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小説の短編集

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小説の短編集。
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2017年6月の記事一覧

噂の心霊スポット

噂の心霊スポット

「深夜、心霊スポットに行ってきたよ!」

学食の2階のテラスで、私とコセに話かけてきたのは、学科違いだけど同じサークルに所属する女の子だった。
私は、怖い話には目がない。
コセはちょっと苦手そうだったが、夏休み直前。
このような話題には恰好な時期である。
なので、その一言に飛びついた。

彼女は夜中に同級生の男友達2人と共に、近場にある心霊スポットに夜な夜な乗り込んだという。
そこは、かなり有名な

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線香にまつわる不思議な話(カルマティックあげるよ ♯127)

線香にまつわる不思議な話(カルマティックあげるよ ♯127)

まだしんしんと雪が降る大学2年の1月はじめのことだった。
私は日常生活のなかで、ある違和感を覚えていた。
部屋の中はもちろん、外の廊下でも、つまりはアパートの敷地内で四六時中、線香の臭いがしていることに気が付いたのである。
それは古着屋などで焚かれているお洒落な香りとは程遠く、まぎれもなく仏壇仏具のソレであった。
そうまるで、お寺にいるみたいな。
最初は正月休みで、周辺のどこかの民家では親戚が集い

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サイコなディナー(カルマティックあげるよ ♯155)

サイコなディナー(カルマティックあげるよ ♯155)

「今日暇?うちでステーキ食べない?いい肉があるんだよね」

大学四年の初夏、トシの主催するお食事会へと私は誘われた。

「コセくんも来るって」

そんなこんなで男三人によるむさディナーが決定した。

「準備あるから先帰ってるね。8時くらいに来て」

トシは居酒屋でバイトしてるだけあって、非常に料理が得意だ。
だからときどきハンニバル博士のように手料理をごちそうしてくれるのだ。

放課後、課題を一つ

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ノートPCは儚い(小説版)

ノートPCは儚い(小説版)

実習室を覗くとトシが椅子に座ってガクンと肩を落として茫然としていた。

「どしたの?」
「エツ~…ノーパソがウィルス感染でクラッシュしちまって、今日コジマに持ち込んだら修理代が5万だって…迷ってるんだよな…修理すべきかどうか…」
「高っ!変なサイト行きまくってるからだな」
「ま、まぁ…そのせいかもしれない。でもわからないのです…」
「まぁ、元気出しなよ!高校の同級生の話だけどエロ動画見過ぎて、請求

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カーペットの下の秘密(カルマティックあげるよ ♯128)

カーペットの下の秘密(カルマティックあげるよ ♯128)

コタツの上にはグリル鍋仕様のホットプレートが置かれていた。

「今から材料用意するから待っててね」

とトシは意気揚々に言って腰に前掛けをしめると、台所へと移動し扉を閉めた。
少しでも冷気が入らないようにとする心遣いを感じた。
その言葉に甘んじるように鍋の仕込みは、料理が得意なトシに一任するとして、私とコウダイはコタツでぬくぬくと待つことにする。
おしゃれなジャズが鳴り響き、優しい間接照明が包みこ

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震える人影(カルマティックあげるよ ♯130)

震える人影(カルマティックあげるよ ♯130)

大学の実習棟の一階の西側にはCG室やフォトスタジオがあった。
この二つの部屋は一階といっても半地下にある。
そのため一階の長い一直線の廊下の西端の出入り口には、その半地下を行き来する小階段があった。

扉の外には灰皿が置かれていて、ちょっとした休憩スペースになっている。
いつも喫煙者禁煙者関係なく、学生や教員が集まる非常に賑やかな場所である。
そこで私は伊藤園のナタデココヨーグルトを片手にひとり一

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