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[図解] 自動運転と企業間提携(中国編:6/7)電気自動車とAI

第6回目である「自動運転と企業間連携 中国編」は、中国の自動運転関連の企業を「自動車メーカー」「自動車部品メーカー」「ネットワーク」「サービス」をカテゴリーとしてまとめようと思います。全体の解説はこちらから![図解] 自動運転と企業間提携 全8回

今までのまとめは、キープレーヤーとなる一社に的を絞り企業間提携を分析していきましたが、今回は中国編。市場全体についてですのでまとめるのが大変。。。笑

自動車メーカー

まず、自動車メーカーを分析する上で知っておかなければならないのが、合弁会社ルールです。例えばトヨタ車を中国で売ろうとする際、輸入車として売ると非常に高い関税がかせられ、現実的ではないため、現地の会社と合弁会社を設立し売るという形態が主流です。合弁会社を設立する際は、50:50の比率で出資することが政府の方針により義務付けられています。ゆえに、多いところで販売台数の70%を製造委託という形で中国市場に売っているところもあります。

さて、中国には大小合わせて200社以上の自動車メーカーがあると言われています。その中でも突出しているのがビック5と言われている自動車メーカーと、電気自動車で勢いのある5社
ビック5の中には、一気汽車や上海汽車など1950年代に設立されたものもあり歴史は古く安定した生産を行っています。最近出てきたという印象があるかもしれませんが、実際には50年以上の歴史を持ち信頼されているメーカーも存在しています。

ビック5は、自動運転、コネクティッドカー分野には、積極的に投資しており、東風汽車や長安汽車は、ファーウェイやテンセントなどのIT企業と組んで、開発を加速させています。また、EVの新興企業も動きは激しく、アメリカ市場でIPOしたNIOは、新興企業でありながら自動運転の開発にも本腰を入れています。小鵬汽車はアリババからの出資を受けたりと勢いのある自動車メーカーは中国市場には多く存在します。

中国には、新エネルギー(NEV)規制という、3万台以上を販売する完成車メーカーは一定量の割合で電気自動車等(EV、PHV、FCV)を販売しなければならない規制があり、満たせない場合、他社から埋め合わせ分(クレジット)を購入しなければなりません。この制度を逆に利用して、新エネルギー車つまり電気自動車のみを開発し販売する企業が増えているのです。

自動車部品メーカー

自動車部品メーカーは、中国市場の影の存在ですから、あまり世界的に有名で一般的に聞いたことのある企業はなかなかないと思います。中国のIT企業や自動車メーカーに比べて認知度が低い理由は、自動車メーカーのオリジナルブランド車の生産割合を見れば明白かもしれません。
先程も書いたように、中国系自動車メーカーは生産車の70%近くを、海外の自動車メーカーから製造委託という形で引き受け中国国内で販売しています。つまり、デザイン、部品、システムは基本的に海外で作られたものをそのまま採用しており、中国系部品メーカーの入る余地はかなり少なくなります。また、オリジナルブランドに関しても、生産力のある海外部品メーカーと取引をした方が意外に安価で信頼性の高い部品が手に入るため、中国系部品メーカーが自動運転のような先端技術の開発をする隙間がないのが現状です。
中国は安価で大量生産が得意という印象ですが、自動車部品に関しては苦戦を強いられているようです。相変わらず、合弁会社という道は常に残されていますが。。。

ネットワーク

ご覧の通り、中国トップのIT企業や通信機器トップのファーウェイが軒並み自動運転開発およびコネクティッドカーの分野に乗り込んでいます。特にバイドゥのアポロ計画には50社が参画しており、国内からはFAWや北京汽車、国外からはBMW、Honda、Fordなど世界中の企業とパートナーシップを結んでいます。アポロ計画とは、ローカリゼーションと、オープンソフトウェア、クラウドサービスの3つの要素からなる完全にオープンな自動運転エコシステムです。ほとんどすべての情報がGithubで公開されているので驚きのビジネスモデルですね!

時価総額50兆円を超えるテンセントも自動運転開発に取り組んでおり、長安汽車とはコネクティッドカーの分野で戦略的提携を結んでいます。ビックデータやクラウドコンピューティングの分野を軸に合弁会社を設立する計画で、今後、AI、5G、自動運転の分野でも提携を深めていく予定です。

一方、スマートフォンで有名なファーウェイは、OceanConnect IoTというクラウドサービスを軸にコネクティッドカー向けのCVMP(Connected Vehicle Modular Platform)を構築し、カーシェアや自動運転等の新しいサービスの基盤作りに投資しています。FAW、PSAとの提携も発表し両社の次世代モデルがファーウェイのプラットフォームにつながる日もそう遠くはありません。

サービス

サービスに関しては、やはりDiDiとアリババではないでしょうか。最近、運転手が利用者を殺害した事件を受けてサービスを一時停止しているDiDiですが、無人配車サービスが提供できるようになれば、そういったドライバーとのトラブルは一切なくなるかもしれませんね。ちなみに、アップルはこのDiDiに10億ドルの出資をしていたり、米国の研究センターはアップル本社の隣だったりと、いろいろな噂もある関係です笑

比較的情報の少ないアリババはコネクティッドカーと自動運転車の開発に乗り出していますが、全貌はまだまだ明らかになっていません。ですが、自動配送ロボットの開発やロジスティクスの自動化に投資をしていることから、無人配送サービスに注力していることは、明らかです。

最後に、JD.com。あまり日本には聞き馴染みのない企業ですが、テンセントグループの一員でEC市場のシェア2位の中国小売り大手企業です。この企業は物流に非常に強く、物流ネットワークは中国全土の99%をカバーしています。そこに、ラストワンマイルの省人化、無人化を目指し、無人カートを活用した配送や、輸送用電気トラックの開発に取り組んでいます。物流の無人化という意味ではアリババとの競争になるかもしれません。

まとめ

今回は中国市場における自動運転関連の動きをまとめました。あまりにも自動車メーカーやIT企業の動きが激しく1つの記事にはまとめきれませんが、中国系自動車メーカーや米国にも負けないIT企業が軒並み自動運転に投資していることが分かって頂けたのではないでしょうか。まとめると「政府のNEV規制をきっかけに、電気自動車とその自動運転化に投資する中国市場」といった感じでしょうか笑
先日、比亜迪汽車(BYD)が車のコネクテッド化を推進するため、車両データを社外に開放し、第三者が新たなサービスや機能を幅広く追加できるような新戦略を発表しました。バイドゥのアポロ計画やBYDの新戦略のように、日本や欧米の自動車メーカーでは考えられない手をどんどん出している中国市場は今後さらに注目が必要ですね!

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