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まっぷたつの子爵/イタロ・カルヴィーノ、河島英昭(訳) 不在の騎士/イタロ・カルヴィーノ、米川良夫(訳)






図書館から借りたイタロ・カルヴィーノの小説
「まっぷたつの子爵(2022,9,15 読了)」と「不在の騎士(2022,9,17 読了)」を拝読しました📖´-




今回「不在の騎士」の方が「読書会 すみれ」のオンライン読書会で課題本となっていたので、前回参加出来なかったオンライン読書会の課題本「まっぷたつの子爵」も併せて拝読してみました。
”我々の祖先三部作”の内の2冊です。
カルヴィーノはこれが初読。



「まっぷたつの子爵」
戦争へ向かった主人公のおじ(メタルド子爵)は、大砲に吹き飛ばされ奇跡的に命は助かったものの身体が右半身と左半身まっぷたつになってしまいます。
まっぷたつになった子爵は片方は善な人、片方は悪な人となり、故郷に戻って周囲の人々にそれぞれ影響を与えてゆきます。



岩波文庫の表紙の説明にはメルヘンと書いてあったので、児童文学のようなイメージで読み始めましたが、全然メルヘンじゃないっ!
まっぷたつになった子爵の悪の方がなんとも残虐で。故郷の人々と一緒に読者の私も怯えながら読み進めました。
そんな中でやっと善の方の子爵も故郷に戻ってきて平穏になるかと思いきや…。


この世のすべての人が、そしてすべての生き物が、それぞれに不完全であることのつらさに気づいてさえくれれば。
善の子爵の言葉より。




誰しも善と悪の顔を持っていて、ときにどちらかが強く出てしまい葛藤することもありますが、それを否定するのではなく自身の中で調和しながら生きていくしかないのでしょう。
完全なる人なんていません。
不完全だからこそ人は面白い。
そんな風に諦めがついたら、もっと自分を好きになれるのかもしれないなとも思います。





「不在の騎士」
生真面目で融通のきかない騎士。
でも立派な鎧の中身は空っぽで、中にあるのは意志の力だけ。
意志の力だけで存在する不在の騎士と、それを取り巻く人々によって物語はぐんぐんと展開していきます。
私には米川良夫さんの翻訳がだいぶ難しく、まごまごしているうちに物語が急速に展開していくので、時折置いてけぼりにされそうになりながらなんとか読了しました。


「彼だって、分かるようになりますとも…。わしらだって、自分たちがこの世の中に生きていることが分からなかった…。存在するということだって、学びとるものなんですよ…」





対比する登場人物たちを見比べながら、自分の存在意義とはなにかと問われているような物語だと私は感じました。
人に認められることに力を注ぐのではなく、まず自分で自分を認めれるようにならないとという意味が込められているのかなとも思います。



本書の訳者あとがきにカルヴィーノの”我々の祖先三部作”は、寓意的な批判が含まれており『自由へと至る三段階』が描かれているというようなことが書かれてありました。
三部作を通して本当の自由とはなんぞやということがわかるのでしょう。
まだ未読の「木のぼり男爵」も早く読まなければ。



カルヴィーノのメッセージは個人的なものとしても受け取れますし、描かれた時代背景の知識がもっとあれば全体的なメッセージとしても受け取りやすくなるのかなと。
今の私が2冊から受け取れたのは「善と悪の調和」「それぞれの存在意義」といったところでしょうか。
三部作を一旦全部拝読して、また時間を置いて再読したいものです。
あと、「不在の騎士」は別の翻訳で読み直したい。








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