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映画を観るのがド下手なので。

わたしはよく本を読むが、映画はあまり観ないタイプだ。そこに特段理由はないと思っていたのだが、先日『映画をあまり観ない』という明確な理由を思い出す出来事が起こった。

それはバンドメンバーが面白いと言っていたB級映画を、自宅で鑑賞していたときのこと。映画を観るのは久しぶりだなあ~!なんてリラックスして画面を見ていたのだが、冒頭4分を過ぎたころ、わたしは頭の中が疑問でいっぱいになってしまい、すぐさま同じくその映画を観たことのある友人に疑問をぶつけることになる。すると、これまでのわたしの推測がことごとく的外れであると思い知らされたのである。


ストーリーの舞台となるのはイングランド。とある店の前に立ち尽くす渋い顔の男性に向かって、スポーツカーに乗ったセレブっぽい友人が、「なんか困ったことがあったら俺に言えよ!」といった言葉を投げかけるシーンからスタートする。その際、渋い顔の男性が口の中に何かしらをシュッとスプレーして店内に入っていくのだけど、まずこの場面で『あの口の中に入れたのは香水?それともブレススプレー?でも外国映画だから、口の中に香水をスプレーするという、ウィットに富んだ描写もありそうだよね』とストーリーが進むうえでまったく必要のない疑問と想像を膨らませる。

次にコンドーム工場で遊ぶ製造員たちの描写が挟まれ、先ほど渋い顔の男性が入っていった店内のシーンになる。男性は、手に持った”店舗賃貸 契約書”を眺めてため息をつき、そのあとお酒を飲んでいるお客さんたちに下品な冗談を言ったり、テレビ番組を勝手に変えてブーイングを受けたりする。
この場面の正しい解釈は、”店の経営が悪化している店長の男性が、イライラの腹いせにお客さんたちに意地悪をする”なのだが、そもそもわたしはこの渋い顔の男性を”一般客の一人”だと思っていたから『なぜそんな冗談を言っているんだろう?』と思っていた。また一方で、もしこの男性がこのお店のスタッフの一人だとすれば『新しいお店を任されることになって(賃貸契約書は新店出店のもの)、その不安でイライラしているのかな?』という推理も立てていた。

続いて今度は若いカップルがベッドでセックスをしている場面になる。爪をいじくりながら冷めた顔をしている彼女と、その様子に憤慨する彼氏。彼はどうやら人気ボクサーで、最近試合に負けまくっていることから、彼女とギクシャクしているそう。彼氏は「17歳でセックスに倦怠?」と言い、彼女は「普通のセックスに飽きたの」と答える。ここで、またわたしは疑問を抱く。『いったい、彼氏と彼女どちらが17歳なのだろう?だってどちらも大人びているし…』答えは当たり前なのだが、どちらも17歳のティーンエイジャーなのだ。


ここでわたしはハッと我に返る。そして思い出す。そうだ、わたしは映画の理解能力が著しく低いのだった!…と。普通に映画を観ていても、一般の視聴者なら当たり前のように理解できることに疑問を持ったり、登場人物たちが呟く一言や、何か言いたげな表情の理由を理解できなかったり、クエスチョンマークが増えに増えまくって映画に集中できないのだ。もしくは、映画を観終わったあとも「で、あの場面のあの行動はなんだったんだ…」と密かに疑問符を残し、映画館をあとにしたりする。

(この傾向は以前、ドラマを観る際にもたびたび起こったことだが、ドラマはある程度”パターン”があることを理解して、今ではほとんど問題なく視聴できるようになった)


だから、わたしは本を読むほうが向いているのだ。本は文字であらゆることを説明してくれるし、分からないところは何度も読み直せる。いろんな解釈を頭の中で組立てられるし、ストーリーに置いていかれたりしない。映画は決して嫌いではないのだが、悲しいかな、わたしにはちょっと難しいエンタメなのだ……。

でもやっぱり映画を観たい気持ちがある。だから願わくば、こうした私の疑問に逐一答えてくれる心優しき映画博士を隣に置いて、映画を観たいものだ。


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