52日目 二本足で立つ病院のすみっこ

ふらつくからだ、バランスとれてるかしら。

ピンをさしている骨盤。そのピンのささっている皮膚の部分が赤くなってきた。このままひどくなると感染症の恐れがでてきてしまう。私は今回の事故で脾臓を失った。脾臓がなくても生きていけるらしいので、破裂したのが他の臓器でなくてよかったとは思うが、脾臓は脾臓で免疫系の働きをしている部分なのだ。脾臓がないことで、感染症で重篤症状がでて死亡する確率があがってしまうという。これから先の人生、感染症は私の天敵となる。それで、そう、骨盤のピンの周りが赤くなってきて、痛みがあるのだ。急に、というわけではない。毎日看護師さんが泡で丁寧に洗ってくれているので、清潔にしてはいたのだけれど・・・。採血をしてチェックしてもらうことになった。整形外科の先生による回診(大勢で入院患者のベッドを見て回る儀式)では「そろそろ限界か」のことば。

じゃあ・・・思い切って抜いてくれませんか?どうでしょうか?


「片松葉」でリハビリテーションルームにむかう。作業療法リハビリをするためだ。OTさんは私の左手を揉んでマッサージしてくれる。そしてゆっくりひっぱりながら私の手首を曲げていく。いつもOTさんにマッサージしてもらった後は、手首が軽くなったように感じる。

↑手のひらを内側に向けようとしても、ここでストップする。先は長い。

昼食は炊き込みご飯と魚の塩焼き、大根のゆず味噌煮、スイカ。夏だなぁ。

食後は読書をして過ごした。職場のスタッフさんが貸してくれたグリム童話の本。挿絵が素敵なの、とおすすめしてくれた。

グリム童話は思ったより残酷だった。

ちょっと気分を変えようと音楽を聴いてリラックス。ゆったりした気持ちになって穏やかな時を過ごしていると、整形外科の夕方の回診で先生が2人やってきた。昨日ゆるめはじめた創外固定をみて「ゆるめてるなら、この棒いらないよね」「これも」「これも」とあれよあれよというまに、金属の固定の棒をすべて取ってしまった。こ、心の準備ってもんがあるでしょうがっ!

残されたのは骨盤に直接刺さっているピンが左右に3つずつ。「痛くなったらまたつけますから」と笑顔で去っていった先生方。

ぽかん とした 気持ちと、腰まわり。

これ寝る時どうすんねん。今までガードがあったのでタオルケット普通にかけていたけど、ぴんがむき出し・・・。ひっかからないか、ひやひやする。

右手に松葉杖を持って、試しにこの状態でナースステーションを2週歩いてみた。とくに強い痛みはない。ゆっくりと慎重に動く。

お母さんがお見舞いにきてくれたので、創外固定が完全にとれて、歩行訓練のみになった時の進路について相談した。自宅に帰る前に、実家でリハビリしてもよいか。お母さんは、実家に帰ってくることに大賛成だった。大学進学と同時に家を出た私が、一時的にでも帰ってくることが嬉しいようだった。



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