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アオマスの小説

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どんな一面にも些細な物語が存在する。それを上手に掬って、鮮明に描いていく。文士を目指す蒼日向真澄によって紡がれる短編集です。
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記事一覧

君がいる夏 (ミスチルが聴こえる)

   僕の好きな夏が終わってしまった。同時に、学校が始まってしまった。夕暮れも悲しくなる…

蒼乃真澄
2日前
13

『犬みたいな名前の食べ物』(ショートショート)

 ガラパコス携帯に、一通のメールが来た。 『今日バイトサボったから。これからそっち行く!…

蒼乃真澄
1か月前
14

路地(ショートショート)

 一人、路地を歩く。何も考えず、ただひたすらに。  一匹、猫が通る。彼もまた、何も考えず…

蒼乃真澄
1か月前
16

箱庭の箱を壊す (ショートショート)

 僕が生きる世界は狭い。わずかな人間関係、インスタントばかりの偏食生活、趣味もダラダラYo…

蒼乃真澄
1か月前
21

ご飯が炊けるまで、誰かの生活を覗く。 (ショートショート)

 米といでさ、水入れてさ、炊飯器の中にセットしてさ、『白米』のボタン押してご飯を炊くのよ…

蒼乃真澄
1か月前
20

小説の中で君と生活する『転がる石』

 冬のあるとき、僕は教室の隅で小説を書いていた。    すると君は「何を書いているの?」と…

蒼乃真澄
2か月前
16

喜ばしい出来事を、このメモ帳に書き留めよう。『転がる石』

 二月一日、晴れ。夢都と散歩中、道路に転がった空き缶を拾ってゴミ箱に捨てた。近くにいたお爺ちゃんが「えらいねえ」と褒めてくれた。  二月三日、曇り。節分だったから、僕は鬼になって夢都から豆を投げられた。  二月四日、曇り。若者と若者が手を繋いでいた。  二月五日、曇り。僕が好きだったアイドルが結婚した。  二月六日、晴れ。友人の妻が子供を産んだ。名前は「蒼」。素敵だ。  二月七日、晴れ。あと一週間で世界が終わるから、仕事を辞めた。  二月八日、曇り。茨城の海へ行っ

終わりなきミルクレープ『転がる石』

「愛を重ねよう、君と僕の愛を」 「何を言っている? ミルクレープを食べ過ぎて、気が狂った…

蒼乃真澄
2か月前
8

小さな家『転がる石』

 君が死んだのは十七で、僕が君を好きになったのは、たしか十五の頃だ。あの頃から、君は随分…

蒼乃真澄
2か月前
16

鬼が豆を投げる(再掲)

   自分の運命を受け入れよう。これは仕方がない。世の中、我慢しなきゃいけないこともある…

蒼乃真澄
3か月前
10

髭剃り

 小さい頃、髭剃りをする親父の背中を見ていた。 「どうした?」 「お父さん、僕も大人になっ…

蒼乃真澄
3か月前
9

まさに多様性

 青年は、誰かのために生きようとしました。ダメでした。 「ようやく地球にも地底人が出てき…

蒼乃真澄
4か月前
12

サンタさんが寄り道する inコンビニ

「いらっしゃいませえ」  クリスマスイブに働く、俺。夜空からはお祝いの雪。面白いよなあ、…

蒼乃真澄
4か月前
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『骨』  (小説、約14000字)

『骨』 1  死因、骨。  節枝おばあちゃんは、マキオおじいちゃんの死をたった一文字で表した。 「骨」  僕は畳の床と平行になっているマキオおじいちゃんを見る。いつの日か遠足で行ったときに見た、剥製になった忠犬ハチ公を思い出すような、死んだマキオおじいちゃんの顔。あるいは標本にされた蝶にも見える。マキオおじいちゃんの魂はすでにこの世にあらず。今は抜け殻だけが綺麗に保存されている。少しでも力を入れて表面を触ってしまったら、すぐにでもバラバラになってしまいそうだった。それくらい