸ユニバース全開>

池井戸潤さんの作品は横展開が多いと言いますか、同じ銀行がけっこう他の作品にも登場するんですよね。今回も産業中央銀行や白水銀行など、他作品でも有名な銀行が出てきたので、池井戸潤さんの他の作品を観たことある人ならニヤリとできることでしょう。まさに池井戸ユニバースが作れてしまいます(笑)

<そんなわけで>

ミステリーだけでなく、銀行を舞台にしたビジネスエンタメとしても、お金にまつわるヒューマンドラマとしても楽しめる映画でした。池井戸潤さんの作品が好きな人はもちろんのこと、ミステリーやビジネス系が好きな人にはハマりやすいかもしれません。何か悪いことをするときは、紙クズひとつまで抜かりないようにしないとって思いました(笑)


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