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#11 不思議の国の殺人事件

こんにちは!
みなさん、ゴールデンウイークをいかがお過ごしでしたでしょうか。
毎週月曜日開館、令和最初の【Vivid Books】へようこそ!

みなさんはルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』という物語を読んだことはありますか?

ざっくり言ってしまうと、少女アリスが白兎を追いかけて「不思議の国」に迷い込み冒険をする、という内容の小説です。

活字で読んだことはなくても、ディズニー映画や実写映画「アリス・イン・ワンダーランド」などを通して、だいたいの物語を知っている人は多いのではないでしょうか。

意外だと言われそうですが、僕はこれらの作品群が大好きで、今週はこの「不思議の国のアリス」の世界と、殺人事件を追うミステリーが混ざった、読めば読むほど続きが気になる一冊を紹介します!

目次
1.今週の一冊
2.内容
3.学び・気づき
4.さいごに

1.今週の一冊

タイトル:アリス殺し
著者:小林泰三
出版:東京創元社、2019(単行本版は2013)


2.内容

いつからか、不思議の国の夢を見続けている主人公の栗栖川亜理(くりすがわあり)。

ある日、不思議の国でハンプティダンプティが塀から落ちて死んだ。

次の日、亜理が大学へ行くと、「玉子」と呼ばれている研究員が屋上から転落死していた。

同じように、不思議の国でグリフォンが牡蠣を喉に詰まらせ死んだ夢を見た次の日には、牡蠣を食べた大学の教授が死んでいた。

不思議の国での死が現実世界にも・・・。

この一連の事件の容疑者にされたアリスは、同じように不思議の国と現実世界がリンクしている知り合いと一緒に、現実と夢の同時並行で事件の解明に向けて推理を進めていく。


といった内容の小説です。そもそも「不思議の国のアリス」を知らない人には、少し設定がややこしいですかね?(笑)

夢で現実とは全く違う自分として時が流れていく、という設定にワクワクしながら、メルヘンの世界に持ち込みたくない「殺人事件」という概念とその惨くてリアルな描写に心臓をヒヤヒヤさせながら、一気に読み終えてしまいました!


3.学び・気づき

やっぱり小説って、僕の中途半端に合理的な頭で読むと、ムダが多いなと。

例えば、自身に殺人を犯す理由がないと主張するアリスと、チェシャ猫の会話のシーン。

「理由が言えないのなら、わたしを疑うことはできないわ」
「帽子屋は理由を推測していたよ」
「どんな理由?」
「君がシリアルキラーだから、らしいよ、アリス」
「それこそ何の根拠もないわ」
「ハンプティ・ダンプティとグリフォンを続けて殺しているのだから、シリアルキラーに決まっていると言っていた」
「わたしはどちらも殺していない」
「どうしてそう言い切れる?」
「だから、理由はないでしょ」
「理由は君がシリアルキラーだから」
「だから、その根拠は?」
「ハンプティ・ダンプティとグリフォンを続けて殺しているから」
「殺してないって言ってるでしょ」
「どうしてそう言い切れる?」
「だから、理由がないでしょ」
「理由は君がシリアルキラーだから」

※本文p.146より引用

不思議の国の住民は、みんな頭がおかしいと作中で言われていて、このような煩わしいやり取りが何度も出てきます。

こんな循環論法って普段生活してたらなかなか聞きませんし、聞いたとしても僕だったらなるべく避けたいタイプの会話です(笑)。おそらくストレスもたまるでしょう。

だからこそ、不思議の国という世界観で、小説という表現で、こういった「ムダ」を体験できることに意義を感じるのです。


非現実的なものは避け、ためになる本を読み、ためになる勉強をしなさいという考えもあると思いますが、

拡張現実(AR)とか仮想現実(VR)という言葉が聞こえるようになってずいぶん経った今、「空想が現実に」ということが当たりまえになりつつあります。

確かに、空想は膨らましてもすぐには実現しません。

しかし、少し時間を置けば、空想に現実が追いついてくることもあるでしょうし、自分の力で空想から現実に変えられることもあるかもしれません。

普段体験できない「ムダ」にどれだけ触れて想像を膨らますか、ってこれから、というか今、結構大事なのではないかなと思います。


4.さいごに

とはいえ、僕はこのゴールデンウィークに10冊くらい本を読もうとしましたが、外に出る日もまあまああり、家にいてもなかなか集中できず、再読書も含めて5冊しか読めませんでした。

せっかくの10連休をムダに過ごしてしまったぁぁぁぁー!!!

こんな気持ちも若干残りますが、この何もできなかったムダな時間は、結局今振り返ってムダだったと思うだけで、その時はたぶん必要な時間だったはずだよな、と僕は思うことにします。

というか意外と真理っぽくないですかね(笑)。


次の定期投稿は来週の月曜日【Vivid Books#12】です。
それではまた。


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