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クレーム・フランジパンヌって、なんだ?[クリーム編vol.10]

「……?」
クレーム・フランジパンヌ…?
クレーム・フランジパーヌとも云うらしいが、
どちらにしろ知らぬ名だ。
此のガレット・デ・ロワなる菓子に詰められているらしい。
菓子であるからには、食さねば此れが何たるかは判るまい。
「……!」
おゝ、何と云う事だ。
アーモンドとバターの芳醇な香りやコクのみでは無い。牛乳や卵の香りも広がり、鼻で素材の四重奏を聴くかの様だ。
ならば言葉を並び立てて賞賛するのは野暮だろう。
私はたゞ静かに、此れに与る全ての人間に敬意を表そう。
「……………」

おはようございます!真白けいです!
お菓子の面白さ・奥深さを広めるために、見習いパティシエとして皆さんと一緒に学んでいきます。
読んでくれた方は、スキいただけるとすっごく嬉しいです!!ボクのやる気スイッチですので遠慮なく押してやってください!!

今回のテーマは、クレーム・フランジパンヌ です!
…いや、フライパンじゃないですよ。パンはパンでもうんちゃらかんちゃらの答えの常連、フライパンは全く関係ありません。
ちゃんと名前の由来まで説明しますので、よかったら一緒に勉強しましょー!!

Crème frangipaneって、なんだ?

では早速どんなものなのーっていう結論からです。じゃーん!!

crème frangipane
(クレーム・フランジパンヌ)
||
クレーム・ダマンド
クレーム・パティシエールを混ぜ合わせたもの

はーい、またクリーム2つ出てきましたー。
1つのクリームを知るために2つのクリームを知らなきゃいけないって、たいへんだなあ。

でも大丈夫!みなさんはボクと一緒にここまで学んできましたから。だってもうクリーム編10回目ですよ!早いもので…。

さあ、復習しましょう!まだ見てないよーって方はこちらから見てみてください!

戻ってきてくれましたかね…?
一応もう一度簡単な説明を載せておきます。

crème d’amande
(クレーム・ダマンド)
||
アーモンドパウダー、砂糖、バター、卵を四同割で混ぜ合わせたもの
crème pâtissière
(クレーム・パティシエール)
||
卵黄に砂糖、小麦粉を加え牛乳と混ぜて
炊き上げたクリーム

※バニラで香りをつけることが多い

はいはい。そうでした。それぞれ詳しい説明はさっきのリンクから見てみてください。四同割ってなに?って話とかね。

…ていうか、クレーム・ディプロマット然りクレーム・ムースリーヌ然り、
クレーム・パティシエールを他のクリームと混ぜること、多くない?

でしょ?
これはですね、クレーム・パティシエールの時に一緒にお勉強しましたが、パティシエとの関わりが深いからです。身近にあるので使いやすい。
そして、もちろん美味しいからですね!みんな大好きクレーム・パティシエール!!

今回のクレーム・フランジパンヌでもそうです。ただでさえ美味しいクレーム・ダマンドに、クレーム・パティシエールを加えると…?

超絶ウルトラスーパーマックス美味しいって事です!!

具体的に言えば、クレーム・ダマンドのバターとアーモンドの香りに、クレーム・パティシエールのミルキーさが足されて、
味的に少し軽くなって、まろやかになるわけです!

そんな彼女はどういう時に使われるのかというと…

・フルーツタルトの土台としてパート・シュクレの中に詰めて焼く
・ガレット・デ・ロワの中に詰めて焼く

はい。焼きます!
だってクレーム・ダマンドも焼かなきゃだったでしょ?そしたらそれに混ぜて作るこのクリームもそうってことです。

でもクレーム・ダマンドと比べると、甘い香りがするというか、やはりミルキーな感じがあるのでフルーツにも好相性なんですね!
色も黄色っぽく明るい色になります。

じゃあ、どういうやつか大体わかったところで、由来について見ていきましょ!

クレーム・フランジパンヌの由来[説①]

時は1533年、イタリアのカトリーヌ・ド・メディシスがフランスのアンリ2世に嫁ぐ際の出来事。ローマから同行したチェーザレ・フランジパーニ侯爵を由来とする。

「由来とする」なんて曖昧な書き方にしたのは、実はここから派生する説が3つほどあるためです。

しかーし!!その前に、気になる名前がいくつか出てきたのでまずはチェック!

まずは「カトリーヌ・ド・メディシス」。実は2度目の登場。ボクと一緒に勉強してくれてる方なら覚えてるかもしれません。
ちなみにボクは忘れてました。覚えてたあなた、天才です。

なんと、[クリーム編vol.1]クレーム・シャンティイのところで出てきてました。
しかも今回と全くおんなじ出来事。輿入れの際のエピソードです。
気になる方はチェックしてみて!

次!「チェーザレ・フランジパーニ」さんです。この方は……初登場です!よかったです。記憶にないのも当然です。

このお方について特筆すべきことは、ビターアーモンドと南洋の花から新しい香りの香水を生み出していること!しかも爆発的大ヒット!
特に手袋によく使われたとか。

ええ?!すごくない?!
しかもボクの捜査によると、のちにその香水に似た香りのする花が見つかり、現地ハワイでプルメリアと呼ばれていたにも関わらず、
フランジパニとも呼ばれるようになったくらいその香水は親しまれていたそうです。
(↓プルメリア=フランジパニ)

ただこのフランジパーニさん、名前も身分もさまざまな情報が錯綜しておりました。

・名前。チェーザレと言いましたが、セザールとされてる情報もありました。
これは、調べたところ”Cesare”と綴るらしいですが、どうやら読み方によってチェーザレともセザールとも読めそうなのでこれは同一人物と考えて扱います。

・身分。侯爵と言いましたが、伯爵とされてる情報もありました。ボクにはわかりません。昇進したのかもしれないし…。
それからローマの貴族だの王子だのフランスの調香師だの香水商人だのさまざま言われておりました。ボクにはわかりません。多分偉い人ではあったのかな…。

と、前置きが長くなりました。
ようやく、フランジパーニ侯爵とクレーム・フランジパンヌについてのエピソード3選でございます。

(ⅰ)フランジパーニ侯爵はカトリーヌに想いを寄せており、この時にレシピを贈った。彼がビターアーモンドの香水の生みの親として有名であったことから、アーモンドを使うこのクリームに名前を拝借した。

恋のお話だ…!なんだか素敵ー!!

(ⅱ)フランジパーニ侯爵の手袋の香水のアーモンド香からヒントを得たパティシエが考案した。

んんー…。手袋の匂いからって、そんなことあるかなぁ。
まあ、想像力逞しい職人さんがいたのかもしれません。

(ⅲ)フランジパーニ侯爵が、カトリーヌの好物である、ポレンタというトウモロコシのお粥を作ろうとしたが材料がなく、代わりに作らせたのがこのクリームだった。

えぇぇ。お粥の代わりにクリームかぁ…。
と、ボクも思いまして調べたところ、ポレンタというのは見た目的にはそんなにお粥お粥してませんでした。塊っぽくなってました。
まあだからあり得なくもない…。のかな…?

とまあ当時輿入れというビッグイベントの中でなんやかんやありーの、後世につたわりーの、って中で、本に書いてくれた人がいます。ありがたやー!

1651年発刊、料理人ラ・ヴァレンヌの著書の一部。現代でいうクレーム・パティシエールのようなものアーモンドパウダーまたはマカロンを砕いた粉を混ぜたものとしてクレーム・フランジパンヌが登場。

ふんふん。クレーム・パティシエールは確かにこの時代にはまだ成立していません。詳しくはさっきのリンクをご覧ください。

だからのちにだんだん代用みたいな感じでクレーム・ダマンドとクレーム・パティシエールを使うようになっていったようです。

それはなんか納得。あるもん使った方が効率いいもん。
逆に現代でわざわざそれ用に一から作ったら他にはない味ができるのかな…!わくわく!

クレーム・フランジパンヌの由来[説②]

ここで説①のさまざまな説とは全く違う角度から切り込んだ説もありましたのでご紹介いたしましょう。

あ、そうだ。ここで言っておきます。フランジパンヌだとかフランジパーヌだとかフランジパンだとかさまざま呼ばれますが、これは “frangipane”の日本語表記の違いだと思いますのでここではそれで行かせていただきます。

フランスはペリゴール地方、サンタ=スティエという町に古くから伝わる菓子、ガトー・ア・ラ・フランジパン。その中に詰めるクリームがクレーム・フランジパンヌの元となった。

この「古くから」がいつからかが正確にわかれば説①との因果関係が明確になりますが…。
わかりません。

あとボク的にこの説は、じゃあそのフランジパンはどこから来た言葉じゃい!って思ってしまうんですよね…。

ただですよ!そこで紹介されているクリームと冒頭で説明したクレーム・フランジパンヌにはとある違いがあります。

その違いとは、使うナッツはピスタチオで、オレンジの花水で香りをつける、というところです。

実は、これが侮れない理由で、ピスタチオとオレンジの花水の一派が各年代の文献にちょこちょこ出てきます。

『百科全書』の中でフランシパン(franchipan)は卵黄、砂糖、オレンジ花水、レモンの皮を使うものと定義されています。
19世紀の料理人アンドレ・ヴィアールの著書の中でのフランジパンのレシピでもアーモンドをピスタチオに置き換えたりオレンジの花を加えたりしています。

ただ、説①の中でも出てきた、ラ・ヴァレンヌの著書の中で、ピスタチオに置き換えられたものはフランシパン(franchipan)ときちんと書き分けられています。

と、いうことは、やはり説②はアーモンドのフランジパンヌから派生したピスタチオバージョンであるフランシパンを使ったものではないかと推測してしまいます。

由来のまとめと妄想

さあ!ここまで情報は全て書きました!
ここからはボクなりに出てきたことを並び替えてなるべく繋いでみようと思います。
妄想が入りますのでご注意ください…!!

[エピ]ローマ貴族フランジパーニ侯爵、ビターアーモンドと南洋の花の香りの香水を作る

[エピ]1533年、カトリーヌ・ド・メディシスの輿入れに、彼女に想いを寄せるフランジパーニ侯爵も同行

[エピ]ポレンタを作ろうとするも材料不足で出来ず、代わりのものを職人に作らせる

[エピ]職人、フランジパーニ侯爵の手袋の香水のアーモンド香から連想してクレーム・パティシエールにアーモンドを加えたようなものを作る

[妄想]カトリーヌ、一口食べて気に入る

[エピ]フランジパーニ侯爵、レシピを贈る

[エピ]そのクリームを、フランジパーニ侯爵はビターアーモンドの香水でも有名な事からクレーム・フランジパンヌと呼び始める

[妄想]フランジパーニ侯爵、フランスにて調香師としても活動する

[エピ]1651年、ラ・ヴァレンヌの著書でクレーム・フランジパンヌと、フランシパンが紹介される

[妄想]国内で広まる

[妄想]ピスタチオを使うものがフランシパンと区別される

[妄想]サンタ=スティエの町でガトー・ア・ラ・フランジパン作られ始める

[エピ]百科全書やアンドレ・ヴィアールの著書の中で近いものが紹介される

[妄想]クレーム・パティシエールやクレーム・ダマンドができていくにつれ、それらを混ぜて作られるようになる

いやー、どうですか??
ボクなりに考えてみましたが、不確定なことや情報が多いので全然アテにしないでくださいね。

でも、一つのクリームの背景を紐解いていくと、国際結婚、果ては貴族の調香まで辿り着くとは…!!
やっぱり驚きもあって面白いし、歴史の波に揉まれて一筋縄ではいかないところがまた魅力だとは思いませんか?

結局、クレーム・フランジパンヌって、

「二枚目役者」みたいだと思います。
まろやかでありながら芯のある味わいで、優雅な香りを纏うクリーム。主役級のポテンシャルがありながらも地道に役割を全うする姿に感服です。

おそらくイタリアからフランスへ持ち込まれ、そして今フランス菓子に欠かすことのできない地位を築いたこのクリームにも注目してみてください!!

ということで今回は以上です!

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次回の大テーマは…
ガナッシュ」です!!
クリーム編ラストになります!!
お見逃しなく…!

参考文献
猫井登、お菓子の由来物語、幻冬舎ルネッサンス、2011
フランジパーヌ/フランジパーン、一般社団法人 日本洋菓子協会連合会、閲覧日2021-3-27、https://gateaux.or.jp/ufaqs/フランジパーヌ%EF%BC%8Fフランジパーン/
フランジパーヌ、ユニオンぺディア、閲覧日2021-3-27、https://ja.unionpedia.org/フランジパーヌ
じっくりリラックスの☆フランジパニコース☆!!、m-wish-m、exciteブログ、閲覧日2021-3-27、https://www.google.co.jp/amp/s/wish7.exblog.jp/amp/2085664/
Bourdaloue ブルダルー、ケーキの寺子屋コンシエルジュ、閲覧日2021-3-27、http://www1.accsnet.ne.jp/~terakoya/histoire/bourdaloue_h.html
フランジパン Frangipane、フランス菓子ラボ、閲覧日2021-3-27、https://www.patissieres.com/douceurs/frangipane/
Cesare、Weblio辞書、閲覧日2021-3-27、https://www.google.co.jp/amp/s/www.weblio.jp/content/amp/Cesare
ガレット・デ・ロワ その壱 アーモンドクリームを学ぶ、Coloré、閲覧日2021-3-27、http://www.eonet.ne.jp/~pour-les-petits/galettedesroiscreme.html

※この記事は上記の参考文献を元に執筆しました。諸説あるものは一部のみ紹介しています。
また、新たな事実を勉強し次第、追記・編集する場合があります。

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